タイトル未定2025/03/22 00:22
俺は階段を下り生徒会室に向かっている。
不安という感情を消し、あの日の無邪気の弟を演じる。今日はその日だ。
バレてはいけない、俺という存在を気付かせてはいけない。
僕は長い廊下を歩く。
びっしとネームプレートが掛けられている場所に止まり、上を見上げる。
『生徒会長室』
生徒会室ではない、生徒会長室なのだ。生徒会長だけが入れる部屋。
そこに足を踏み入れること自体ができないことであり、やってはいけない行為である。
だが、弟という立場である翔はそんなルールは効かない。
コンコンと高鳴る音が響く。
「入れ」
鋭く棘のあるような声が翔の耳を突いた。ゆっくりとドアを開ける。
視界に入ってくる情報は脳をパンクさせる。
長い髪が髪でなく、なんとも言えない綺麗さ切なさがある。それと同時に別次元に住む人だと思わせて来る。
鋭い目が僕の心臓を速くさせる。
落ち着け、僕は翔だ。
「失礼します」
生徒会長室に足を入れ、ドアを閉める。
「久しぶりだな、久方翔」
「そうですね、姉様」
「おいおい、よしてくれよ、そんな堅苦しい言い方は嫌いだよ」
「この呼び方に慣れてしまったんだよ」
「まぁ、話そうじゃないか」
久遠はここに座れと目で訴える。それに従い翔は椅子に腰を下ろした。
「離すことはないと思うんですけど?」
「まぁまぁ、翔。そういう詮索は止めようじゃないか」
顔色を変えた久遠は翔を見つめる。
「どんな感じだBクラスは?」
「どうもこうも、姉様が言った通りゴミですよ」
「ふふ、ユーモアはまだ残っているのか」
過去を懐かしむように、久遠は小さく微笑んだ。
「何故、Aクラスにしなかった?」
「言っている意味が理解できません。僕は普通にトロッコ問題でBクラスになったんですよ?」
「そういうのは、止めてくれ。私は知っているぞ」
「知っている?」
「椎名先生、凜先生から聞いている。翔という生徒について」
「僕についてですか?」
「ああ、そうとも。何故Bクラスにした?」
「気まぐれですよ。Bクラスなら落ち着けると思ったので」
「翔、嘘は面白くはない。もう、あの日のように演じなくていいんだ」
雄一の理解者。
と、そこまではいかない。
久遠は知っていた、というよりも考えていた。
翔はあの日とはもう違うと。
キラキラ輝いていた目が光を失い闇に染まっており、笑うこともない。
あるのは憎しみだけだと感じ取ったのだ。
久しぶりの再開は崩壊の道を辿ることとなる。
「翔。私は凜先生から聞いている。君が退学者を三人出したと」
翔は演技を終え、いつもの翔に戻る。
「俺はそんなことしていませんよ」
「翔!! もう、嘘をつくな。反吐がでる」
久遠は叫び、翔を鋭い目つきで見つめる。
「どうして、どうして、そんな風になってしまったんだ。どうして、日向学園高校に来た? 何故、何故、母親を見捨てたんだ?」
「質問ばかりで、どれから答えたら良いのか分かりません」
「翔……君はここに来るべきではなかった」
悲劇。
そこまでは言えないのかもしれない。ただ、今翔の目の前に居る久遠はそう思わせてしまう。
荒れ狂っている姉を前にして思う。
やはり、俺は姉が嫌いだ。
実力があるのに何故気取ったりしなのか。何故、こんなに悲劇を気取ったりするのか。
理解できない。
何故、何故、父を見捨てたのか。
どれほど逆だったらいいかと思った。
俺は父の子がよかった。そして、姉は母の子であるべきだった。
そうすれば、今の俺たちは笑い合えていたかもしれない。
けど、そんなこと考えるほど暇はないし、考えるだけで気持ち悪くなる。
ただ、俺は復讐をする。
俺を見下した親に、姉に。
そして、生徒全員に。
理由なんてない。興味があるからやるだけだ。
誰が止めたってやる。実行するだけだ。
もう中止なんてしない。
ここに居る生徒たちに教えないといけない、俺という怪物を。俺という本物の天才を。
「翔……私はお前を憎んでいる。はっきり言って嫌いだ。だが、弟だから面倒を見ている。これ以上迷惑を掛けるなら退学してもらう」
その言葉を聞いた翔は地面に膝をつく。
演技なのだろうか。それとも焦りから来るものだろうか。それは誰も知らない。ただ、そこにあるのは頭を地面に付けた翔。
「ごめんなさい」
「ふふ。それなら私と付き合ってくれ」
頭を下げたまま翔は考える。
今の状況では姉には勝てない。
でも、今の状況でだ。
いつしか勝ってみせる。
本物の天才・姉に。
志保が退学になるまで後2日。
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次の話はたぶん胸糞が悪くなると思いますのでお楽しみに




