二章開演。 多すぎる犠牲
「Aクラスは席に」
Aクラスまた、その他のクラスたちは各々指定され席に着く。
代表者会議。
それぞれのクラスの代表を集めた会議。
会議する議論はない。
ただ、顔合わせという名の項目を行う。
それが、代表者会議。
四角いテーブルを囲むように代表者は座っていく。
Aクラス代表・女子高校生・若菜。
Aクラス代表・男子高校生・快。
Bクラス代表・男子高校生・翔。
Bクラス代表・女子高校生・麻衣。
Cクラス代表・男子高校生・須藤。
Cクラス代表・女子高校生・南。
Dクラス代表・女子高校生・古奈。
Dクラス代表・女子高校生・加奈。
それぞれ代表者は見合った。
これから敵となる存在を。
そして、久方翔は第二の人格を気取る。
ちくたくと針の音だけが部屋に鳴り響く。
そうこうして、翔は口を開く。
「自分的にはまだ、理解できていません。なので、自分は争いなどはしたくない。と、想っています」
自分はそういう人間だ。
争いなんてしたくもないし、犠牲者なんて出したくもない。
自分は平和を望んでいる。この世で一番嫌いなことは争いだ。
気取っている翔に麻衣は嫌な視線を向ける。
麻衣は見てしまったのだろう。
変わっている人格を。気取っている翔の姿を。
気取っている翔に驚きながらも麻衣も口を開いた。
「私も、翔の意見に賛成だ」
麻衣の声が代表者たちの耳を突く。だが、そんな願いは散る。
「そういうのは、いらない」
Aクラスである快が声を上げた。
金城快。
天才と言っても過言ではない。ただ、天才であるが鬼才でもある。快自信天才という一括りになるつもりはみじんもなく。
本物の天才になることを目指している。
合理的かつ理想的。
快の嫌いな言葉であるのだ。
「俺たちはAクラスだ。つまり、何が言いたいか分かるか?」
声色を変えず快は代表者を見下す。
「トップに従うのが社会というもの、つまり、お前らは俺らの駒だ。Bクラス、Cクラス、Dクラス、お前たちは駒になるんだよ」
「そんな話を聞くために来ていない、時間の無駄ね」
Cクラス代表・南が言う。
「おいおい、Cクラスとかいうゴミが話に入ってくるなよ」
「君は何か勘違いしていないかな? Aクラスで卒業できるのは5人だけ。つまり、今Aクラスであっても意味がない。消える可能性だってあるんだよ? それなのに、どうして、そこまでいきれるんだ?」
馬鹿にするよな視線を向けた南は笑った。
煽りがそこにはある。だが、その煽りには乗ってはいけない。
常に冷静ではないといけない。冷静でなければ考えがまとまらない、それに、弱さを見せてしまう。
「馬鹿はお前だよ? Cクラスってどうやったらなれるんだ?」
「たかがトロッコ問題で決まったクラスにそこまでの価値があると?」
「ああ、あるね。それに、生徒会長である久遠が言ってただろ? Aクラス以外はゴミと」
「ふふ。そこまでしていきるんだな」
「はぁ? 黙れよ。Cクラスとかいう存在価値のないクラスが」
果たして、自分に出来ることはあるのだろうか。今、自分の目の前では争いが起きている。止めないといけない。
だって、自分は争いが嫌いだ。平和が好きなのだから。
「とりあえず、みなさん落ち着きましょう。今、この状況下で争うのは駄目です」
落ち着いた声で翔は囁き、手を広げた。
「みんなで、助け合うんですよ。困ったことがあったら手を差し出し、助ける。退学者を出さないように工夫をする。そうすれば、争いは生まれない」
「今、この状況下では僕たちには上も下もありません。卒業できるまではみんなは同じスタートラインなんですから」
演技。
この演技に気付く人が居るのだろうか。
誰から見ても頼れるリーダーを演じている。助けを求めたらすぐに助けてくれそうな存在。
「自分は誰も! 誰も犠牲にはしたくはない」
翔の声で他の代表者は少しだけ気を戻す。
どことなく焦っていたのだろう。Aクラス以外はゴミと言われたことで傷ついた心。
見下されている環境。視線。
それらが、Aクラス以外の生徒たちの心を蝕んだ。
「ところで、翔」
快はきっりとした顔で見つめる。
「お前は、どうしてAクラスに来なかった?」
流石天才と言ったところか、快にはバレているんだな。
「意味が分からない、です。自分はそんな優れた人じゃない」
「そんなことは聞いちゃいねーよ。どうして、Aクラスに来なかった?」
苛立った様子で快は訊く。
会議室は沈黙。
2人の会話に入ってはいけない。そう思わせるほどの圧。
「自分だって行けたら行きたかったですよ」
「行けただろ」
「いや? 自分にはBクラスが限界でしたよ」
「嘘をつくな。分かってるんだよ、おめーは俺と同じ匂いがする。隠しきれていないんだよ。その瞳は似ている」
頬を緩めた翔は笑う。
「言っている意味が分からないな」
鋭い視線が俺を見る。その視線を見つめる。
今、俺を見ている快は天才。
天才か、所詮生まれ持った天才だろうな。
コイツは分かっていない。Aクラスが崩壊することを。
一番安全な場所はDクラスでもCクラスでもない。
Bクラスだということを。
「お前、実力を隠すのがかっこいいと思っているだろ? 相当ダサいぞ?」
嘲笑うように快は言う。
痛いほどの視線を感じながら、翔はゆっくりと口を開く。
「所詮生まれ持った天才には理解できないですよ?」
「っぷ、ははは。お前はやっぱり――天才だよな」
俺は手で髪をかき上げる。
「確か、快? でしたっけ。なんていうか、いきがるのはもうちょっと後の方がいいと思いますよ?」
「ぷはははは。やっぱり翔はおもれー。なんでBクラスなんかに行ったんだよ? 俺とお前が居たらAクラスは圧倒的に居たのにさ」
「だって、普通に面白くない。だから、俺は」
周囲を見渡す。
そして、翔は演技を止める。
「あなたたち、全員を地獄に落しますよ。誰であろうと。俺の目的は全校生徒に教えないといけない、俺という怪物を」
「頭が良くても、性格が良くても、この世は”実力社会”でしかないと」




