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異世界放浪記 狐人の錬金譚  作者: 日比野 麻琴
第1章 迷宮都市細腕繁盛記
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4 これから

新型コロナワクチン3回目接種で初めて関節の痛みと熱が出て一日中寝込みました。



 「俺が知らないだけで、方法はあるのかも知れん。気を落とさずに探せば良い。」


 九重は、塞ぎ込んでいる茜にそう話しかけた。

 茜は、九重が言った理由でこちらの世界に来たのなら、魔力のない世界へ多分戻る方法はないのだろうと察したが、心配をかけまいと気丈に振る舞うため、こう言った。


 「そうね、探せば帰る方法がわかるかも知れないしね。」


 私の言葉を受けて、龍馬さんが私に提案をしてきた。


 「そうだとも。ところで狐のお嬢ちゃんは、これからどうする?行く当てがないなら、俺は、薬の行商人だから、女性と一緒だと怪しまれる。九重の旦那となら、浪人でもお武家様だ、先にある関所も怪しまれず通れるし、その先の街に入れれば生活基盤も作れる。」


 「行く当てはないからその提案は嬉しいけど、九重さんはいいの?」


 私は、その提案を微笑むように聞いていた九重さんに、迷惑でないか尋ねた。

 九重さんは、こともなげにこう言ってくれた。


 「俺は構わんよ。幸い妻の形見の着物を持っている。それを着れば、妻か義理の妹だと言って通せば怪しまれないだろう。」


 「そんなので、通れるの?」


 私は、関所というイメージからかなり厳しく調べられると思っていたが、どうもそうでないらしい。


 「普通なら、街側の関所だから、鑑札がなくても名前と簡単な身分記入で入れる。ただ出るときは、入ってきた関所からしか出られない。他の関所から出るには、街で鑑札を作る必要があるし、女性一人では簡単には作れない。」


 竜馬さんが、関所について説明してくれた。

 そして、それを引き継ぐ形で九重さんが、言葉を続けた。


 「それに、今の茜殿の格好はいささか奇をてらいすぎている。身分を証するものもなく、そのままの恰好で行くとどうしても騒ぎになると思うぞ。それと俺の持っている女物の着物も、妻のものだったので、貴族家や、それに仕える武家の者が着るような物なので、すまんが俺と一緒というわけだ。」


 「なるほど。もし迷惑でなければお願いします。」


 私は、街に入るための提案を受けて、そう了承した。


 「相分かった。では街まで一緒にしよう。その前に茜殿は、着物は着ることができるのか?」


 「うーん、着物は、来たことがありません。」


 「そうか、すまんがお妙殿、茜殿に、着物を着せて、これからも着られるように教えてやってもらえぬか。一応晴れ着なのでお妙殿の着ている物とは多少つくりは違うが、着方は一緒のはずだ。」


 「分かりました。着物をお借りしますね。茜さん参りましょう。」


 お妙さんは、そう言うと、九重さんから着物を受け取るため、手を伸ばした。


 「うあ、茜さん、貴族様の着物ですよ。とてもすべすべしていてきれいですね。私触るのも初めてです。」


 着物を手にすると嬉しそうに、私をお妙さんは、私が来た川沿いに連れて行った。

 お妙さんは、貴族の着物と言ったけど、なにか違うのかな。


 「あの、お妙さん、さっき、貴族の着物を触るのも初めっていったけど」


 「ええ、この着物は、貴族様やお武家様以外は、基本着てはいけない、魔物の素材から作られた糸で出来た着物です。なので、私は当然触ったこともないのです。もし、以前に触ったことがあったら、無礼討ちにあってここにはいないかもです。」


 「じゃあ、私も着てはまずいのではない?」


 私は、魔物の素材の生地が、絹のような扱いと聞いて、やっぱ異世界だねぇと感心しながらもそう口にした。


 「茜さんは、九重様の奥方か、妹君なのだから、構わないでしょ。さぁ行きましょう。」


  お妙さんは、いたずらっぽくそう言うと、大きな岩がある道から見えないところへ連れていった。

 そこで、丁寧に何回か帯の締める見本を見せながら、私が自分で着替えができるまで教えてくれた。


 「うん、上手に着られました。これなら大丈夫です。似合っていますよ。獣人さん用でないので、尻尾が隠れてきついかもですが。」


 お妙さんは、私の周りを回りながらそう言ってくれた。


 「着付けを教えてもらってありがとう。尻尾は、着物の中に納まっているので、確かにちょっときついけど歩くのには困らないわ。」


 私は、恥ずかしながらもお礼や着物を着た感想を言って、二人で待っている男達の方に、お妙さんと戻った。


 「なかなか似合って居るではないか。茜殿。」


 「ああ、狐のお嬢ちゃんの前の格好も良かったが、着物も似合っているな。」


 男たちは、茜の着物姿を見て、そう口々に感想を述べた。


 「そうでしょうか。おかしくありません?あと、狐のお嬢ちゃんはやめてよ。茜と呼んでください。」


 そう言って、私は、恥ずかしがりながら袖を腕に引っかけるようにして、一周回って見せた。


 「本当に素敵ですよ。」


 「ああ、もっと自信を持っていいぞ。」


 お妙さんと九重さんは、私の恥ずかしがるのを見て再度褒めてくれた。


 「あと、お妙殿は、村に帰るのか。」


 「はい、街に村で作っている細工物を売りに行った帰りに襲われたので、このまま帰らせていただきます。」


 「それなら、お妙ちゃん。逃げる途中に、背負いかごを投げ出しただろ?あれを売ってもらえないか。盗賊の持ち物を持って帰るのに使いたい。」


 「村に帰れば予備もありますので、構いませんよ。金は要りませんので使ってください。」


 「ありがたいが、人の物を只で貰うわけにも行かぬ。ちゃんと金は受け取るように。」


 そう言って、龍馬さんは、お金をお妙さんに渡した。


 「こんなに?多過ぎです。」


 お妙さんは、貰ったお金が多すぎると返そうとしたが、龍馬さんは、こう言って納めるよう促した。


 「盗賊の持ち物を金に換えれば結構な額になる。それに盗賊を倒したら懸賞金も貰えるから、気にするな。怖い思いをした迷惑料と思って、遠慮せず受け取れ。問答をしていると村に帰るのが遅くなるぞ。」


 「わ、わかりました。ありがとうございます。では、いただきます。今度街で会いましたら、助けていただいたお礼を改めてさせていただきたいのですが、どこに行けば会えますでしょうか。」


 「俺は、街の北側の錬金屋に居る。九重殿も茜さんも、もしかしたら一緒に居るし、無理なら場所は聞いとくよ。」


 「はい、今日は危ないところを助けていただいて本当にありがとうございました。」


 「そうか、もう大丈夫だと思うが気をつけて帰るのだぞ。」


 「うん、気をつけて帰れよ。」


 「お妙ちゃん、気をつけてね。また、会えるのを楽しみにしているから。」


 お妙さんと別れた私は、この世界のこととかいろいろ聞きながら街へと向かった。


次回のあらすじ


茜は、関所を抜けこの世界初めての街迷宮都市へ向かうのでした。次回 第5話 迷宮都市 是非読んでください。

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