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魔術師の杖【コミカライズ】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@『魔術師の杖』
第三章 ネリアと王都の錬金術師たち

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84.レオポルドと話そう

ブクマ&評価ありがとうございます!

 内容が内容だけに、レオポルドに会うのは緊張する。こうやってエンツを送るのすら……ふぅっと深呼吸をしてから、わたしはエンツを唱えた。


「レオポルド、教えてほしいことがあって面会を求めます」


「……教えてほしいこと?」


 不審そうな声音だけれど、返事はわりとすぐにきた。用件をちゃんと言わないと、彼はきっと会ってくれない。


「グレンの『呪い』と言われる、チョーカーについて」


「……私に話すことはない」


 話はそれで終わった。


 ……。


 …………。


 ………………。


「あ……んのっ!すっとこ魔術師!」


 怒りのあまりわたしが握りしめた拳をふるふると震わせると、ユーリがあわててなだめた。


「ネリア、落ちついて……」


「ユーリ!行くよっ!」


 わたしはキッと顔をあげた。


「えっ、どこに?」


「レオポルドのところに……決まってんでしょうがっ!」


 わたしはユーリを中庭に引っぱりだし、ライガを展開した。


「待ってよネリア!彼は『話すことはない』……って!」


「あいつになくてもこっちにはあるの!居場所はわかってんだから、遠慮することないわ!」


「でもっ!」


 なおも抵抗するユーリをガシッとつかみ、わたしは無理矢理ライガを発進させた。


「い・く・わ・よ!」


「う、うわああああ!」


 思いっきり魔力をこめれば、ライガでどびゅんと一瞬ですよ、ええ。


 魔術師団の本拠地、塔の最上階にある師団長室に、ユーリとふたりで転がりこむように飛びこめば。

挿絵(By みてみん)

