10月29日 (土) 修学旅行 次の日……
目が覚めて、しばらく自分の家ではない事に気づかなかった。
朝のバイトは今日も休みを取っていたからゆっくり眠れたけど、その分意識がはっきりしてない。
珍しく出てくるのが遅いからと、京子さんが部屋に入って来た。
起きてはいることを確認して、京子さんが声をかけてきた。
「正直くん、おはよ。具合いが悪かったりする?」
「おはよ、京子さん。寝過ぎたんでぼーっとしてた。
いつもは早く起きてるから」
「なら良かった。でも、具合いが悪かったら付きっきりで看病できたのに」
「その時はお願いするよ」
ようやく起き出してリビングの方へ移動する。
キッチンの方は、もうすぐご飯の準備が終わりそうな状態だった。
「おはようございます」
「おはよう。良く眠れた?」
「バイトがなかったんで寝過ぎました。そのせいでちょっとぼーっとしてますけど」
「よく眠れたなら良かったわ。もうすぐご飯ができるから京子と待っててね」
「はい」
ダイニングのテーブルの所に座って、リビングのテレビを見ていた。
京子さんのお父さんが起きてきた。
「おはよう」
「おはようございます」
「うん、朝から息子がいる風景はいいなぁ。いつも男一人だからさみしいんだ」
「ははは」
朝ご飯は白米にスタンダードな焼き鮭、味噌汁、豆腐、海苔。
「服部くん、おかわりしていいからね」
「ありがとうございます」
普段朝食はシリアルで済ませてるから、白米の朝食は母さんが転勤する前ぶりかな。
焼き鮭の塩加減もちょうど好みの塩辛さで、うん、美味しい。
久々の白米の朝食を堪能した。
「服部くんは今一人暮らしだったよな。朝食はどうしてるの?」
「朝食は今シリアルですね。春休み中はトーストにしてましたけど、最近はもうずっとシリアルです。それの方が栄養価が高いし、プラス牛乳と野菜ジュースでいいかなと」
「……料理ができるのに、それなのにシリアルで済ましてるのか」
「朝からパン焼くのも面倒になったんで」
「その割にはうちではホットケーキ作ったりしてたけど……」
「あれは特別ですよ、特別。毎日はやりませんよ」
流石に毎日は学校行きながらやりたくない。
でも、仕事に行きながら弁当や朝食を作ってくれた母さんには感謝してる、今は。
「服部くん、うちで朝食も食べて行く?」
「いやー、流石にそこまでお世話にはなれませんよ。
それに一緒に学校に行ってる宮崎が寂しがりますから」
「えっ?ほんと?正直くん」
「冗談だけどね。そうなったら吉村さんと学校に行くだろうし」
「確かに、そうだよね。その方が吉村さんは喜ぶんじゃあ……」
そうだと思うけど、宮崎がほんとに一緒に行くようになるかは不明。
あいつにそこまでの度胸があるか次第かな。
朝食を終え、リビングで京子さん達と話の続きをしていた。
お茶を飲みながら、修学旅行でいなかった分話をする。
やっぱり家族の団欒は必要だ。
「そうだ、服部くん。この先の進路についてはどうするの?」
「進路ですか……
前は専門学校に行って、なるべく早く仕事に就きたいと思ってましたけど……」
「けど?」
「京子さんの事を考えると、大学行った方が良いのかなと思ったりもしてます」
「ほーー、考えてはいるんだね。どういう学科とか考えてる?」
「専門だとプログラムや3D CAD、3Dアニメとかの出来るところを、大学もコンピュータ関連の学部を考えてます。
3DのCADやアニメは需要があるし、CADの方は製造業でも使うから潰しが利くかなと。3Dプリンタの出力とかあるし。
地元の大学も叔父さんに聞いた所によると30年くらい前は悪くなかったそうなので、調べる必要はあるけど候補として考えてます」
大学は京子さん次第ではあるけど。
「京子さんは進路はどうするの?」
「これといって特には考えてなかったけど、なんとなく大学に行くのかなぁと」
「京子……服部くんよりうちの娘の方が心配になってきたよ」
「むー、だって正直くんみたいに特に勉強したい事があるわけじゃないし」
「まぁ、大学に行って将来を考えるっていうのが主流みたいだし、仕方がないのかもしれないけど……」
確かにそんな感じですよね、みんな。
僕みたいに考えてる奴の方が少ない。
「お父さん達の前の世代のような花嫁修業って時代でもないからな」
「私もそんなことは考えてないよ。でも大学に行くにしても、親に負担をかけてまで遠くの大学に行く気はないかな」
「じゃあ、二人して地元の大学目指そうか」
「うん、その方がいいかもね」
とりあえず地元大学に行く予定で勉強しますか。
学科もそこの状況も確認して選ばないとね。
「服部くん、いいのかい?」
「ええ、大丈夫ですよ。
専門で学ぶ内容も、ソフトさえあれば独学でも覚えられますし。
ソフトは高いですけど買えない程高くもないですから」
専門学校は教材の使い方を教えて、練習用の課題を出してるだけだから独学で出来ない事もない。
パソコンは適度にアップグレードしてるからそれ程問題はないし、後はソフトとやる気の問題。
彼女との将来のためとか思えばやれるでしょ、なんて。
そのまま昼食まで他愛のない話をして過ごした。
昼食もご馳走になって、夕飯はお返しに僕が作る。
