5月22日 (日) 岡田さん家(ち)で勉強会……
とうとう勉強会当日が来た……というか来てしまった。
付き合い始めた1週間しか経ってないのに、突然両親と会うことになるとか普通にあり得ないだろう。
かなり緊張している。
岡田さん家の前まで時間の10分前に到着し、インターフォンを鳴らすと出て来てくれた。
……良かった……いきなり両親、特に父親が出て来たら速攻で逃げてしまいそうだ。
「いらっしゃい」
「お邪魔します。この後ご両親は?」
「いやいや、とりあえず私の部屋へ直行して、それから……」
「助かる。かなり緊張の極致なんだけど……」
「ごめんね」
そのまま玄関から入り、岡田さんの部屋へ移動し勉強の準備を始めた。
初めての彼女の上に1週間もしないうちにもう彼女の部屋に入るとか緊張しかない。
それでもちらちらを周りを見る。ファンシーなグッズやぬいぐるみなどがちょこちょこと置かれ、かわいく飾っているようだった。
流石に女の子の部屋という感じだった。
山田の部屋なんぞ棚の上にはプラモの箱が山積みされていて、棚にはマンガやDVDのケースが……
こうも違うのか……
勉強の準備してると、ドアがノックされ岡田さんのお母さんがお茶やお菓子を持って入ってきた。
「うちの娘がいつもお世話になってます。勉強の方よろしくお願いしますね」
「いえ、こちらの方こそお世話になってますので。
勉強の方は赤点とかで補習とかになったり、成績悪かったりすると遊べなくなりそうですから」
「服部くん、そこまで成績は悪くないよ。ぷぅ」
「ごめん」
確かにそこまで悪いとは思ってないけどね、でも勉強してますよというポーズは取っておきたい。
そうでないと勉強会という名目でも会えなくなるかもしれないから、いい印象は持ってもらわないと。
「あらあらうふふ。ちょっといいかしら?お父さんが彼氏さんを連れて来てって」
「……うっ……」
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。付き合うのを止めなさいとか言ってるわけじゃないから」
「いえ……こういうことには慣れてませんので」
「普通そうだよね」
居間にいる父親のところに連れて行かれ挨拶をする事になった。
ああ、緊張する。これほど緊張することなんかそうそうないよな。
あとは、こちらから先制して挨拶を……
「岡田京子さんとお付き合いさせていただいています、服部正直です。
つまらないものですが……」
「どうもご丁寧に。 京子の父です」
「京子の母です。京子と仲がいいようで何よりですね」
と、お互い挨拶をし、勉強会とに来たので少々の雑談をして終わった。
特ににらまれるということもなく、「娘はやらん」とか何とか言われることもなく……
岡田さんの部屋へ戻り勉強会を再開するが、緊張+あれで良かったのかと不安が残る。
「あんな挨拶だったけど、どうなんだろうなぁ」
「特に怒ったりって感じじゃあなかったから大丈夫だと思うよ?」
「そお?」
「それよりあの手土産の方が私は驚いたんだけど?」
「え? 手土産は持って行くもんでしょ?」
「私達高校生なんだから普通手ぶらでも許されると思うけど。
で、何を選んだの?」
「そうか……
でもバイトしてるからそれなりに懐が温かいから、心証を良くするための出費は許容範囲かなと。
手土産は佃煮の瓶詰めかな。
ご飯にも酒のつまみにも合うかと思って……」
「……………高校生っぽくない」
「あははは、さて、試験勉強に戻りますか。分からない所は教えるよ」
やっと勉強会に戻り、持ってきたノートを見ながら岡田さんの使っていない教科書を借りて確認していく。
いつも通りの勉強方法である。
「ほとんどノート見るだけみたいだけど、それでよく点が取れるね」
「記憶しているのを再確認かな。それなりに点が取れる。全部やってる時間は無いしね」
「へぇぇ」
勉強会を始めてしばらくするとドアがノックされ、岡田さんが出るとお父さんが居た。
「何だろうか?」と緊張していると
