55.ウブルグとヴェリガンを迎えに行きました
よろしくお願いします
今日は竜騎士団へ拘束されていた、ウブルグ・ラビルとヴェリガン・ネグスコのひき取りだ。
ふたりを研究棟に戻してほしいと、師団長会議で伝えたものの、本当に反省しているか、観察期間をすごしていた。
やらかしたのが爆撃具を持ちだしたり、研究棟を使用不能にしたりと、かなり危険な行為だったため、わたしに協力してくれるかも面談しつつ確認した。
「ネリス師団長、ようこそいらっしゃいました」
転移陣で竜騎士団に移動すると、ウレグ駅でライアスと一緒に検問にきた、緑髪の副官デニスがにこやかに出迎えてくれた。
「こちらこそ、ラビルとネグスコの二名が長々とお世話になりました」
「いえいえ、王城内の治安維持は竜騎士団の管轄です。それに王都三師団のどれかが暴走したときは、ほかの師団がそれを止める役割を果たします」
そういってデニスさんは申し訳なさそうに眉を下げた。
「安全に王都までお連れできなかったばかりか、何度も危険な目にあわせてしまい、ネリス師団長にはご迷惑をおかけしました」
「ええっ⁉︎だいじょうぶですよ!このとおり無事ですし、おかげでライアスや竜騎士団のみんなとも知り合えました。気にしないでください」
「そうですか。しかしその仮面、王城内ではずっとつけてるんですね。まぁネリア嬢はかわいらしいから、団長もそのほうが安心でしょうが」
「はは」
みんなにかわいらしいと言われる、わたしの容姿だけど正直なところよくわからない。
この髪と瞳になって三年経つけれど、未だに慣れなくて、自分でもたまに手鏡でペリドットの瞳をしげしげと観察してしまう。
背も低いし華奢でメリハリもない体型だから、きれいとか美しいといわれることはないし。
そうすると残るほめ言葉は『かわいい』だし、どうとでも使える便利な言葉だもんなぁ。
デニスが団長室のドアをノックすると、すぐに返事があった。
「団長、ネリス錬金術師団長がお見えになりました。さあ、どうぞ」
「失礼します」
「ネリア!よくきてくれた!」
金の髪に蒼玉の瞳が美しい竜騎士がさっと椅子から立ち上った。ライアスは濃紺色に金のラインが入った、飾りの少ない機能的な騎士服を着ていて、うれしそうな笑顔を見せた。うわぁ……まぶしいです。騎士服やばいな、うん。
「ラビルとネグスコを連れてきてくれ」
ライアスはデニスに指示すると、わたしにソファーを勧めた。彼がわたしの向かいに座ると、すぐにお茶が運ばれてきた。
「ふたりはどうしていましたか?」
「体調は問題ない。すぐに業務に復帰できるだろつ。しかし、だいじょうぶか?反省したとはいえ扱いづらいふたりだぞ」
「クセのある人のほうがわかりやすいというか、グレンで慣れちゃってるんですよね」
「そんなものか」
それにユーリとふたりで仕事を回すのは、さすがにきつくなってきた。ヌーメリアはまだ帰ってこないし、ユーリもライガの術式を渡してからは、そっちが気になるのか研究室に遅くまでこもっている。
人手がほしい、切実に。
連れてこられたふたりは、前より健康そうに見える。ぽちゃっとしていたウブルグ・ラビルはシュッとしたし、ほおがこけていたヴェリガン・ネグスコの顔色もいい。
「なんだか……元気そうだね」
「拘留中は基本的に竜騎士たちと同じ生活サイクルだからな。激しい訓練はさせていないが、適度な運動はさせていた」
ということは研究棟に戻れば、また元に戻っちゃうかも……気をつけよう。
ウブルグ・ラビルは錬金術師団に籍を残したまま、マウナカイアビーチ近くの海洋生物研究所に異動することが決まっている。すでにヘリックスの残骸は送っておいた。
彼は黒蜂や爆撃具の第一人者なので、王都を離れても手綱をつけておく必要があるらしい。
「あの……僕の植物たち……どうなって……」
「ヴェリガンの研究室にある植物のこと?だいじょうぶだよ、クオード・カーターがめんどうみてた」
「そ……よか……った」
そう、ヴェリガンの部屋にあった植物……申しわけないことに、わたしは全然気づかなかったんだけど、副団長のクオード・カーターが世話をしてくれていた。
わたしには散々な態度の副団長だけど、錬金術師たちのフォローはきちんとしてくれる。
どうしたらいいんだろう。実務に長けた彼とはうまく関係を築きたいけれど、いきなりやってきたわたしが師団長になったのは、彼にとってはがまんできないだろう。
ウブルグやヴェリガンをけしかけたのも、クオード・カーターだと聞いている。
ふだんの仕事でもなんとなく見張られていたり、地味な嫌がらせをされたりということが続いている。
ウブルグみたいに彼を外にだしたほうがいいのかな。だけど彼はわたしが苦手な、デゲリゴラル国防大臣やダルビス魔術学園長と親しい。彼が望まないのに外にだすのも、いい解決策にならない気がする……。思い切って真正面からぶつかってみる?
それもなんだか良い結果を生まない気がして、わたしは彼への態度を決めかねていた。
「ねぇ、ふたりから見て、クオード・カーターってどんな人?」
「副団長か?頭が堅いな!わしがヘリックスのすばらしさをいくら説明しても、理解しようとせん!三十五時間も説明したのに!」
「しつこい……かな。わり振られた仕事……片づけろ……って、ずっと……言う」
それはカーター副団長のほうが大変だったんじゃ……。
「あやつの仕事ぶりは、錬金術師というよりは錬金職人じゃな」
「錬金職人?」
「錬金依頼……きっちり……こなすし、正確で……早い」
「だが発想力は乏しいから、グレンに対する憧れと、それを裏返したコンプレックスも強い。じゃから……」
いったん区切って、ウブルグ・ラビルはわたしを指さす。
「お前さんみたいなのは、目障りでしかたなかろう」
わたし⁉︎
最初から職場の人間関係、詰んだっぽい。
「カーター……ずっと……グレンのそばにいた……」
「じゃがグレンに認められ、後継者として指名されたのは『ネリア・ネリス』だった。……それだけでおまえさんは、ヤツにとってムカつく存在じゃ」
「ええと、それじゃ、クオード・カーターは、グレンに認めてもらいたかったのかな?」
「そうなるのぅ」
ウブルグはそこまで話すと満足したのか、目の前にあるお茶を手に取ってすする。
「グレン……そういうの……無頓着」
それじゃ、わたしがどれだけがんばっても無駄じゃん!というか元をたどれば全部グレンのせいじゃん!
グレン爺!少しでいいから副団長をほめたげてよぅ!……あうぅ……。
落ちこむわたしを、ウブルグはカップ越しに「むほぉ」と眺めると、「おお」と思いだしたように声をあげた。
「クオード・カーターのことなら、あいつがいたじゃろう、あいつが!」
誰?
「ほら、あいつじゃ、あの若いの……なんといったかのう、なんだ、あれだ」
うん、誰かなぁっ?
「だからほれ、あいつじゃよ!ここまでいってもまだ思いださんか?」
思いだすのは、わたしじゃないと思うの……。
そのとき、それまで黙って聞いていたライアスが口を開いた。
「オドゥ・イグネルのことではないか?ウレグ駅で会っただろう。あいつはいま、デーダスにいるはずだ」
オドゥ・イグネル⁉︎そういえば六人目の錬金術師がいた。
でもなんでデーダスに⁉︎
ありがとうございました。









