依存性パーソナリティ
何故志保があそこまで翔に夢中になっていたのか? それを知るには1日前に遡る。
私は翔を見つめたまま、口をゆっくりと開く。
「私が……Aクラスに?」
理解できない。何故……私なんだ? いや、だって私は翔だけを救える環境を作りたいんだ。ただそれだけなの。
だから、わざわざ翔から離れるなんて無理よ。できない。
だって……私には……翔しか――いない。
あの日あの時。手を差し伸ばしてくれた翔が大好きなんだから。
私が守る。違う――守りたい。愛していたい。
あの日見せた翔の弱さを知っているのは私だけ。
だから――私しか守れない。
――それに私は翔がいないと何もできない。私の脳では考えることができないの。
「――私は!! 翔の隣にいたい」
放課後の教室に響く志保の声。髪を揺らし必死に翔に訴える。
「――分かるよ。僕だって志保の隣にいたい――でも、BクラスがAクラスに勝つ為には志保――力が必要なんだよ」
気取った翔。
誰も気付くことはできない。
狂人を愛せるのは狂人。
翔の必死な訴えに心が揺れる。私を――頼ろうとしてくれている?
あの、完璧な翔が私を?
これは……チャンスなのかも知れない。今まで翔との関係性が怖かった。
頼ってほしいのに頼らない。頼ってくれない。
あの時、一緒の家に居たのに、どうして、頼ってくれないのか? ってずっとずっと不安だった。
もしかしたら、関係性が未無となったんじゃないかって。
怖くて、怖くて仕方がなかった。
けど、今は私を――私を頼ろうとしてくれている。やるしか……ない。
「――分かった」
「志保……本当に好きだ」
愛の言葉。志保の人生にとって1番聞きたい言葉。
可能性を秘めた言葉。
志保の胸を鳴らし、翔は優しく志保の肩に手を置く。
『スマホとか財布とかは鞄とかに入れない方がいいな。いつまた、嫌がらせを受けるか分からないし、それに、僕に連絡できるようにしといてほしい。困ったとき志保を助けられるように』
翔はゆっくりと落ち着いた声で囁く。
志保の耳を突き、赤く頬を染めさせる。
「でも……スマホをポケットに仕舞っておくのは」
この先、テストだって……あるから。流石に――
「僕は……志保が好きなんだ! だから、もし……もしもだ、志保に何かあった時すぐに駆けつけられるようにしておきたいんだよ」
泣きながら翔は訴える。演技だとは思えない。
「分かった……ありがとう翔……私を思ってくれて。私も……」
温もりを肌で感じる。とても暖かくて優しい温もり。
あの時と似ているな。困っている時に手を差し伸ばしてくれたあの日のように。
「ありがとう……志保……志保」
私の耳元で囁く翔の声は耳を貫き、脳を貫き、心臓を抉り取った。
私は――翔を守りたい。
依存する心理――――依存性パーソナリティ障害。
――――
ここまで書いて思ったんですけど、ラブコメ……とは!?
次の話からふふふふふなラブコメが始まります!




