道中にて
雲の隙間から地面に向かって幾筋もの光が射していた。
レンガの道を二人の男女がゆっくりと歩いている。
少女は時雨、魔法使いの少女だ。そしてもう一人の青年は秋、時雨の助手だ。
街への山道を歩き続けて、かれこれ40分くらいになるだろう。
彼女の家から一番近くの街までは徒歩で約一時間ほどかかる。雨の日くらいの静寂があった方が研究が捗るということで時雨の師匠が彼女に与えたのだった。
師匠の意見に半分納得しつつも、体力のあまりない彼女はよく「ここは不便だ」と愚痴を漏らす。
そして、また、
「はぁ、ここは不便だ……」
と時雨は愚痴をもらした。
愚痴をもらしながらもゆっくりと歩く時雨のペースに合わせて秋は横を歩いている。
「なぁ、師匠って研究馬鹿だとおもわないか?」
「時雨さん、あんまり恩師の悪口は言わない方がいいですよ。」
「それはそうだけど……」
むぅーとした表情で、時雨はとぼとぼと歩く。
「師匠はいつもこうだ」
ある日の師匠のことを、時雨は思い出す。
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あの日も雨が降っていた。時雨は師匠の研究室に呼び出しをくらっていた。
「時雨、また私の言った通りにやらなかったのか?」
「いや、でも、これじゃあ私のしたいことがわからな……」
「そこまでだ!前も言っただろう……君の研究計画は深すぎるんだ。ここを卒業して魔法使いとして独立したかったら、私の言った範囲で研究していなさい。」
「うぅ~、わかりましたよ。」
ぶーぶーという効果音が聞こえてきそうな表情のまま時雨は師匠のいう通りに研究スケジュールを書き直した。
「わかればよろしい。時雨、私は君の研究には期待している。でも、まだその時ではないのだよ。」
師匠は窓の外の雨の向こうを見つめてそう言った。
「まずは、魔法使いになって、どこかの街で生活する権利をもらわないといけない。我々魔法使いは、正式な魔法使いだと証明することで一般人と折り合いをつけたのだからね。昔は、悪い魔法使いもたくさんいて、街の人とよく争いになっていたんだよ。」
「それは、歴史の授業で習いました。」
「わかっているなら、よろしい。それでは、引き続き応援してるよ。」
時雨が研究室を後にすると、雨のサァーという音だけが空間を満たした。
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