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「もし君が本当にホムンクルスだとするなら、とても進んだ魔法の国から来たんだね。我々の作るホムンクルスは何と言うかとても単純なものだから」
エミールは土から作られた球体、円錐、四角錐といった形の組み合わせで作られた彼らの土人形を思い起こした。
「リンはいたって普通のホムですよ」
リンは自分のことをそう言った。
「でもこの体は特別製かな。正木さまとお姉ちゃんたちがすごく苦労して作ってくれたので」
「そうだね。すごく綺麗だ」
エミールはリンに期待の目で見つめられて思わずそう答えた。
「ありがとう!」
リンは嬉しそうに言った。
エミールがちらと正木を見ると二人のやり取りを聞いて、リンのほうを見て微笑んでいるように見えた。エミールはそれを見て少し安心した。
「リン……と呼んでいいかな」
リンはうんうんと頷きエミールに笑いかけた。
「リンの戦場での働きも噂に聞いたよ。君の召喚魔法で作られた魔法戦士や魔獣によってすごい戦果だったって」
「召喚魔法はリン得意」
リンは顔を上げて言った。やはりリンがホムンクルスというのは何か裏がありそうだ。ホムンクルスが土の力から簡単な魔法を使って人の手伝いをすることはできるが、召喚魔法などという上級な力をホムンクルスが使うなんて聞いたことがない。
エミールは一息ついて少し考えてから言った。
「正木さんちょっと相談なのですが」
エミールは正木の噂を聞いて以前から考えていたことを言ってみようと思った。正木がなんだろうという顔をしてエミールを見つめ直す。
「僕の初陣にって今度、東の山岳地帯の賊を討つための討伐隊が編成されるんです。あなたもよくご存知のルマリク将軍が実際の指揮を取ります。どうでしょう。あなたも従軍してもらえませんか」
「いいだろう」
正木は即答した。まるで予期していたかのように。
「ただし、報酬については殿下の母君と交渉させてもらいたい」
「良い返事をありがとうございます。ですが、僕だってあなたに報酬を出せますよ」
「いや、あなたには私が欲する報酬を出すことはできない」
いったいあなたが欲しい報酬とは何ですか、と聞こうとしたとき後方から世話人が現れてエミールの注意を引いた。
「殿下。女王陛下が席に戻るようにと」
「分かった。正木さん、失礼します。後ほどまた話しましょう」
正木は頷く。エミールはリンの顔を見た。
「リン。話せて楽しかった」
リンはスカートの端をつまんで可愛らしく挨拶した。