7 今後の生活
夕飯が終わり、一息つくと、お政さんが私に話しかけてきた。
「さて、茜さんが持っている素養を調べてみるかね。」
「ここで出来るのですか?」
「ああ、調査用紙を作るのは、錬金術師の仕事だからね。」
「なぁ、俺も、薬売りになると決めた時、やったきりだから、見ていていいかい。」
「茜さんがいいなら構わないが、どうする?」
「それって、人に見せたりするようなものなのですか?」
「職を斡旋する口入屋とか私みたいな錬金屋、村の村長とかが立ち会って行うものさ、不正防止にね。だから鳳屋みたいのは、立ち会わんね。」
「そうなのですか、見られて困るようなものでないのなら構いませんよ。」
「九重様もやりますか?お武家様は基本行わないですからね。」
「いや、この街でしばらく探索者を行うつもりなので、特に必要はない。ただ俺も後学のために見せてもらえないか。」
「探索者は、必要ないの?」
「ああ、探索者は、武器や魔法を扱う技量や薬草の知識等必要な知識が一定以上あれば行えるので、試験さえ受かれば後は本人次第さ。それと貴族や武士も、基本世襲なのでやはり剣技や知識の習得を素養がなくてもある程度できればよいので、俺は素養調査をしたことがない。」
「えーと、じゃぁ、逆に素養な必要な職業って?」
「それは、商人や職人と言った者が奉公先、修行先を決めるのに行う、後は金に余裕のある農民が奉公に上がる先を見つけるときだな。商人、職人も長男から三男くらいまでは、自分の親の元で働く者が多いので、実際は三男以下の子供や働く予定の息女くらいだ。」
「ただ、最近は、跡を継げる可能性の少ない次男や三男も最近は速く独り立ちができる職に就くため素養調査をする者も増えている。かくいう俺もその一人だ。」
「うーん、便利な割に利用者は少ないのね。」
「この国では、確かに利用する者はすくないが、大陸にあるこの技術を作った国では、働く年齢になると国中の者が素養調査を受けねばならないらしいぞ。まぁ、それは兎も角、さっさとやってみようじゃないかい。」
「よし、早速やってみるけど、どうすればいいのかしら?」
「この用紙のここに名前。茜の場合、この国で活動する名前を書けばよい。」
「え?それだけなの。」
「ああ、それによって魔力を感じ取り、素養のある技能が示される。」
「なんか簡単なのですね。」
「まぁ、複雑だと誰でもできるとは言えないだろ。」
「確かに。では、書きます。」
あれ、この国での名前か、関所で記帳した名前を書けばいいか。そう考え「九重茜」と記入する。
「で、暫くするとここに素養のある職が記入される。」
お政さんが、そう言って用紙の空白部を指さすと、そこに文字が浮かんできた。
「ええと、算術、話術、調理、画力、投擲術、魔術、草本学、薬学、魔道具学、錬金術。結構該当する者なのですね。」
「普通は、多くてこの半分くらいなのだけどね。算術、話術があれば、たいていの商家なら雇ってもらえるし、調理もあるから料理屋でもやっていける。錬金術と魔術なら、私が教えるよ。他にやりたいことがあるなら薬学なら、まぁ鳳屋にでも弟子入りしてもいいし、その他なら、私が立ち合い人の名前を入れるから、口入屋にでも持って行って、斡旋してもらうんだね。」
「えーと、魔術と錬金術、両方を教えてもらうことはできるのでしょうか?」
「別に構わないが、そうなると色々準備が必要になるね。」
「準備ですか?」
「魔法を教えるとなると街中じゃ簡単な生活用の基本魔術しかできない、それと街の外でもできなくはないが、恐らく魔法の使用許可が下りない、ここじゃ、魔法を使うとなると迷宮で教えなければならなくなる。」
「どうしてですか」
「なぜなら、ここの迷宮は第三階層までは、森林と平原になっていて、しかも魔物がいないという特殊な構造になっていて、そこの第三層の平原は、第一層の平原と採れる薬草が変わらないため、その一角が魔法の練習場となっているからだ。」
「魔法を習うなら、そこでやる必要があるということですか。」
「そういうことだね、只、そこに行くには、探索者証の階位の八位を受け取らねばならない。」
「探索者になって依頼をこなしたりして八位まで上げないといけないということですか?」
私は、ライトノベルの知識とかでよくある知識を口にした。
「いや、少し違う。ここ佐加里の迷宮は、第一層から第三層までは、魔物が出ないので、第二層までは、採集とかしなければ金を払い、名前を記帳すれば誰でも入れる。だが、採集をするには、薬草の知識を得て、試験で階位を得なければならない。」
話を聞くと、六位までは、迷宮探題で試験を受ければ、その結果次第で、その階位で行えることができる許可が出るとのことだ。その内容は以下の通りとのこと。
階位 試験内容 許可内容
十位 第一層平原の薬草知識 第一層の平原の薬草採集
九位 第一層森林の薬草知識 第一層の平原、森林の薬草採集
八位 第二層の薬草知識 第三層までの移動と平原、森林の薬草採集
(第三層は第一層と採集物が同じため。)
七位 基礎戦闘実技、魔物知識 第五層までの探索
六位 戦闘実技、解体実技 第十層までの探索
ちなみにそれ以降は、以下の通りらしい。
階位 昇給要件 許可内容
五位 第十曹階層守護者の魔石 第二十層までの探索
四位 第二十層階層守護者の魔石 第三十層までの探索
三位 第三十層階層守護者の魔石 現在の最到達階層(第三十四層)までの探索
二位 第三十四層階層魔物の魔石 第三十五層以降の探索 第35階層到達以降変更有
一位 未定 未定
あと、他の迷宮では、十位から八位までは独自に決められ、七位から四位までは、ここと同様で、それ以降は到達階層によって条件が変わっているとのこと。他の三迷宮の最深到達層は、日吉迷宮が四十四層、堂満迷宮が三十七層、風雅迷宮が三十二層とのことだ。
この迷宮では、現在千人以上探索者が登録されているが、階位一位は当然空席、二位、三位も空席(第三十四層到達が五十年以上前とのこと)、四位が四十人程、五位が百人程、六位と七位で二百五十人程、そして六百人程が八位までの登録者とのことだ。上位到達者が少ないのは、薬草採集で生活ができるのと、四位、五位となると貴族から士官の申し出があったりするため引き抜かれるからだそうだ。
また、この階級は、迷宮での活動のための階級で、迷宮以外の仕事も迷宮探題で紹介はしてくれるが、階級等に縛られず、交渉や受諾等は、個々で条件を詰めていくとのこと。
ただ、依頼側から、希望階級と希望金額が提示されるので、ある程度階級による選別は行われるが、その内容が適当かなど条件については、迷宮探題では、責任は負わないらしい。
そして、お政さんが言っていた、準備とはその試験のための知識を学ぶ期間と八位探索者になって、魔法の練習と錬金術のための薬草採集や指導で週のうち三日はつぶれてしまうため、店番の確保と私が使い物になるまで、店に置く錬金成果物の余剰作成を行うためのものだった。
私は、色々手間が掛かることを知り、弟子入りを断ろうとしたが、お政さんは、偶々弟子がいなかっただけで、経済的にも、時間的にも元々問題がないことを説明されて、弟子入りをすることとなった。
次回のあらすじ
茜は、この世界で生きるため、お政さんから錬金術と魔法を習うための準備を始めるのでした。その為店を開けることが多くなるので、店番を雇わないとなのですが、次回 第8話 店番候補 是非読んでください。




