僕は行動する
志保は翔の家に泊まることになりベットで寝ていた。と、言っても数時間しか寝られないため疲れは取れないが少しだけ休むことはできるだろう。
一方翔はソファーで休んでいた。
休んで……いたというのはあながち間違いであるだろう。
地面を見つめたまま翔は考えていた。
今日から起こるある冤罪というべきか、罪を受ける日をどうやって避けるかを。
日向学園高校。
文武両道を掲げている素晴らしい高校。
進学率90%
退学率10%
停学率0%
何度考えても理解できない。
パンフレットに記載されていた表は確かこのような感じであった。つまりだ、この日向学園高校は何かがある。
生徒を守ることが必要である高校が停学という救済を与えずすぐさま退学するとは考えにくい。
まして、そのような行為をするとは思えない。つまりだ、何かしら退学させる機会があるということだ。
朝のニュースがリビングを包み込む。
「5月25日となりました。おはようございます」
「今日の予報天気は晴れと予想されています」
「では、次のニュースです」
天気を確認した翔は重たい腰を上げ、台所に向かって歩みえた。
さて、朝食を作るか。
台所に立った翔は朝食を作り始める。
皿をテーブルに並べ、志保を起こしに向かう翔はある考えをしていた。
たとえ、どんなことがあろうと僕が志保を守ると。
一度作ってしまった借りを返したい。それに、嫌な予感がする。何か嫌な予感が胸の中に走っているように感じてしまう。
はったりとかじゃなくて、本当に嫌な予感が……って今は止めよう後で考えるんだ。
「志保?」
「んん……あ、ん」
気持ちよさそうに寝ている志保を眺めた翔はなんとも言えない気持ちになる。流石に無防備過ぎないか? いくら信頼されているとしてもこんな無防備に寝るのは果たしてどうなのだろうか?
僕は志保の体を優しく手で突く。
起きる様子がない。
「志保? もう起きないと遅刻するぞ?」
「ええぇ、大丈夫」
「何がだ?」
「だって、私が守るから……」
志保は目を閉じたままぶつぶつと何かを言い出す。安心しているのか疲れているのか志保の寝顔は幼い少女のようであった。その一方でやはり翔は自分を追い込んでしまう。
志保には荷が重すぎた。
僕の過去は話すべきではなかった。この先志保の人生で支障が来た時、その時確実に僕のせいだろう。きっとそうでしかない。
やはり人は頼るべきではないな。
いつもの目つきに戻った翔は志保の体を揺らす。
「早く起きないと遅刻するぞ?」
「あ、ああ!」
体をびくりと動かした志保は目を覚ます。
「あ、おはよう」
志保は細めた目で翔を見つめる。
「おはよう。僕は先に下に降りとくよ? 待ってるから」
「うん」
翔はポケットに手を入れながら部屋を出る。
朝食を食べている2人は楽しいひと時を過ごす。
「あのさ、僕からお願い事があるんだけど、いいかな?」
真剣な顔をした翔は志保を見つめながら呟いた。
「うん、もちろん」
持っている味噌汁を置いた志保は真剣な顔をする。
僕はスマホを取り出し、動画と録音を志保に見せる。
「この動画と録音をクラスチャットに送ってくれないか?」
まばたきすら出来ていない志保に投げる言葉は想像の斜め上の言葉を行く。
「どうして?」
「今はまだ、言えない。でも、僕は今日何かが起こる予感がするんだ。だから、お願いだ」
「分かった」
志保に動画と録音を送る。
「送る時は何も書かなくてそのまま、送ってくれ」
「ええ。そうする」
数分程スマホを触った志保は送ったことを確認しスマホを置く。
志保にとって初めて聞く録音の音声は脳を引き裂いた。
暴言が飛び交った音声で、救いなんてない音声でしかなった。果たして、何故翔は志保に録音の存在を示したのか。
何故、自分もクラスチャットに入っているのに志保に送らしたのか。
志保は気付いていなかった。初めてちゃんと聞く自分の悪口に胸を痛めたからだ。
(もう大丈夫か)
俺は心の中でそう呟く。これで。
学校に着くと異変を肌で感じるほど教室の雰囲気は変わっていた。
陽菜の立場は一変していた。また、鞄を盗んだである、美穂と真美子たちも居場所は無くなっていた。いる人が居ない人のように扱われていた。
俺はそのまま、鞄を横にかけ椅子に腰を下ろす。一緒に登校していた志保も自分の席に着く。
その時、不意に通知音が鳴り響く。クラスにいる全員のスマホが。
スマホに目を向ける。
俺と陽菜が抱き付いている写真が流れていた。遠くの方で座っている陽菜がちらりと俺の方を見る。
両者目の色を変えはしない。初めて真正面から向き合ってみたけど、やっぱり陽菜は顔が整っているな。
そうこうしていると、担任の先生である立花凜先生が教室に入ってくる。
「これより、退学者とクラス替えを行う」
さて、舞台は整った。
――
今日は後3話投稿する予定なのでよろしくお願いします。