「パソコンで分からんところが有るんだけど教えてくれ」
「何が分からないの?」
「上手く動かんから見て欲しいんだけど」
「それ私も多分分からないよ。そういえば服部くん、パソコン詳しかったよね」
「まぁそれなりに」
「ちょっと見てもらっていい?」
「どれ?ああ、これか……アップデートで問題になってるやつかな。
ネットで調べながらなら解決できると思うけど」
「ちょっとやってみてもらってもいい?」
「うん」
そのまま居間の方に移動してパソコンを操作し始めた。
あそこのOSのアップデートはよくトラブル起こすからね。
メーカーも対処方法を公開してるし、それでもダメな場合の方法を公開してるサイトもあるから、何とかなるだろう。
10分ほどパソコンをいじってなんとか解消した。
多分大丈夫。
「はい、どうぞ。これで大丈夫だと思いますけど」
「ああ、助かった」
「まだおかしいようなら言って下さい。出来る範囲で対応してみますから」
「悪いね、試験勉強中なのに」
「試験勉強っていってもそれほど切羽詰まってはいないので大丈夫ですよ。今日は岡田さんに教えるために来たって感じですから」
「そうなのか?……何にしろ助かった、ありがとう」
「いえ、この後も問題が出なければいいのですけど」
そのまま岡田さんの部屋へ戻って勉強会を再開した。
丁度分からないところがあったみたいなので、そこの所を教えて理解できたかを確認して、ちょっと休憩。
お菓子を食べながら連絡先の交換をしていないことを話したら、速攻交換することになった。
試験勉強の進み具合も聞いたら、いつもの勉強会よりは進んでいるらしい。
一緒に勉強している友達も理系が比較的苦手なので助かってると言われた。
なら良かった……でも試験の結果が良くないと困るけどね。
そろそろまた勉強を再開しようとしたときにドアがノックされた。
今度はお母さんの方だった。
「京子、私達これからちょっと出かけるから、お昼は自分で作って服部さんにごちそうしてあげてね」
「え? 出かけるなんて一言も言ってなかったじゃない」
「お父さんがパソコンの作業に時間がかかりそうだから午後からと思ってたんだけどね、服部さんが直してくれて順調に作業が終わったからもう出かけようって事になったのよ」
「えーーー!それならパソコンの方見てもらわなければ良かった……」
岡田さんが何やらお昼の件で絶望しているっぽい。
「何言ってるのよ。きちんと料理の腕を見てもらいなさい」
「料理がそんなにうまく出来ないから言ってるのよ!」
「ほほほ、じゃあ頑張ってね。服部さん、娘のことよろしくね?」
「はあ」
何やら任されてしまったらしい、生返事で返すしかなかった。
お昼までは時間がまだあったのでまだ試験勉強を続けていたが、岡田さんがずっと悩んでいるように見えた。
昼食について悩んでるのかなぁ?
お昼になったので勉強会を中断してご飯を作ることに。
「どうしたの?大丈夫?」
「いやぁ、料理はそれほど上手くなくってどうしようかと」
「調理実習は?」
「切る専門、食べる専門って感じ。調理はしてない」
「そうなんだ。材料を切れるならあとはそう難しくないんじゃない?とりあえず何があるか見てみたら?」
「そうね」
冷蔵庫の中身を一緒に確認したところ、豚肉やハム、卵、ネギ、キャベツ、中華麺や冷やご飯などそれなりに昼食向けの材料が残ってた。
「チャーハンや焼きそばは作れそうだね。どっちがいい?」
「どっちもそんなに失敗はしないと思うけど、焦げ付かなければチャーハンの方が楽かな」
「じゃあチャーハン作ろうか。岡田さん、ネギは輪切り、ハムは10㎜弱角くらいで細かく切っておいて」
具は他にタケノコやシイタケなんかもあれば入れるかな、同じくらいに切っておくこと。
冷やご飯はレンジであらかじめ温めておいてっと。
フライパンに多めの油を入れてから卵を入れて油を吸わせてから炒めて、ハムやネギとか具材を一緒に投入。
具材が炒まったら塩こしょうをして下味を付ける。
