第二話 神様(笑)
第二話です。
これ実はハーメルンに投稿してる作品なんですよ。
で、『どうせならなろうにも投稿しとくかぁ〜』という安易な考えでこっちにも投稿を始めたわけです。
まあ内容変えてないんで手抜きなんですけどね
不思議な雰囲気の仕事場から元の客間に戻ってきた僕達は、雫玖さんの『巡、お前人間と神の混血だぞ』発言についての概要を問い質した。
「どういうことだ?俺と渚紗はどちらも神ではないぞ?抑、神とはなんだ?其の様なものが、此の世に存在するのか?」
確かに、僕が半分神様なら父上か母上が神様じゃないとおかしいよね?そこんとこどうなのよ雫玖くん?(混乱)
「ああ。まず、巡には確実に何かが混ざっている。しかし、此の混ざり方は親のどちらかの種族に引っ張られたのでは無く、魂が人では無い何かの性質を持ち、其れに肉体が引っ張られる形で肉体の格が変異する、又は先祖返りで先祖代々の血が濃くなり過去に採り入れた血によって変異するという二つの例に酷似している。お前らの家が神の血を採り入れた等は迷いごとの類いでも聞いたことが無いため、まあ十中八九魂に引っ張られていると仮定出来る」
「そして俺が神だと判断した理由は、凡そ五年程前に『ナニカ』を発する護符を回収して欲しいと地方から依頼が来てな。回収に行くと、其れは中に薄い木の板が入っている如何にも普通の御守りの様なものだった。が、其の木の板から確かに『ナニカ』が発せられていることも確認出来たため、とりあえず軽くその場で視たんだ。だが、其れは俺の眼でもそこに存在するということ以外、全く何も分からなかった」
「ッ!?其れは本当か?」
「ああ。で、其の正体不明の護符を後日、彼処で覗いたんだが、まるで何処かに結界でも貼っているかの様な波長の『ナニカ』が確認できた。しかも、其の『ナニカ』は幾ら印符や結界、呪縛で縛っても消えるどころか弱くなることもなかった。そんな封印すら出来ない妙なものをこんな危険な物が多いところに置く訳にはいなかくてな。『ナニカ』に関する文献などを隈無く探したんだよ。そしたら其の村に置いてあった文献のなかに、妙な書物を見つけてな」
そう言って雫玖さんは、いつの間にか手に持っていたボロボロの書物のようなものを開いて、此方に差し出してきた。
其の書物の様なものを覗くと、昔の、まるで蛇の様な文字がずらっと並んでいた。
「この文献には題名がなく、ここ以外には何も書いていない」
え?此れこんなにページあるのに此処以外全部白紙なの?勿体無くない?などと、的外れなことを巡は思ったが、真剣な雰囲気の中でそんなことを言い出せるはずもなく、只々黙って読めもしない文字をひたすら眺めていた。
雫玖は此方に向けた書物の一行目の一番上の文字を指差し、口を開いた。
「そしてここには、『今は昔、八岐大蛇という大妖怪が居たそうな。八岐大蛇は幾人もの人間を喰い殺し、数多くの村を壊滅させた。八岐大蛇を恐れた人々は、その地で信仰されている神に救いを求めた。
その地の神は、人々の想いに答え、クガクという名でその地に降臨した。人々はクガクに助けを乞い、八岐大蛇の討伐を願った。クガクは人々の想いに答え、八岐大蛇に闘いを挑んだ。三日三晩続いた闘いは、クガクが自身の存在を贄に八岐大蛇の八つの首と、八つの尾、そして胴体をそれぞれに分け、封印する事で決着した。
人々は、八岐大蛇が二度とこの世に顕現しないように、各地に欠片を点在させたそうな』と、そう書かれている。そして、此の書には例の護符が置かれていた地に一つの欠片が眠っているとも書いてある。つまり、この書に書いてある事が真実であるとするならば、この木の板はクガクが封印を施した17の体の内のどれかの欠片、という事だろう。そして、此の『ナニカ』が神の力であるとすると、俺の眼がなにも映さなかった事にも説明は付く。人は所詮人でしかないからな。人智を超えたものに、適うはずも無い」
……なんかめっちゃ話長くありません?雫玖さんめっちゃ喋るじゃん。いつ息継ぎしてんの?
「……ふむ、其の護符から発せられてる『ナニカ』が、巡の『摩訶不思議な力』と同類の物だと、そういうことか」
「ああ。だが、護符と比べると巡の方が随分と濃かったな」
「あら?そうなの?」
「ああ、憖巡は護符みたいに『ナニカ』を発している訳では無いが、それでも本質的なものは随分と濃かったぞ」
「一応、そう危険なものでは無いのだな?」
「少なくとも俺はそう思っている」
「そうかそうか!では問題ないな!いやぁ、良かった良かった!」
「そうねぇ、良かったわ。ね?巡。」
「あ、うん。その、雫玖さん、ありがとうございました」
「ん?ああ、別に、どうせ暇だったしな」
あれ?最初忙しいって言ってませんでしたっけ?あ、分かりましたデレですね分かります。
「しかし、巡は神の子だったとは。流石、俺と渚紗の子だな!ガハハハハハ!!」
「本当、巡は凄いわ」
っ!?気、急にやめてぇ!!恥ずかしくて死ねるぅ!!目の前に、目の前に雫玖さん居るからぁ!!
