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いい感じな志保と狂っている陽菜

 何事もなかったかのように志保の鞄を持ったまま翔は帰宅していた。

 先に帰っていた志保はソファーで寝ていた。

 

 音を立てないように翔はテーブルに鞄を置く。

 

 はぁ、ありえない。

 

 翔は内心戸惑いながらも椅子に腰を下ろす。

 今日のことを整理するんだ。まず、陽菜は想像の4倍いかれている。元からイカレテイルがその数倍はいかれている。

 次に、志保の鞄を盗んだ奴は真美子と美穂である。

 

 この二人にはそれ相応なりの罪を与える。

 

 で、それでだ。陽菜は何かしら準備している。

 

 何故、今日あの場に居たのか。何故僕が志保の鞄を探しているのかを知っていたのか。

 納得できない部分がいくつかあるな。

 

 翔はソファーで寝ている志保に視線を向ける。


 考えるとするならこう考えるべきだ。


 1 志保に悪戯していたのは、真美子と美穂。そして、陽菜。

 2 今日どこかで陽菜が志保に接触した。そして、鞄を探していることを陽菜に言った。

 3 陽菜も鞄を探していた。


 いや? 違うな。そもそも、陽菜は悪戯に加担していたのか? たぶんしていないな。

 そんな陰湿な悪戯に加担するほどの馬鹿ではない。

 

 と、すると陽菜はただ単に志保の鞄を探していたのは本心なんだな。

 てことは、今日志保は陽菜に鞄のことを説明した。

 

 それで、どこに鞄を隠したか予想しあの場所で待っていた。とすると、陽菜っていう化物は僕の想像を超えた人だぞ?

 頭が良いというか何を考えて行動しているか理解できないな。


 問題は明日だ。明日何かが起こる。

 ブーブーと通知音が鳴り響く。

 

 ポケットからスマホを取り出し通知を確認する。


(陽菜)「やっほー! どう元気してたかな?」


 ため息を吐き、スマホをポケットに戻す。

 コイツに関わっている暇はない! よし、ご飯を作るか。


 ぶーぶー。

 ぶーぶー。

 ぶーぶー。

 ぶーぶー。


 はぁ、ブロックしてやろうか? スマホをポケットから取り出し画面を眺める。


(陽菜)「無視なんて酷いよ!」

(陽菜)「ハグをした仲なのに」

(陽菜)「あ、ハグをした写真見る?」




(陽菜)「どうかな? めっちゃよくないこの写真! 私の宝物だよ! ありがとね」


 うわーえぐい奴に連絡先を交換してしまったな。

 

 ハグをしている写真は翔にとってピンチになる写真でもあった。だが、当の翔は焦りなど一切なかった。陽菜の心理を読みとっているからだ。

 陽菜の言動や行動から、陽菜は心の奥底から翔を愛している。そんな存在を誰にも教えてりはしない。独占欲が人一倍強い陽菜は絶対にこの写真をバラまいたりはしない。

 そう確信している翔は台所に立ち夕食を作り始める。


 今日はカレーにするか。疲れたし、ご褒美にカレーを作るか。

 匂いのせいか雰囲気のせいか数分程経つと志保が目を覚ます。



 志保視点。

 

「あ、その、ごめんなさい勝手に寝てしまって」

 

 気が付くと眠っていたし、いつの間にか翔が帰って来ていた。ここ数日の疲れがざっと来て眠ってしまった。我慢しようとしたけど、眠ってしまった。

 はぁ、何してるんだ。

 って、あれって私の鞄?

 

 志保はソファーから立ち上がり、テーブルに近付く。

 

「いえ。疲れていると思うので別に大丈夫ですよ? それと、鞄は見つけました」

 

「なんとお礼を言ったらいいか。ありがとうございます」

 

 椅子に腰を下ろしカレーを作っている翔に視線を向ける。

 

 翔はなんでここまで面倒を見てくれるのかな。どうして、私のためにここまで頑張ってくれたんだろう。それに、比べて私は何をしてるんだ……

 翔の家に来ては何もしないで寝てばかり。何も役に立ってない。逆に迷惑ばかり掛けてる。

 

 志保は自分を見つめるように目を閉じる。

 

 ああ、私は何もしていない。この翔という優しいい人に甘えているだけなんだ。


「いえいえ。助けるとことは当たり前ですから!」

 

 翔はニッコリと笑いカレーをテーブルに並べていく。


「どうぞ! 今日のカレーは美味しいですよ」


 志保は心の中に出来た感情を殺し「ありがとうございます」と言いながらカレーに視線を向ける。


 翔も志保の前に座る。2人は手を合わせる。


「「いただきます」」







 陽菜視点。

 

 スマホの待ち受けを変えた陽菜はニッコリと笑いながらベットの上で楽しそうに騒いでいた。

 

(ああ。ハグしちゃったよ! もー、最高! 本当に本当に嬉しいな)

 

 足をパタパタと動かし最大限の喜びを表す。

 

(ご飯とか食べてみたいな~! 翔って毎日弁当を持ってきているし。食べたいな)

 

 もー、早とちり過ぎだぞ! 落ち着くんだ陽菜。

 

 私は常に冷静で相手のことを考える。

 

 邪魔な者は決して、都合の良い人を残す。

 

 陽菜にとって翔以外の人には興味がなかった。薄っぺらい友情でしかなかったのだ。

 陽菜はハグの温もりを確認するように、もう一度自分でハグを行う。にやにやと笑う。

 

 ああ、本当に翔の温もりは凄かったな。



 もし、もし、陽菜が志保と翔の関係を知ってしまった時陽菜はどうなってしまうのか。誰も知りやしない。

 ただ、確定しているのは陽菜は”怒る”だろう。

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