3月1日 (水) 卒業式 そして……1
受験も終わって今日まで、ゆっくり過ごした。
京子さんは吉村さん達と遊ぶ時間を増やしていた。
高橋さんも入試はなんとかしたらしく、途中から参戦して残り少ない高校生活を満喫した。
宮崎、山田と車を出して1年生組も一緒にショッピングモールに行ったり、京子さんの家でパジャマパーティーをしたり。
僕達男共は、その横で話してたり荷物持ちをしたり、僕はお菓子を準備したりしていた。
とうとう卒業式の日が来た……
昨日家に帰って、今日は家から宮崎と自転車で学校に向かっている。
学校に行くのはこれが最期だ。宮崎と自転車で通っていたけど、もうそれもない。
僕は京子さんと地元に残るけど、宮崎と吉村さんは大阪に行く。
今月中頃にはもう引っ越すらしい。
2年勉強して帰ってくることにはなっているけど、小学4年から約9年の付き合いで仲良くしていたことを考えると寂しく思う。
「今日で卒業だな……」
「ああ、卒業だ。結構楽しい高校生活だったな?」
「そうだな。こんなに楽しくなるとは思わなかった。京子さんがいたからな」
「おい、山田達は無視かよ」
「ははは、そんなことはないよ。散々遊んだしな。
特に山田はどんだけ繋がりがあるんだよって感じだったからな」
山田とはすごく奇異な縁で結ばれていたとしか言えない関係だったな。
山田はこっちに残るからまだまだ続くけど。
「みんな結構バラバラになるんだな」
「だな。武田は福岡の大学に受かったし、西川と高橋さんも大阪だし」
「俺と吉村さんは戻ってくるからな」
「ああ、待ってるよ。まだ大学に行ってるからここにはいるしな。
でも、実はもう子供が出来ましたってのはなしな」
「アホかっ!勉強しに行くんだよ。子供作りに行くんじゃあねぇよ」
いやー、若い2人だからね。歯止めが効かなくなっちゃうとねぇ?
うちの親たちじゃないけど、宮崎達の親も子供が出来れば嬉しいだろ。
ほんとに孫の顔を見たがるよね?
「まぁ、その辺は頑張れ」
「どっちを頑張るんだ……」
「大阪に行く前に送別会やるから、食べたい料理のリクエストよろしくな」
「ああ、分かった」
今日は卒業式なんで在校生は現生徒会長と数人くらいしか登校していないはず。
なので、回りにいるのは同級生だけだったりする。
普段なら聞き耳を立てている1年2年もおらず、非常に静かだ。
「そういえば今日入籍するんだよな?岡田さんと」
「卒業式が終わったら行く予定」
「みんなついて行くつもりだけどいいか?」
「別にいいけど、書類を提出して終わりだけどな」
「特に何かしたいわけじゃないから。見届けたいだけ。あと、今後の参考に」
「宮崎達が結婚する時の必要書類が分かっていいか」
卒業式後の話もしていると、もう校門まで辿り着き、駐輪場に自転車を置いて教室に向かう。
教室に向かう途中も同級生しかいない。
本当にもう卒業式の日なんだなぁ。
教室に入り自分の席に荷物を置き、京子さんも山田達も居ないから今居る大戸の席に行く。
「おはよ、大戸。合格して良かったな」
「服部、おはよ。
はああ、ほんとに合格出来て良かったよ。河野さんも合格してたし」
「よかったな。いい大学生活が送れるよ」
「まあな。でも、頑張って勉強して就職しないと結婚も出来ねぇよ」
「それまでに彼女さんにフラレないといいな」
「ひでぇ」
とりあえず合格も祝ったし軽くからかったので彼女さんと交代して、山田達が来たのでそっちに移動する。
「おはよ、山田、西川、武田。武田は大学合格おめでとう。良かったな」
「ありがと、服部。いい教授がいるから講義を受けたかったんだよなぁ」
「そっか、それなら頑張った甲斐があったな。僕が進学する大学も面白い先生がいたけどな」
「もう大学の先生とつながりが出来たのかよ」
山田達の方にも送別会の話はもうしてあるから、食べたい料理のリクエストをするように言っておいた。
あと、4日にやるお泊まり会の飯のリクエストも。
その後、SLGで何をやるか話をしていた。やっぱりガンダムかなぁ、という所だ。
話をしていると京子さんが来たのでそっちに移る。今日のことがあるので話をしておくために。
「京子さん、おはよ」
「正直くん、おはよ。隣に正直くんがいないと夜は寂しいよ」
「今日からまた戻るから」
今日はそれほどザワつかなかった。流石にもう慣れただろうし、入試も落ち着いて精神的に安定しているのかもしれない。
ついでに言うと「大学で彼女を作ればいい」と思っているのかもしれない。出来るかは不明だけど。
「そうだ。卒業式が終わったら市役所に行こうね」
「うん。書類を提出するだけなんだけど緊張するね」
