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6. 拠点作り 整地

「よし! ナイフもできたし、畑もそれっぽくなってきた。そろそろ家のこと、ちゃんと考えてもいいかもな」

 祠に暮らし始めて数日、俺は鍬を肩にかけて、周囲の草地を眺めていた。

「屋根、壁、焚き火スペース、物干し場……。欲しい物はいっぱいあるが、まず地面を整地しないと難しいかな」

 祠周辺を開拓していこうと考えているが、山肌ほど急ではないものの、雨が流れそうなゆるやかな傾斜をみて、思い切って整地を始めた。

 傾斜が内容に平らにして、丸太か何かで固める為に叩くので問題ないはずだ。どこかのDIYの動画で見たことがある気がする。

 いつも通り、力を込めて鍬を振るうと――

 サクッ……

 そこまではいつも通り。けれど、鍬が土に刺さった瞬間、まるで意思をもって動くかのように、土がふんわりと均されていく。崩れていた石も地面に自然に馴染み、傾斜がなだらかになっていく。

「……あれ? めっちゃ効率よくね?」


【スキル発動】

《地形調和》:恩恵《森の恵み》のスキル

 →大地の鍬を使って整地する際、周囲の地形が“最も暮らしやすい形”に自然と整う

 ※急斜面の緩和、石の埋め込み、微細な水脈の誘導 等を自動で適用


 ご都合主義的に急に流れるシステムアナウンス。

「……それってつまり、家を建てる基礎作業を自動アシストしてくれるってことか?」

 道具は鍬ひとつ。だけど、毎回の一振りで整地作業は驚きのスピードで進んでいくのだった。いや、俺の計画は!何日も掛けて掘って固める作業を覚悟してた心意気は!? 少し納得いかない気持ちも湧いたが、ほんとに何日も作業してたら家を建てる前に挫折してただろう。

「あの木の下にっ……ベンチを置いてっ……ここを風呂場にしてっ……物干しスペースはどこにすっかな」

 ザクザクと鍬を振るいながら、間取りを想像する。手元に設計図もない。でも、目の前の大地がゆっくりと形を整えてくれる。

「地面は……こんなもんでいいだろ。で、次は壁とか屋根とか……材料がいるな」

 何日か掛かると思っていた整地が、半日ほどで終わってしまった。まずは骨組みとか基礎とかから作るんだっけ?とぼんやり材料となりそうな周囲の木々を見上げて、すぐに気付く。

「……斧、ないじゃん」

 当然と言えば当然。道具がなくては木も切れない。手元に唯一あるのは手作り石ナイフ。無理ゲーだ。石で斧――もどうかんがえても無理そうだ。一振り目で斧が砕け散る未来しか見えない。

「……ワンチャン、鍬でなんとかなったりして?」

 実際、この鍬もチート鍬(?)だ。自動で整地するとかあり得ない機能がついてるなら、斧モードとかがある方がいっそ自然だ。肩に鍬を乗せ、俺は森の奥へと歩き出した。


 

 材木にちょうど良さそうな木を見つけて、試しに鍬を構える。

「まぁ砕けたらそれまでってことでぇ!……えいっ!」

 サシュッ。

 鋭い金属音も、木が裂ける音もしなかった。 代わりに木の幹に触れた瞬間、柔らかく抜けるように、スッと木材が落ちてきた。


【スキル発動】

 《循環採材》:恩恵《森の恵み》のスキル

 →育ち過ぎて不要になった部分や森が手放して問題がない素材を、大地の鍬で安全かつ効率よく回収できる


「切ったってより、お裾分けしてもらったって感じだな」

 不思議なことに、鍬を振り下ろした木は傷一つ付いていない。その代わり足元にはちょうど良さそうなサイズの木や蔓が、束になって落ちていた。

「斧で切り倒さなくても、森が恵んでくれる、そういうことか」

 鍬ひとつで、今度は家を建てる材料まで揃っていく。大工ならテッペン取れるかもしれない。 

「でもどうせなら、こんな奥でじゃなくって、祠の近くの木でやれれば良かったんだけどな」

 材料はもらえたが、運ぶのは自力。俺は苦笑いを浮かべながら、蔓を器用に巻き付け、木を束ねていった。

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