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宵宮の夜、就寝のベッドの上で岩口は考えなくてもいいのに、またか考え始めた。よく考える男である。^^
『ということは、やはり紙が鋏で切られ、三竦みが崩れたんだな…』
岩口が考える三竦みの構造が崩れたとは、文明の進歩やコロナによるパンデミック[鋏]によって、古くから伝わる祭礼行事が弱体化している・・すなわち、チャキチャキとはいわないが、少しづつ緩やかに切られて危機に瀕しているという、なんとも深刻な発想だった。
『これは何が何でも看過できないぞ…』
看過できないとは見過ごせないということだが、一介の平凡な地方公務員と宮司職に励む岩口個人には到底、解決できそうにない問題だった。岩口は、さらに考えた。隣のベッドでは妻の美登里がスヤスヤ…と静かな寝息を立てて熟睡していた。
『せめて我が家だけでもこの危機を打開しないと…』
取り分けて岩口家が危機に瀕しているという状況ではないのに岩口は深刻に思案した。平凡に町役場勤めに精を出し、その傍ら宮司職も務める昨今、目に見えた三竦みの軋轢は無かったが、岩口は深刻に受け止めていた。ベッド近くのスタンドの上に置いた目覚ましに何気なく目をやると、すでに二時近くになっていた。
『祭りが済んでからだな…』
明日は祭礼の本日である。いつまで考えても、三竦みのが崩れた岩口家の危機打開策は浮かびそうになかったから、一端、保留し、岩口は明日に備えて眠ることにした。
慣れとは妙なもので、そう考えた十分後、岩口は鼾を掻きながら熟睡していた。不眠症にならないのはいい傾向ですね。^^




