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魔術師の杖【小説9巻&短編集】【コミカライズ準備中】  作者: 粉雪
第一章 錬金術師ネリア、王都へ向かう
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8.車窓からドラゴンを見る

挿絵(By みてみん)

魔術師の杖3巻

竜王ミストレイと竜騎士団長ライアス、ネリア

(絵:よろづ先生)

「あれは……ドラゴン⁉︎」


 車窓のはるか向こうに二体のドラゴンが悠々と飛んでいる。距離からいっても相当な大きさだ。


「竜騎士団ねー、王都にいればよく見かけるわよ」


「そうなんですね。すごい、プテラノドンみたい。あ……でもちょっと違うかな、やっぱりドラゴンだ」


「プテ……?ドラゴンを見るのは初めて?」


 わたしがはじめて見たドラゴンに驚いていると、メロディは不思議そうに首をかしげた。


 ドラゴンの素材は錬金の材料としても有名だ。ドラゴンの鱗、牙、爪に、竜王だけが持つという竜玉。錬金術師としては知っていて当然。


「はい。いるっていうのは聞いてましたが、実際に見るのは初めてです。竜騎士団ってことは、人が乗っているんですね」


「野生のドラゴンはあまり人目に触れることがないわね。たいていは険しい山中や樹海に隠れ棲んでる。でてきたら大騒ぎになるわ」


 その飛翔性や攻撃力の高さから、ドラゴンの私有は禁止されている。国内で飼われているドラゴンはすべて竜騎士団に所属している。


 ドラゴンを駆るにも魔力が必要で、魔力を持つ子が生まれたら、武術に秀でていれば竜騎士、頭が良ければ魔術師を目指すものらしい。


 錬金術師は?と尋ねたらメロディは微妙な表情になって。


「ええと……錬金術師は……なるべくしてなるっていうか、それしか、なりようがない、っていうか」


「……」


「あっ!ネ、ネリアも錬金術師だったわよねっ、えっと、」


「あーでも、わたしの師匠の錬金術師も、偏屈な変わり者のおじいさんでしたから、分かります」


「ああ!わかる?錬金術師って近寄りがたくて、うさん臭い御託ならべて、金のかかる実験しては失敗しているイメージかな。夢を追ってるんだろうけど」


「あはは、やっぱりそんなイメージなんですね」


「髪はボサボサで、身なりは全然構わないし。魔道具師のあたしが言えることじゃないけど、得体の知れないガラクタに囲まれて、部屋散らかして、術式こねくりまわしてる感じ?」


「確かに!師匠もそんな感じでした!」


「あはは、ネリアも苦労するわねー」


 わたしもそんな悪評高い(?)錬金術師の端くれだから、苦笑するしかない。


 まあ、錬金術師団長だというグレンがそんな感じだったし、他の錬金術師たちも似たようなものかも。


「それにひきかえ、竜騎士団は国防の要だもの。竜騎士も男の子にとっては憧れの職業よ。やっぱカッコいいもの!」


 エクグラシアの竜騎士は総勢二十名ほど。


 ドラゴンの絶対数が少ない上に、風の属性を持つ者だけが適性があり、ただ乗りこなすのみでなく、厳しい戦闘の訓練も受けなければならない。


 竜騎士ひとりで軽く一つの軍隊に対抗できるらしいから、戦力としては充分だそうだけど、簡単になれる職業ではないのだ。


 目を凝らすと悠然と飛ぶ二体のドラゴンの背に、キラキラした甲冑を身につけた人影が見えた。あれが竜騎士なのだろう。


「あれが竜騎士……」


「そうよ。鍛え抜かれた体躯に、まっすぐに伸びた背筋。さっそうと大空を駆けるんだもの。憧れるわよね。訓練も厳しいけれど、ドラゴンはプライドが高くて、乗りこなすのは大変だそうよ」


「空を飛ぶ手段って、ドラゴンと〝ライガ〟だけ?」


「〝ライガ〟?そういえば錬金術師団の偏屈じいさんが、魔力で飛ぶ魔道具を作ったとか聞いたわね。でも相当な魔力がないと空を飛べない、役立たずな代物らしいわよ?魔道具としては致命的よね。空を飛ぶっていったら、やっぱりドラゴンよ」


(錬金術師団の偏屈じいさんって、きっとグレンのことだろうなぁ)


 まさか、そのライガでエルリカ駅まで乗りつけたなんて言えない。


 デーダス荒野ではさんざん改良版ライガを飛ばしたけれど、他に民家もなかったおかげで、それは人目に触れていない。


 わたしの他に改良に取り組んだ者もいないようだ。


(魔導列車にしといてよかった)


 王城には行かないといけないけど、できたら目立ちたくはない。


 錬金術師グレンが作ったのはかなり前だと言うし、わたしが改良して便利に使っていたライガは、まだ一般的な乗り物ではないらしい。


(ライガ以外の空を飛ぶ手段がドラゴンだけなら、制空権を有する竜騎士団は重要だよね)


 わたしの改良したライガも、今は魔力任せで飛んでいるから、いろんな人が使える汎用型にするには、魔力効率を上げないといけない。


 ライガについてアレコレ考え始めたわたしは、列車の前方からザワザワとした騒めきが聞こえてきても気づかなかった。


 先に気づいたメロディが、前から急ぎ足でやってきた商人らしき男に、何があったのかたずねる。


「いや、俺もさっき聞いたばかりで、詳しいことはわからないんだけどさ」


 男はあわてたように、早口で教えてくれた。


「次のウレグで、竜騎士団の検問があるらしいぞ」


「竜騎士団の検問⁉︎」


ありがとうございました。

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