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魔術師の杖【コミカライズ】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@『魔術師の杖』コミティア155東4【F34b】
第三章 ネリアと王都の錬金術師たち

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80.まさかの婚約話

ブクマ&評価ありがとうございます!

じわじわ増えていてなんか嬉しいです。

 パロウ魔道具が家族向けに、新しい〝朝ごはん製造機〟を発売⁉


「わたしたちに教えられるってことは、もう確実なんですね」


 わたしが確認すると、アイシャはうなずく。


「今月中には発売予定で、すでに関係各所にお披露目は済んでいるわ。もうすぐ大々的に売りだすでしょう。でもあなたたちのは、まだ秘密にしないとね」


 彼女はテキパキと段取りを決めていく。


「術式はさっそく権利保護の手続きをしましょう。金属加工に強い工房の候補はいくつか挙げられるけれど……具体的な用途は告げず、まずプレートの試作品を作ってもらうといいわ」


「プレートの仕上がりで、どこの工房に任せるか判断するんですね」


 ビル・クリントが口を開いた。


「パロウ魔道具と関わりがある工房は避けたほうがいい。情報が漏れたら社長の性格からして、横やりが入るかもしれん」


「妨害されるってことですか?」


 ビルは顔をしかめてうなずいた。なにそれ、ビジネス戦争⁉


 ビジネス戦争を起こしたいわけじゃない。中庭で使える自分たち用のグリドルさえ、作ってもらえればそれでいい。


「パロウ魔道具は〝朝ごはん製造機〟で、王都の顧客をつかんで急成長したが、それ以外のヒット商品がない。今回の新製品に社運を賭けているだろう」


「ひえぇ……グリドル、発売しないほうがいいですか……?」


「それはダメよ」


 ビビるわたしに、アイシャが首を横に振る。


「構造がシンプルなグリドルは、調理の自由度が高い。使いやすくて魅力的な新製品だから、ギルドも手を貸すのよ。決めるのは私たちじゃない。消費者よ……そうでしょう?」


 開発にどんな苦労があったとしても、魔道具が商品として生き残るには、使う人に選ばれないといけない。


 ギルド長のアイシャが念を押した。


「私たちはギルド員の権利を保護すると同時に、消費者に優良な魔道具を届ける義務があるわ。品質には妥協しないでちょうだい」


「……わかりました」


 ビルがコーヒーを淹れるために立ち上がった。


「俺が言った食事産業のことも考えてみてくれ。俺のほうでもアイディアを練ってみる」


「はい」


 宅配ビジネスまで関わるつもりはないけれど、何かしらフォローしていくことになるのかな。それに頭で描いたアイディアが、こうやって形になるのを見るのは楽しい。


「こんなところかしらねぇ……」


 キリッとしていたアイシャが表情を緩め、ゆったりと椅子にもたれると、ビルが香りのいいコーヒーを運んでくる。


「どうぞ……みなさまのお口に合うかわかりませんが」


「いただきます!ありがとう、ビル」


 ソラが用意するものより、コーヒーは深煎りのようだ。深くコクのある味が、打ち合わせで疲れた頭をリフレッシュさせてくれる。


「おいしい!頭がすっきりしますね!」


 にこっとほほえむと、ビルもコワモテな顔をくしゃっと崩してニカッと笑う。おぃちゃん……なんかかわいいぞ。


「おいしいです……ありがとうございます」


「ほぉ……いい香りですね!