午後は夕飯に作る料理にちなんで、奥さんを亡くして小さい娘と暮らす男性教師と同じ学校のJKが、料理を作りながら触れ合っていくハートフルな作品のアニメを見て過ごした。
京子さんは小さい娘がやんちゃで可愛いとご執心のようだった。
いい時間になったのでスーパーへ買い出しに出かける。
「今日のは簡単だからすぐに京子さんも作れるよ」
「そうなの?」
「味付けはしないから楽だよ」
今日は本当に簡単で美味しい料理だ。
食材は、メインが鶏肉、白菜。後、豆腐、キノコ。
鶏肉はもも肉、キノコはえのき茸にした。
鶏皮を下にして火を入れるので、皮のある肉が良い。キノコは鍋に入れるものなら舞茸でも椎茸でもいい。
その他、味噌汁の具にタマネギを買う。これなら他にも使えるし。
レジに行くと……
「久しぶりね、どうしてたの?」
「修学旅行だったんです。東京の方に」
「一緒にいろんな所回った?楽しかった?」
「はい、楽しかったですよ。それにいいこともあったので。えへへ」
「何々?若いっていいわねぇ」
と、もう完全に顔なじみなってしまっている。今後もここに一緒に買い物に来るんだろうなぁ。
帰ってきたけど、今日は簡単で時間もあまりかからないので、一緒に買って来たスイーツをお供にお茶にして京子さんの両親としばらく話していた。
スーパーでの話をしたら、「そうそう、『娘さん達来ないけど別れちゃったの?』って聞かれちゃったのよ」って言われた。
僕たちの事を気にかけてくれる人が増えてるなぁ。
さて、ご飯の方は事前に炊飯の準備をしてあるので、既に炊飯がスタートしている。
今日のおかずは「鶏白菜」。
マンガ「甘々と稲妻」の主人公の一人の高校教師の実家の方の郷土料理。確か富山だったような……石川県だったかもしれない。でもあの周辺ではポピュラーな料理のようだ。
基本は鶏肉と白菜、酒だけで出来るシンプルな料理。鍋のようにポン酢などに付けて食べるとか。
「白菜は茎と葉を分けてね。大きさは2,3cm角くらいに切って。えのき茸はほぐして」
鶏肉も同じぐらいに一口大より小さめに切る。
豆腐は12等分くらい(1/4にしてさらに3等分)くらいに箸で掴みやすいサイズに。
「鍋に鶏肉の皮目を下にして鍋に敷き詰めて、その上に白菜の茎の部分を乗せて。
それから酒を適量なんだけど、白菜の水分も出るけど焦げ付かないように多めに入れておいた方がいいと思う」
それから鍋に蓋をして強火で火にかけ5分ほど。最近流行のコールドスタート。
5分ほどしたら一旦火を止めて、鶏肉と白菜を混ぜる。
もう5分強火でいくので、水分が少なそうなら酒を追加しておいた方がいいかもしれない。
白菜の葉、えのき茸、豆腐を乗せてさらに5分強火で。
基本蒸し煮の料理。水分が少ないと焦げるので要注意。少しくらい鶏皮が焦げるくらいならまだいいけどね。
鶏肉と白菜だけで作ったときに物足りなく、「これ鍋料理だよね?」って事でキノコや豆腐を入れるようになった。
鍋料理に合う材料なら他の食材でも合うと思う。
「これで完成」
「味付けしないの?」
「うん、しない。鍋料理のようなもんなんで、ポン酢とかのタレを付けて食べるんだ。
好みのタレを準備しておくといいよ。マンガによるとニンニク醤油とかもいいらしい。
僕の場合、ポン酢と焼き肉のタレのブレンドで食べることもある」
「へぇ」
食材さえ切って準備していれば10分くらいで出来る料理。
味付けもしないし簡単。
出来上がったので早速味噌汁と一緒にテーブルに出す。温かいうちに食べよう。
ポン酢と焼き肉のタレ、その他のタレもあるものは出して好きに試してもらう。
僕はまずはポン酢で、その後焼き肉のタレを追加して味変。
「簡単だけどおいしいね。私でも確実に出来るよ」
「味付けしないし、焦げないようにお酒の量を調整しておけばいいからね」
「調理時間10分で出来るなんて、忙しいときはいいわね。これだけおいしいなら不満は出ないだろうし」
「ああ、タレさえ自分好みに出来ればいいからな。自分一人の時でもこれで晩飯が済ませられそうだ。晩酌にも良さそうだし」
「じゃあ、その時は食材買っとけばいいですね?」
「いや、毎回はちょっと……」
白菜の旨味成分と鶏肉の脂の旨味が合わさっておいしく出来たので、今回もみんなに満足頂けたようで。
僕もお腹いっぱい食べてちょっと苦しいかも。
「11月3日に予定がないなら釣りに行かないか?ニジマスの釣り堀だけど」
「釣りですか?特に予定は決めてないですけどね?京子さん」
「うん、私はいいよ」
「僕も他に予定はないので大丈夫ですよ」
「8人乗りの車出すから、あと4人は乗せられるけど友達も良かったら誘っていいよ」
「「……」」
*後書き
「甘々と稲妻」など料理マンガは好きです。
「衛宮さんちの今日のごはん 」「きのう何食べた?」は今買ってます。
出てくる料理を全部作るような事はないですが、いくつか作って食材とかアレンジして定番化してる料理があります。
2025/09/02
現在次世代の話を連載中です。興味がある方はご覧いただければ幸いです。
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