 書類が舞い散るなか、ぽかーんとした顔のバルマ副団長とマリス女史。


 そして女神か精霊かと見まがうような、この世のものとも思えないほどの美貌を、台無しにするようなシワをくっきりと眉間にきざみ、手で額を押さえたレオポルドがいた。


 怒りをたたえた黄昏色の瞳がこちらをジロリとにらみ、ぞっとするような低い声がその薄い唇から発せられる。


「話すことはないと言ったはずだが」


「聞こえたけど、こっちには話したいことがあるんだもの!」


「ユーティリス!おまえまでなぜ窓から入ってくるんだ。この非常識な女のまねをするな!」


「すみません」


「ちょっと!ユーリはわたしが連れてきたんだから、文句を言うならわたしにしなさいよ!」


「まったく……猫のときはおとなしかったのに。本当にうるさいヤツだな!」


「なっ!猫のことは言わないでよっ!そっちこそデレデレしてたくせにっ!」


「デレデ……その生意気な口、どこかに捨ててこいっ!」


「捨てられるわけないじゃない!あんたに言い返せなかったらストレスで死んじゃうわ!」


 その不毛な言い争いを目撃していた、バルマ副団長とマリス女史は、ぽかーんとした顔のまま、ヒソヒソと語りだす。


「すごいやり取りですねぇ」


「ウチの師団長ににらみつけられて凍りつかない人……はじめて見ましたよ」


 それにユーリも加わった。


「あのふたり、初対面からずっとあんな調子ですよ」


「そうなんですか?それは相性がいいのか悪いのか、わかりませんねぇ」


 結局いろいろとあきらめたレオポルドが、ちゃんと話をしてくれることになった。


 まぁ話をしないことには、わたしたちも帰る気がないからだろうけど。バルマ副団長とマリス女史は退室し、師団長室にはわたしたち三人だけが残される。


 銀髪の魔術師団長は眉間にシワをよせた仏頂面のまま、腕組みをして椅子の背もたれに体をあずけた。


 わたしとユーリもそれぞれ、彼に向きあうように座る。


「それで……グレンの『呪い』についてだったな」


「そう。ユーリからさっき聞かされたばかりなの。詳しい話をもうひとりの契約者である、あなたから直接聞きたくて」


「……言っておくが、私もそいつも自分の意志でグレンと契約を交わした。何が起きても自己責任だ」


「それは僕もわかっています」


 ユーリも真剣な顔でうなずく。契約は双方の合意がなければ交わせない。


 それが『魔力を増やすために成長を止める』という無茶なものでも、少年だったふたりはそれに同意したんだ。


「でもふたりとも未成年だったんだのに、そんな無茶なことしてだいじょうぶだったの?」


 レオポルドが眉を上げた。


「グレン・ディアレスがそんなことを気にすると思うか?」


「……思わない」


 というかレオポルドの場合、グレンにとっては自分の息子なのだし、虐待といってもいいぐらいの扱いだ。


 あのグレンならそれが、たとえ人倫にもとるような研究でも、やってしまうだろうけど。


 わたしがキュッと唇をかむと、レオポルドはため息をついて続けた。


「あの契約は成長期でなければ意味がない。だが私のときも鬼畜の所業だと批判されたが、ユーティリスはこの国の王子だ。王族につかうには危険すぎる。グレンは糾弾された」


 こちらの人たちから見てもグレンの所業は鬼畜なんだ。わたしの感覚と同じでホッとする。


「もともとあの男にしかできない術で、ほかにやろうとする者もいなかったが、ユーティリスの件で禁術に指定された。それが四年前だ。ヤツは王都にいづらくなって、しばらく各地を放浪していた」


 四年前って、わたしがデーダスでグレンに救われる一年前だ。


「もしかして、グレンがデーダスに住んでいたのって……」


「ああ。師団長の座まで追われなかったのは、私という成功例があったのと、ユーティリス本人が申しでた契約だったからだ。最初はヤツも断ったらしい」


 レオポルドで成功したとしても、同じことができるかはわからない。


 それに貴重な成長期を、成長せずに過ごさせるなんて……。レオポルドは目を閉じて、銀色に輝く長髪をかきあげる。


「ユーティリスが契約をしたと聞いて、バカなことをしたものだと思った。恵まれた生まれで不自由もなく生きてきて、国王の素質もあるくせに……なにが不満だったのかと」


 魔力は単純に力となる。 より多くの魔力があれば、より可能性だって広がる。けれどその方法は危険きわまりないもので、わたしの声は小さくなった。


「ユーリにもきっと事情があるんだよ」


 厳しい言葉を浴びせられる……と思ったのに、彼は淡々とつぶやいた。


「かもな。私が力を欲したのは……自由を得るためだ」


「自由?」


 うつむいていたユーリが、驚いたように顔を上げる。


「レオポルドは……魔術師団長になりたかったからでは?」


 彼はゆるく頭を振って、ユーリの言葉を否定した。


「いいや?私が師団長になったのは、誰にも頭を下げなくていいからだ。国王には礼をとる必要はあるが、アーネスト陛下は話のわかる男だからな。文句を言わせないよう仕事もしている」


 わたしは魔術師団のバルマ副団長を思いだした。レオポルドのかわりに、彼があちこちに頭を下げてそう。


 ユーリはとまどって彼へ質問する。


「ええっと……学園時代から騎士の訓練もして、竜騎士団の訓練に参加しているのは、強くなりたかったんじゃ?」


「まわりは成長して体格がよくなるのに、体が小さいとなめられるだろう。学園の相手は魔力持ちばかりだ。やり返さなければ、どんな目にあうかわからん」


 イヤなことでも思いだしたのか、レオポルドは顔をしかめた。うん、そこは聞かないでおこう。


口の悪いヒロインで本っ当にすみません。

レオポルドに迷惑しかかけてない。

挿絵(By みてみん)

『魔術師の杖⑤ネリアとお城の舞踏会』(2021年9月刊行)

イラストの使用についてはいずみノベルズ様とよろづ先生の許可を得ていますm(_)m

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この度々目にした「ネリア&ユーリ」のイラスト! 実際のイベントスチルなんかいっ!! ※躍動感溢れるイメージ映像です、じゃないとかあるっ!?(笑)
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