「で?どうすんだ?此のまま帰んのか?」
あ、今サラッと流しましたね。流石父上と母上の親友をやっているだけのことはある。
「ふむ、そういえば例の護符はどうした?元の地に戻したのか?」
「いや、今は俺が預かっている。此れまで預かってきたものとそう変わらんことが分かったからな。見ていくか?」
「ああ、そうだな!ぜひ見せて欲しい!一目見てみたいのでな!」
「あら、そうねぇ、確かに見てみたいわ」
「……はぁ。んじゃ、此処で待ってろ」
雫玖さんは、そう一言残し上り口の反対にある襖の向こうに消えていった。
……え?結構僕の力って何なの?戦闘系なの?其れとも補助系なの?え?そんなに焦るな?ああ、さいですか……(察し)
◆◆◆
「此れだ」
其処に置かれた護符は、確かに話に聞いた通りの、何の変哲も無い御守りの様な物だった。
「ほう、此れが……確かに巡こと同じようなものを感じるな!」
「ええ。どう巡?何か感じる?」
何故だろう?此の御守りを見ていると、何か、引っ張られる様な、変な感じがする。此れはまるで……
「……呼ばれてる?」
「?巡、何か言ったか?」
そう口に出した瞬間、其れに触れたい、其れに会いたいと、僕が僕でなくなったかの様な欲望が、濁流のように溢れ出してきた。
「おい巡、危ねぇから其れには触んな。何かあってからじゃ───ッ!!」
雫玖さんの忠告を無視し、欲望のままに僕が其の御守りに触れると突然、強い衝撃と強烈な破裂音が、辺りに響いた。
其の衝撃を一般人の僕が一番近くで全身に浴びて、無事であるはずがなかった。
音が籠り、意識が遠のく。
思考がまとまらず、為されるがままに落ちていく僕の耳に、微かに聞こえた声。
『ほぉ、珍しいね。いいよ。歓迎しよう、混ざりよ』
一度聞くだけで、心の奥底から落ち着く其の声を聞きながら、僕の意識は完全に暗闇に落ちていた。
◆◆◆
目が覚めると、僕の目の前に広がっていたのは終わりの見えない白だった。
足元には赤、桃、黄、橙、そして白の、五つ色の彼岸花が点々と美しく咲き誇り、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
え?何此処?父上母上渚沙さんは何処へ?
「ようこそ、私の世界へ。歓迎しよう、同族よ」
僕が混乱し、オロオロと慌てていると、背後から優しい声色で、声がかけられた。
……あれ?なんか既視感。
「何方ですか?」
おそらく僕の後ろにいるだろう其の人に声をかけながら、僕は振り返った。
「……驚きました。随分と可愛いお姿をしてるんですね」
其処にいたのは、紫と黄の瞳を持ち、その背景と同化する程に真っ白な毛並みを持つ猫だった。
…………なんで猫?
「貴方は誰で、ここは何処でしょう?僕はどうすれば此処から出られますか?」
少し面食らったが、今欲しい情報を早口で捲し立てながら問う。
すると猫は、其の分かりづらい表情を歪ませ、小さく笑い、応えた。
「ふふ、面白い子だね、君は。いいよ、君の疑問に答えよう。まず私が誰かだったかな?私はクガク。かつて八岐大蛇に挑み、無様に負けた一介の神さ。で、此処は私の神域。まあ住居みたいな物かな?そして君がここから出る方法は、私の後ろの方にある現世と神域を繋ぐ門から出ればいい。」
「待ってください。貴方がクガクですか?」
「おや?ひょっとすると私の名前を聞いたことがあるのかい?そこまで有名では無かった筈なんだけど……嗚呼、成程。君はあの書を読んだのか」
「……僕読んだなんて言いましたっけ」
「まあ此れでも神様だからね。全能では無いけど万能ではあるんだよ?」
「いや、神様でも人の頭の中除くのは良くないと思います。其れと、自分で自分に様付けるの虚しくないんですか?」
いや、此の世の中にもプライバシーの権利ってもんがあるんですよ。あ、まだ此の世界には無いか。其れでもやめてください。
そう、素直に其の場で感じたことを口に出すと、数秒キョトンとした顔を見せた後に、堪え切れなくなったのか、大笑いを始めた。
えぇ……ちょっと怖いんですけど……(引)
そんな僕の心情を無視し、一頻り笑うと、神(仮)は目尻に涙を貯めた顔を此方に向けた。
「はぁ〜おっかし。君本当に面白いね、最高だよ。でも私は神(仮)ではありません。減点だね」
「だから人の心勝手に除くんじゃねぇんですよ」
何度言えばわかるんですかね此の神(笑)は。今貴方の評価最低ですからね?
