7. 森のちっちゃな助っ人
木材を抱えてふうふう言いながら祠に戻る途中、俺はふと小さな草むらのそばで足を止めた。
気のせいでなければ草の影に、ぷるんとした黄緑色の物体がうごめいている。
「……うぅ。虫、か……?」
芋虫の様にみえなくもないその物体、くりくりの黒目がじーっと見つめてくる。
「うお、虫だ……いや待て、これは大分……デフォルメされている?」
それは丸くて弾力がありそうなマカロンのようなフォルム、ツヤのある黄緑色の小さな塊で、もぞもぞと転がりながら近づいてきた。
虫は無理でもないが得意でもない。でも薄らかわいさを感じるような見た目にも見える。物体は俺の前でぴたりと止まると、ぷるるっと身を震わせた。
そして……小さく、きゅぅ~とお腹が鳴った。
「ん? あぁ、腹減ってんのか」
俺は警戒しつつも、ポケットに残っていた焼き芋のかけらを差し出す。
芋虫(?)はパクンとくわえると、しっぽをぷるぷる揺らしながらごきげんに食べている。
急に現れて腹の虫が鳴る虫って一体……。
「ま、手からエサ食べてるやつは敵じゃじゃいよな」
「とりあえず、芋虫っぽい第一印象だから“イモ”って呼ぶか。第一印象大事」
そのまま祠まで帰ると、イモは当然のように後をついてきて、勝手に柱に上った。
そして、突然――
ぷちゅっ!
「うわっ……え、なにこれ、糸!? やめろ、祠の柱に謎の汁吹くな!」
あわてて見に行くと、べっとりした粘着性のある糸が建材と柱の間に伸びていて――それが、くっついていた。
ピタッと。
しかも、強い。全然ズレない。
「お前、もしかして……接着剤、出せるの?」
イモは、ぷるぷるしながら得意げに胸(?)を張っていた。
これは、これからの家づくりの強力な助っ人になるのでは……
直後、俺の視界にシステムウィンドウが現れる。
【仲間を獲得しました】
《イモ》が拠点生活に加わりました!
-種族:森に棲む糸虫(幼体)
-スキル:粘着糸の生成/移動支援(予定)
-備考:焼き芋と日向ぼっこが好き。接着作業の精度にはムラがある。
「いや“加わりました”て……正式加入かお前!」
イモは柱の上でぷるぷるっと小さくバウンドしながら、どやぁ、といった顔をしていた。
俺はため息をついて、苦笑いした。
「ま、いいか。一人よりマシだしな」
「っていうか、お前いないと家建たない未来見えたわ……」
そして気がついた。
「あれ、俺、お前が仲間になるなんで思って無くて、とりあえず仮の名前のつもりでイモにしたけど、正式に名前になってる……っぽい?」
罪悪感でいっぱいになる俺。でも当の本人イモは意外に気に入っているのか、ぽよんぽよん跳ねながら尻尾をふるふる振っている。
「え?いいのかな?お前がいいなら、いいか。よろしくな!イモ」
早速俺の拠点に住人が一人、いや一匹増えた。