 ユーリも礼儀正しく、補佐官のテルジオもフムフムうなずきながら、香りを味わっている。


 そのまま雑談しながら、収納鞄の制作状況や竜王神事のことを話して……なにごともなくこのまま終わるかと思ったら、アイシャが怜悧な瞳をキラリと光らせた。


「ところでネリア。あなた見合い話を片っぱしから断っているそうね?」


「うげ……アイシャさんなぜそれを?竜王神事のあと、急に増えたんですよ。それにわたしだけじゃなく、ほかの団員にも来ていて……ヌーメリアのほうが多いですよ」


「そうなんですか⁉」


「なんでテルジオさんが反応するの?」


 落ち着いてコーヒーを飲んでいた彼が、ぎょっとしたのが不思議で首をかしげると、ビルが腕を組んでうなった。


「師団長以外は既婚者ばかりの魔術師団と違って、錬金術師団は独身ばかりだからなぁ……竜王神事でそっちの注目もあつめたか」


「変人の集団だと思われてたのにね」


「そうみたいです。大きな行事で注目されたみたいで」


「で、ウワサを聞いたんだけど……」


 ふっと息をついたアイシャが、言いにくそうに眉を寄せた。ウワサと聞いてわたしが思い当たるのはアレしかない。


「人を丸ごと錬金釜に入れたりなんかしませんよ!」


 けれどアイシャは手を振って、それを否定した。


「それじゃなくて、『新師団長が見合いをすべて断っているのは、錬金術師団にいる第一王子と婚約するからだ』……というウワサよ」


「婚約⁉」


 錬金術師団にいる第一王子……って、ユーリのことだよね⁉


 驚いたわたしは、ちょうど横に座っている彼と顔を見合わせた。彼も困惑したように目をまたたいている。


「ちょうどふたりがいるし、聞いておこうと思って」


「ないない!絶対ないですよ!ありえない!」


 勢いよく否定したら、そばに控えていたテルジオがあわてたようにささやいた。


「ネリアさん、そこは殿下のためにもバッサリ否定するのではなく、やんわりボカしてくれませんか」


「テルジオさん、なに言ってんの⁉」


「テルジオ、どういうことだ?おまえも知っているのか?」


 ユーリに問い質された彼は、少し困ったように口を閉ざしたけれど、ふたたびしゃべりはじめた。


「殿下が研究棟に入り浸っているからだと……王城内からでた話です。だからこうして私も、おふたりに同行しているんです」


「そのためだったの⁉」


 ユーリが顔を真っ赤にして、彼に食ってかかった。


「入り浸って……って、僕は仕事をしているんだ!ネリアとは別々に作業して、いつも一緒というわけじゃない!テルジオも知ってるだろ!」


 テルジオもうなずいて、気まずそうに続けた。


「よく知ってます。その……陛下が乗り気だという話で」


 あのオッサンか!


「やっぱり父上か……」


 ユーリがガリガリと短い髪をかきむしった。わたしとウワサになるだけでも、毎日まじめに仕事をしている彼がかわいそうだ。


「なんかごめん」


「ネリアのせいじゃないですよ。父にはよく話をしておきます」


 興味深そうにやり取りを見守っていたアイシャに、わたしは説明する。


「わたしが断っているのは、師団長になってまだひと月ちょっとで、結婚まで考える余裕がないからです。それに顔も知らないのにくる話なんて信用できませんよ」


「昨年も、ライアス・ゴールディホーンが竜騎士団長に就任したときは、ずいぶん外野が騒がしかったもんだ」


「ひえぇ……」


 公の場では仮面をつけているわたしにくる話なんて、冷やかしだろうと断っていたら、まさかそんなウワサが立つなんて。


「そうねぇ、独身の師団長への洗礼みたいなものね。でも婚約ぐらいしてもいいと思うけど」


「はいぃ⁉」


 アイシャ・レベロが落とした爆弾に、わたしはあっけに取られる。けれど彼女は冷静に分析したらしい。


「王家の後ろ盾ほど強力なものはないわ。それに第一王子は成人したばかりで、すぐに式を挙げるよう急かされることもないでしょうし。陛下は乗り気なんでしょ?」


「え」


「意外とあなたがいい候補なのよ。そこにいる筆頭補佐官だって、同じような考えだと思うわよ?」


 はい?


 わたしがテルジオを見れば、彼はすっと表情を消して無表情になった。あ、わたしに考えを読ませないようにしている……。


 え?


 なにこれ……話がどんどん具体的になっていくような……。


 どういうこと⁉

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
話が大っぴらになってきたらライアスが黙ってなさそうな案件来たぁ!?+(0゜・ω・) + wktk!!
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