「ふふ、其れは大変だ。ゴマでもすった方がいいかな?」
「止めてください。想像するだけで鳥肌が……」
「おや?良いのかい?其れなら、そろそろ本題に入ろうか」
「え、いや、もう帰らしてもらっても」
「君には私の後任を頼みたいんだ。まあ、単刀直入に言うと僕の尻拭いだね?」
「いや聞けよ」
無視すんなし。器小さいなぁ。神様(笑)でしょう?
「全部聞こえてるからね?」
「わざとですよ」
これだから神(笑)は。
「ふふ、其れで、私の後任をやって貰う君にはまず始めに、『神気』と『神威』の制御と発動、そして応用まで最低でもやって貰うよ」
「待ってください。僕一言もやるなんて言ってませんよね?」
「ふむ、まあやらなくてもいいけど、其の場合君の父上と母上は死ぬよ?」
………其れはまた、すごいこと言ってくれるなこの神(笑)は。
「どういうことですか。一から全て説明してください」
「まあ簡単な話、後5~10年位で私の力が完全に消滅するんだよね。そうすると私が貼った結界や封印は全て消えて無くなる。この意味が分からない君じゃないでしょ?」
「……八岐大蛇が復活するってことですか。でも其れに父上と母上が負けるとは思いませんが?」
なんてったってあの父上母上だよ?負ける姿が想像できないんですが。
「……ふむ、確かに君の両親は素晴らしい潜在能力を秘めているね。もしかしたら人間という枠組みをもう超えてしまっているかもしれない。だが、其れでも八岐大蛇には勝てないよ」
「根拠は?」
「八岐大蛇の厄介なところは恐ろしい程の耐久性と不死性でね。まず、神威か神気を纏った打撃か、神気が籠った武器による攻撃しか、八岐大蛇の持つ鱗に阻まれて効かない。しかも奴は16の頭と尾を同時に消し飛ばしても死ななかった。生半可な攻撃等はまず意味が無いね」
「……其れを封印出来た貴方は何なんですか?化け物ですか?」
「いや、神だね」
「ああ、そうですか」
「ふふ、まあ、君の両親が絶対に八岐大蛇に適わない理由はこの辺だね。君の両親は確かに人間を超越してるけど、決して神ではないからさ」
……困った。これは、本当に僕が頑張らないといけない感じなのか。ならば、
「一つ、条件があります」
「ふむ、言ってごらん?」
わざわざ言わなくても分かるだろうに。この腹黒神は。
「まあ、この際僕にしか出来ないこと、ということで今は納得します。ですが、一旦帰してください。父上や母上に色々と説明しないといけないので」
「ああ、勿論。ただ、私が大丈夫だと判断する迄はには此方で過ごしてもらうことにはなるよ?」
「は?何故ですか?」
「君を神通力などに慣らさないといけないからね。今の君はまるで巨大タンクに繋がってはいるが、出口が凍ってしまったがために動かず、水の供給ができない水道だ。其れを少しずつ外側から溶かしていくために、此処に居てもらう必要が有るんだよ」
ふざけんじゃねぇですよ、本当。
「……分かりました。ですが、僕の両親への説明は貴方がして下さいね」
「いや、私は此処から出られない………いや、うん。わかった。説明は私がしよう。只、君の身体を借りてもいいかい?」
「……依り代にでもするんですか?変な事したら殺しますよ?」
「しないよ。それじゃ、ひとまず君の両親に『巡君を僕に下さい!』とでも言いに行こうか」
「なんで僕の名前知ってるんですか。其れに、なんで其のネタ知ってるんですか」
「ん?勿論君の頭の中を覗いたからだけど?」
「……やっぱり受けたの間違いだったかなぁ……?」
「大丈夫。私に任せなさい」
不安でしかない……
僕はそんな爆弾を抱え、凰蘭に戻る為に歩き出した。
クガク
主人公の師匠ポジ。神様。
今の見た目はものすごく可愛らしいぬこ様だが、本来の姿は▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉▉
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性格は優しいが、気に入ったものにちょっかい掛けたくなるかまってちゃん。善人が大好きで、巡はもっと好き。巡の頭の中を覗いたら、面白いものが多くてこの先頻繁に覗くようになる。この後雫玖の両親に挨拶に行く。
「巡を、私にください!」
◆作者の裏話(という名の雑談)◆
正直、師匠ポジクガクにしようか雫玖にしようか悩みました。が、友人から「クガクでいいんじゃね?」と、意見を頂いたのでクガクにしました。え?大丈夫、雫玖は別の場面で活躍できるから!(フラグ)
巡の母上出すのムズいぃ……ポジションが微妙なんだよなぁ……だって父上で事足りるもん!(言っちゃダメなやつ)
後、クガクと雫玖の登場の仕方が被ってる件について。
レパートリーが少ないのも死活問題ですね(白目)
あ、尚作者はガラスのハートであるためアンチコメントはやめて下さい。アドバイス等はどんどん宜しくお願いします┏○ペコ