暖めた冷やご飯を入れて切るように炒める。時々軽く押しつけて水分も飛ばす。
押し付けてジュージュー音がしなくなったら余計な水分が飛んだ証拠。
お店みたいいお玉を使って炒めるのが楽かな、お玉の腹でご飯を押し付けやすいし。そうじゃなければしゃもじなんかやりやすい。
「パラパラになったらもう一度塩コショウで味付け。少し強めに味付けしておく方がおいしいかも。
最後に醤油を鍋肌から少し流し込んで混ぜたら完成。
そんなに難しくはないでしょ?」
黄金チャーハンを作るんなら卵と先に混ぜておけばいいよ。
卵に塩こしょう、醤油を入れてあらかじめ味付けしておけばいい。
今回はハムを使ったけど、チャーシューの切れ端や鳥皮、鮭のハラスなんかもいい。
鳥皮、鮭のハラスはあらかじめ塩コショウをして下味付けてからじっくりカリッとするまで焼いて油を出す。
その油を使って具材やご飯を炒めると風味や味が変わっておいしいよ。
「うーーーん、見た感じはそうなんだけど……」
「後は何回もやれば上手くなるよ。
高火力で手早くやりたいところだけど、慣れるまで焦げないように少し火力を抑えても良いと思うよ。
じゃあ食べようか」
「うん」
できあがったチャーハンを食べる。
岡田さんが凹む。
おいしかったらしい。
「おいしい分出来ない自分に凹む」
「僕だって最初から出来たわけじゃないんだけどね?
何度も焦げ付いたり味の加減だって上手くいかなかったりしたし。
最後の醤油や卵に油を吸わせるのは、テレビやおじさんがやってたのをまねてやってるから」
「そうなんだ」
「そうそう。うちは両親が働いてるし妹がいるから、夏休みとか長い休み期間は面倒見させられたから出来るようになってるだけ。
やらないと出来ないし、失敗して上手くなるもんだから。出来るようになりたいならできるようになるまで付き合うけど?」
お昼を済ませてまた試験勉強に戻り、時々雑談をしたけどでやっぱり僕の好みを知りたいとかでその辺り話しつつ、岡田さんの両親が戻ってくるまで続け挨拶をしてから帰った。
岡田さんSide
「お昼ご飯どうだった?」
私は目に見えて凹んでいる。
「どうしたの?」
「服部くんに作ってもらった……出来そうになかったから」
「あらあらまぁまぁ」
「で、どうだったんだ?服部くんの腕前は」
「チャーハンだけどおいしかった。
色々説明してもらいながら作ってたけど、やっぱり作ってる回数が違うから手際も良かった」
「「…………」」
「勉強だけじゃなくて、料理も教わりましょうか……」
「まぁ、俺も服部くんの料理が食べたいな。また来てもらいなさい」
「……うん……」
連絡先を交換したので帰ってから岡田さんと連絡を取ったんだけど……
「お母さんが服部くんに料理を習いなさいって……」
「え?そりゃあ構わないけど」
「お父さんもまた来てもらいなさいって。多分気に入られてる」
「え?そうなの?それならいいけど、いきなり?」
「……うん」
うれしいと言えばうれしいけど、ちょっと複雑な気分。
誤字訂正
10行目:「助かる。かなり緊張の極地なんだけど……」
→ 「助かる。かなり緊張の極致なんだけど……」
29行目: 確かにそこまで悪いとは思てないけどね、でも勉強してますよというポーズは取っておきたい。
→ 確かにそこまで悪いとは思ってないけどね、でも勉強してますよというポーズは取っておきたい。
2023/11/15
久々に鮭のハラスが手に入ったので、昨日炒飯にしてみました。
細かく切ってややカリッとするくらいまで焼いて油を出して、その油を使って具材を炒めて作りました。
鮭の旨味が油に含まれているので、ただのサラダ油を使うよりはおいしくなりました。
2025/09/02
現在次世代の話を連載中です。興味がある方はご覧いただければ幸いです。
「 遊園地デート?いえ、心霊スポットで私は除霊師みたいなことをしています。なぜか?」
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