「書類はもう母さん達が揃えてくれてるし、指輪もこの間一緒に受け取りに行ったからちゃんとあるよ」
「それでもやっぱり緊張するよう」
「ははは、チュッ。これで落ち着かない?」
「もう」
とりあえずイチャイチャして緊張を解そうか。それにまだまだ時間はあるし。
卒業式が終わってからだから。
終わっても他のクラスの人と別れを惜しんだりするだろうから、すぐに市役所には向かえないと思うよ。
その間に落ち着けることが出来ればいいかな。
「服部、やっぱり目の毒だ。家でやれ、家で。なあ、ナベ」
「そうだそうだ。彼氏や彼女がいるやつだって大っぴらにそんな事できないんだぞ」
「恥ずかしがらずにすればいいじゃん。花火大会の時だってやってたんだし」
「恥ずかしくて出来るか!あの時は回りが暗かったから出来たんだっ!!」
そうかもしれないけど、もうバレてるんだし見せびらかせばいいだろうに。
渡辺さんはもう父親公認なんだし。
僕は京子さんを後ろから抱きしめた状態でそんな話をしていた。
話していたら先生が教室に入ってきた。
いつもと違う先生の格好が……非常に似合わない。
普段が体育教師でもないのにジャージ姿だったのうちの先生が、スーツ姿なのは非常に違和感しか感じない。
「親戚の人が来られても困るんですが、うちの担任は病気なんですか?」
「ちがーうっ!ちゃんと担任本人だ!」
「えー、違う人ですよ。なぁ、みんな」
「「「「「そうだそうだ」」」」」
「ほんとなんだよ、信じてくれよ。1年の時の生徒は入学式の時に見ただろ?」
「覚えてませーーん」
そろそろいいか。泣きそうだし。
「先生、冗談ですよ。なぁ、みんな」
「「「「「「「そうそう」」」」」」」
「……お前らぁ。まあいい。今日で最期だ。
あともう少しで体育館に入場だ。式は大人しくしてろよ」
「「「「「「「はーーい」」」」」」」
しばらく教室で雑談して、入場時間を待っていた。
流石に席を離れて話をするのはまずいと思うので、近くの奴と話をしていた。
とうとう卒業式の時間が来た。
1組から順に入場して行き、途中下級生が花のリボンを付けてくれた。
それから体育館に入っていくと、すでに保護者席はほぼいっぱいになっていた。うちの母さんと大輔さんと優子さんもいるのが見えた。
保護者席の中央を通り、自分達の席に進んでいった。
クラスの全員が席まで来ると一斉に着席した。
全クラスが着席すると卒業式が始まる……
開式の言葉があり、国歌斉唱する。といっても校歌以上に歌ったことのない国歌なんて歌えるわけがない。
その後は卒業証書授与だ。元生徒会長が代表して受け取る。壇上まで上がって受け取り降りてきた。
続いて校長とPTA会長の祝辞だけど、長い上にPTA会長なんか縁のない人に祝辞をもらっても誰も覚えていないだろう。
祝電も同じだ。他校へ転任した元担任とかならともかく、基本見ない。
在校生の現生徒会長が祝辞を述べ、卒業生代表の元生徒会長が答辞を述べる。この辺もあまり皆興味もなく聞き流していた。
最後に校歌斉唱し、閉式の言葉で終わった……
1組から順に退場していき、教室に戻る。
校舎に入る頃にはもう列は崩れ、僕は京子さんと手をつないで教室に向かう。
「終わったね、京子さん」
「うん、終わっちゃったね、正直くん」
それ以上は言葉はなく、ギュッっと手をつないで歩いていった。
教室に着いても手をつないだまま、京子さんの席で話をしていた。
先生が入ってくると皆静まり返り席に着いた。
先生もなかなか言葉を発せず、教室全体を見回していた。
それも終わり、ついに最期の言葉を僕達に告げ始める……
先生の最期の言葉を聞いて泣いている人もいた。最期だもんなぁ。
迷惑はかけてないけど、いろいろ心配はさせただろう。
その分お返しはしてるはずだ、球技大会とか文化祭とか吉村さん達の成績とかで。
以前のこともあったはずだけど、京子さんとのことにうるさく言わずにいてくれてありがたかった。別の先生であればもっとうるさかったんだろうけど。
そういう所はいい先生だったよ。
「最期の最期にいつもの一言だ。
服部、学生の内は子供を作るなよ。これから入籍するんだろうけどな。
お前達の両親が協力的とはいえいろいろ回りから言われるからな?」
「分かってますよ。子供は就職してからです。
京子さんの学生生活に迷惑はかけたくないですからね」
「分かってるならいい。仲良くやれよ」
「「はい」」
これで先生からの言葉は終わった。
卒業証書をそれぞれ1人ずつ渡し声をかけ、最期のホームルームが終わった……
### 続く ###
2025/09/03
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