プロローグ
プロローグなのでかなり短め。
「ねぇねぇ。君可愛いねー!俺たちと一緒に遊ばない?」
「いい思いさせちゃうよ〜?」
「け、結構ですっ!あの、学校に遅れてしまうので、通してください…」
それは、高校二年のゴールデンウィーク明けの登校日のことだった。
弁当を作る暇がなかったので、コンビニで昼飯を買おうと寄り道した。するとうちの学校の制服を着た銀髪の女の子が、チャラ男二人に絡まれてるところを目撃してしまった。
うわぁ…。ああいう迷惑なナンパ師ってリアルに存在するんだ。キッショ〜…。
周りに人いっぱいいるのに、よくあんなこと出来るな。
「学校なんて別にいいじゃん?一日くらいサボったってバチは当たらないぜ」
「そうそう。俺らと一緒に来れば、すっごい気持ちいい経験が出来るぜ?」
おえぇ…。気持ち悪っ!エロ同人でも今日日聞かねぇぞあんなセリフ。
ナンパ下手くそかよ。俺やったことないけど。
「ですから結構です…。いい加減にしないと、警察呼びますよ?」
「おお出た出た。警察呼びますよ〜、だって。そんなこと俺らがさせると思ってんの?」
「ひっ!?」
「もしもし警察ですかー?今女の子がナンパ野郎に誘拐されそうになってるんですけどもー」
「「「!?!?!?」」」
背の高い方のチャラ男が女の子に手を伸ばそうとしたところで、俺は警察に電話を入れた。演技でもなんでもなく、ガチで電話を入れた。
面倒事は嫌いだし、警察から事情聴取を受けることになるから、ただのナンパなら放っておいたのだが……ただのナンパではなくなってきたので警察を呼ぶことにした。
「おいそこのガキ!?なにやってんだ!やめろ!?」
「あー。早く助けに来てくださーい。俺殺されそうなんで。場所は―――」
「やめろっつってんだろ、このガキっ!」
「ッ!?」
この時の俺もバカだったなーと思う。人の往来がある場所で無理矢理女の子を連れてこうとする奴らだ。
逆上してぶん殴ってくることだって充分考えれたのに。
―――バキッ!ドゴッ!バキャッ!
俺は警察に場所を伝え終えると同時に、チャラ男二人からリンチに遭った。
「キャーーーッ!?」
「お、おい!止めるぞ!?男どもは手伝え!」
あー……痛い…。だから面倒事は嫌いなんだ。
こうして首突っ込むといつも酷い目に遭う。一時の正義感に身を任せたらこうなるってわかりきっていたのに……また余計なことをした気分だ。
―――まぁ、いっか。父さんは困ってる女の子がいたら助けてやれって言ってたし、母さんが丈夫に産んでくれたから死にはしないだろう。
俺はチャラ男二人に殴る蹴るされる中、徐々に意識が薄れていくのを感じた。
最後にはリンチは止んで、パトカーのサイレンの音と誰かが泣きながら俺を揺すって呼び掛けてくる声が聞こえた。