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天才は才能

放課後。騒ぎが多くなってしまったため翔は職員室に呼ばれてた。

 

 担任である立花凜たちばなりん先生は翔の前に座り。視線を上げた。

 

「はぁ、翔、君はなんで否定しようとしないんだよ?」

 

 呆れた声で言いながら凜先生はブラックコーヒーをすする。


「いえ、否定はしようと考えましたが空気感が強く言えませんでした!」


「おいおい。ふざける! ちゃんと言ってるんだぞ? 翔君は頭が良すぎる」


「そこまで褒められても何もでませんよ?」


「ふふ。そのユーモアを何故生徒たちに見せない?」


「それは、心で決めた人にしかユーモアを披露しないので」


「何? もしかして私はお前に気に入られたのか?」


「はい」


「おお~それりゃ嬉しいことだな。って、違う。そうやって話を逸らしたりするな」


 翔にとって凜先生は一番頼れる人でもあった。


 多くの先生の中でも信じることができる存在でもあり頼れる存在でもある。そんな凜先生は呆れた顔で翔を見つめる。


「あのな、何故、君が窃盗犯となっているかちゃんと教えてくれないか?」


「僕にも理解できません。何故私殿が窃盗犯になっておるのか理解不能です」


「おーい。ふざける時間は終わったぞ? ちゃんと話すんだ」


「はい。まず、多分陽菜という人が主犯ですね」


「何故そう思う?」


「ああ。これを」


 ポケットにしまっていた紙を取り出し凜先生に渡す。


「これは?」


「今日机の中に入っていた紙です」


「おお~こりゃ凄いな。でも、これだけで判断はできないな」


 流石先生という立場か、片方の意見だけでは決して決めつけたりはしない。そんな完璧な先生だからこそ人気があるのだろう。


「それじゃあ、この動画を」


 それは、この日向学園高校の屋上が映っていた。そして動画が流れ始める。


『ごめんね、急に呼ぶ出したりして』


 動画の中央に陽菜が立ち、その奥に翔が立っている。


 陽菜は照れているのか何回か髪を触る。


『別に大丈夫だけど』


『わざわざ、ありがとね。それで、その、本題なんだけど』


『私ね、ずっと前から翔のことが好きだったんだ』


『は、はぁ』


『それでね。その、私と付き合ってください!!』


 陽菜は勢いよく頭を下げ、手を前に出す。


 沈黙、沈黙が流れない。


『ごめん。僕は女性には興味無いんだ。だから、ごめん』


 そこで動画は止まる。


 動画を観終わった凜先生は困惑していた。


「まず、色々話をしようじゃないか。翔」


「は……い」


「まず、どうして動画を取っている?」


「えーと。その、こういう女性は裏があると思ったからです。人気者で天使だと言われている人で綺麗な心を持っている人はめったにいません。ですので、録画しました」


「なるほど、天才だ。じゃあ、次に、どうして動画を取れた? 告白場所は指定されていたのか?」


「いえ、指定はされていませんが。なんとなく予想してスマホを隠しました。多分告白するなら屋上だと思いましたので」


「翔。君頭が良すぎないか?」


「いや、普通ですよ。ただ、予想が全部当たっただけですよ。告白をする時間を予想し屋上に向かう。それで、場所を予想してスマホを隠す」


「なるほどな……どう考えても君は凄すぎる。だが、どうしてこの動画を広めようとはしないんだ?」


「多分広めた所で何も変わりませんよ? 最近は色々便利な世の中になりましたし」


「ああ。なるほどな。でも、この動画を使えば陽菜より優位に立ち回れることができただろ? どうしてしなかった?」


「…………面白くないからですよ」


 そう、面白くない。

 ただ、このまま潰しても面白くないし楽しくもない。だから、今動画を使ったりはしない。


 最高のタイミング。相手が気持ちよくなったタイミングで地獄に落す。天国を地獄に変える。それが一番楽しいし面白い。


「翔。今お前はこの状況を楽しんでいるのか?」


 凜先生は声色を変える。


 教師として人としてこのような場面は初めて遭遇する凜は戸惑っていた。いや、怒っていた。どこからくる怒りなのかは分からない。けど、怒ることが正義だと思ってしまう。


 それも、そのはずだ。


 凜の目の前に居る男は危険である。


 あらゆる場面を相当しそれに対応する。そして、すぐに潰そうとはしない。相手の最高のタイミングで破壊する。簡単に許したりはしない。絶対に地獄に落すと誓っている。


 そんな危険な男が今凜の目の前に居るのだ。


 だが、


「安心してください。相手方には手などは出しませんから。あくまで同じような体験をさせますから」


 光を宿らない目で凜先生を見つめる。


「そうか。そういうことなら大丈夫か! ってなるかよ! とにかくだ、私が解決するから何も行動するなよ? いいな?」


 凜はブラックコーヒーをすすり。「ふぅ」と言いながら缶を置く。


「てことで、絶対に何もするなよ? もししたら成績に影響でるぞ?」


「分かりました」


 翔は頭を下げ深く礼をする。


「失礼しました」


 職員室を出た翔はポケットからスマホを取り出す。


 そして、教室まで歩き。


 ”録音アプリを開いたままのもう一台のスマホ”を取る。


「さて、そろそろ鞄を盗んだ犯人を捜すか」

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