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運命の出会い

 コンビニのバイトは簡単であるとは思う。ただ、仕事が多い時もあったりするし忙しい時もあったりする。

 

 翔はそんな考えをしながらレジの前に立ち、ぼんやりとどこかを眺める。

 うーん。明日の学校めんどくさいな。休んだらまるで怪しい行動になってしまうしな。どうしようかなー。

 考え事をしていると時間はあっという間に夜に向かって走って行く。

 

 客が入ってきた音楽が流れ、ふとドアの方に視線を向ける。

 

 同じ生徒だな。

 

 数秒程目で追う。

 

 何故こうも僕は良くない考えばかり浮かんでしまうのだろう。

 入ってきた同じ高校の女子生徒の服装は少しだけ乱れていた。髪先が少しだけ濡れている。お風呂に入ったとは考えにくい。それに、お風呂に入ったのならわざわざ制服を着ないだろう。

 それに、顔色や目の色。

 

 翔は自然を装いレジから出て、女子生徒に近寄る。

 女子生徒は疲れた顔でパンを持ち、ゆっくりとポケットに入れる。疲れているのか女子生徒は翔の存在に気付けなかった。いや、翔の影が薄かったのかもしれない。

 そうこうしている内に次々に女子生徒は商品を盗んでいく。

 

「万引きって立派な犯罪ですよ?」

 

 女子の横に立ち、翔は小さな声で言う。

 翔の声は届く距離でもあるのに、女子は無視を貫く。

 焦りから来る無視なのか、それもと、どこからくる恐怖なのか。

 

 まぁ、僕も万引きみたいなことを擦り付けられていますけどね! なんてボケは置いておいて。さて、この状況をどうするかだ。

 はっきりいってこの状況は普通ではないな。

 

 髪先だけが濡れているし、家に帰った様子は感じ取れない。それに、微かに震えているし。

 

「もし、困っているのなら助けますよ? ああ、でも断っても助けますけどね」

 

 コンビニに洒落た音楽が流れ始める。

 沈黙が続く。

 

「助……けて」

 

 弱々しく小さな声で言う。音楽にかき消されてしまう程の小さな声だった。でも、翔にははっきりと聞こえた。

 

「任してください」








 バイトを終えた頃には既に外は暗くなっていた。

 そして、コンビニを出てすぐ、横の方に助けを求めた女子が立っていた。

 

「ごめんなさい。こんな遅くまで待たしてしまって」

 

「いえ。待つことには慣れているので」

 

「なるほど。えーと、その自己紹介まだでしたよね」

 

 翔は女子の横に立ち、壁にもたれる。

 

「はい。私の名前は斎藤志保さいとうしほです」

 

「志保ですか。えーと、僕は久方翔と言います」

 

「翔……よろしくお願いします」

 

 堅苦しい挨拶を交わし、2人は小さな笑みを零す。

 翔は袋からおにぎりを何個か取り出し志保に渡す。

 

「あ、あの、受け取れませんよ」

 

「ああ。別に大丈夫だよ。それに、受け取らなかった捨ててしまうから。受け取ってくれると嬉しいな」

 

「は、はぁ。そういうことでしたら」

 

 戸惑いながらも志保はおにぎりを受け取る。

 

 車の走る音が響く。どこまでも天高く響く。そんなうるさい環境の中でも翔の声は志保の耳を突いた。

 

「鞄を盗まれたんですよね? それも、スマホとか財布とか。いろいろな物が盗まれたんですよね?」

 

 きっとそうだろう。いや絶対にだ。

 

「え? どうしてわかったんですか? 私何も話してないのに」

 

「服装とかですね。髪先しか濡れていなく鞄を持っていない。きっと家のカギとかも盗まれたんでしょうね。それに、慌てていたんでしょう。今日はあいにくの小雨でしたからね。それで髪先だけ濡れている」

 

「多分、大切な物が盗まれて慌てていた。いくら探しても探しても見つかりはしなかった。そして、自暴自棄になったのか、お腹が空いたのかコンビニで万引きをしようと考えた。でも、実際万引きしようとはしなかった。わざとバレるよう動いた」

 

「凄いですね。全部……当たってます」

 

 志保はどこかやり場のない気持ちを見つめるように遠くを見つめる。

 

「前から悪戯があって、無視をしていたんですよ。でも、どんどんエスカレートしていって、今日は鞄を盗まれました」

 

 志保は震える手でしっかりとおにぎりを掴み、息を呑む。

 

「誰が盗んだとか心辺りは?」

 

「ないですよ。私は誰にも平等に接してきましたから。それに、みんなと友達になりたいと思っていましたから」

 

 後悔を含むような言い方をし、志保はおにぎりを開け始める。

 志保の気持ちを表すように雨が降り始める。ポツンと雨が地面を撃つ。その音は大きくなり始める。

 

「なるほど……もし家に帰ることができなのでしたら家に来ます?」

 

 翔はいつもの声で言った。

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