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 (いず)れにしろ、一件が処理されていれば、岩口としては御の字である。それにしても、あの数値の羅列は…と、砂場が差し出した書類がふたたび脳裏に浮かんだ岩口は、ゾォ~~っと身震いし、なんとか忘れようと首を二度、三度と激しく回した。今回はなんとか危機を脱したが、なんとか書類の数値を把握しなければならないことに変わりはない。

『こりゃ~~偉い部署へ回されたぞ…』

 美登里が空になったコップをトレイに乗せて出ていったあと、岩口はこれからの仕事を思い、気鬱になった。観光物産課も他の課と同じで、そう甘くはなかった。^^ いつの間にか、酔いも醒め、心なしか春の夜風が侘しく感じられた。

 骨太(ほねぶと)神社の例大祭も滞りなく済み、岩口は以前の町役場勤務に全力傾けていた。チンプンカンプンの数値も、課の女性職員からそれとなく訊き出し、なんとか最低ラインの理解が出来るようになった岩口は、屋上に上がり大きな深呼吸を一つした。

「ああ課長、ここでしたか…」

 深呼吸をし終えたとき、ドアを開けて砂場が近づいてきた。昼の休憩どきだったから、まあ、仕事の話じゃないだろ…と、岩口は瞬間、思った。

「何か用ですか、九日十日…」

「今日は十六日ですが…」

 砂場の声を聞いた途端、岩口は、ジョークの通じないヤツだな…と、自分以上に堅い砂場にガックリとした。砂はサラサラだろっ!? と言おうとした岩口だったが、課長の身分を思い出し、オッ!と…と、口を(つぐ)んだ。

「実は、課長に相談なんです…」

 仕事一途で何の心配ごともない男だ…と感じていた岩口は、砂場の思いがけないひと言に、おやっ? と思った。

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