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魔術師の杖【小説9巻&短編集】【コミカライズ準備中】  作者: 粉雪
第二章 錬金術師ネリア、師団長になる
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55.ウブルグとヴェリガンを迎えに行きました

よろしくお願いします

「ネリス師団長、ようこそいらっしゃいました」


 転移陣で竜騎士団に移動してすぐに、にこやかに出迎えてくれたのは緑の髪のデニスさん。ウレグ駅でライアスと一緒に検問をしていた人だ。


「こちらこそ、ラビルとネグスコの二名が長々とお世話になりました」


 今日は竜騎士団に拘束されていたウブルグ・ラビルとヴェリガン・ネグスコ二名の身柄をひき取りにきたのだ。


 師団長会議で『研究棟』に戻して欲しいと伝えたものの、二人がやらかしたのが爆撃具を持ちだしたり、『研究棟』を一時使用不能に追い込んだりと、かなり危険な行為だったため、本当に反省しているか、新師団長に進んで協力する意思はあるか、など、面談しつつ観察期間を過ごしていた。


「いえいえ、王城は『竜王』の住み処でもありますから、王城内の治安維持は竜騎士団の管轄です。特に『王都三師団』のどれかが暴走した時は、他の師団がそれを止める役割を果たします」


 そう言うと、デニスさんは申し訳なさそうに眉を下げた。


「なので安全に王都までお連れできなかったばかりか、何度も危険な目に遭わせてしまい、申し訳なかった……と思っているのですよ」


「ええっ⁉︎大丈夫ですよ!この通り無事ですし、おかげでライアスや竜騎士団の皆さん達とも知り合えましたし、気にしないでください」


「そうですか……にしてもその仮面、王城内ではずっとつけられてるんですね……まぁネリア嬢は可愛らしいから、団長もその方が安心かもしれませんが」


「はは」


 皆に『可愛らしい』と言われるわたしの容姿だけど、正直なところ、わたしにはよく分からない。


 この髪と瞳になって三年経つけれど、未だに慣れないというか、特にペリドットの瞳などは、自分でもたまに手鏡でしげしげ観察してしまう。


 背も低く、華奢でメリハリもない体型だから、『きれい』とか『美しい』と言われる容姿ではない事は分かるが。


 そうすると残る褒め言葉は『可愛い』だし、『可愛い』ってどうとでも使える便利な言葉だもんなぁ。


 デニスさんが、団長室のドアをノックすると、すぐに返答があった。


「団長、ネリス錬金術師団長がお見えになりました。さあ、どうぞ」


「失礼します」


「ネリア!よく来てくれた!」


 濃紺色に金のラインが入った、飾りが少なく機能的なつくりの騎士服を着た、金の髪に蒼の瞳の美丈夫がさっと椅子から立ち上がり、嬉しそうな笑顔を見せる。うわぁ……眩しいです。騎士服やばいな、うん。


「ラビルとネグスコを連れてきてくれ」


 ライアスはわたしにソファーを勧めると、デニスさんに指示をだす。ライアスがわたしの向かいに腰掛けると、すぐにお茶が運ばれてきた。


「二人の様子はどうですか?」


「体調は問題ない。すぐに業務に復帰することも可能だろう。しかし、大丈夫なのか?反省したとはいえ扱いづらい二人だと思うが」


「クセのある人の方が分かりやすいというか、グレンで慣れちゃってるんですよね……逆に素直な人には気を遣っちゃいます」


 それにさすがにユーリと二人で仕事を回すのはきつくなってきた。ヌーメリアはまだ帰ってこないし、ユーリも『ライガ』の術式を渡して以来、気もそぞろに研究室に遅くまでこもっている。


 人手が、切実に、欲しい。


 連れて来られた二人を見ると……前より健康的になった?ウブルグ・ラビルはシュッとしてるし、ヴェリガン・ネグスコの顔色もいい。


「なんだか……元気そうだね」


「拘留中は基本的に騎士団の皆と同じ生活サイクルだからな。激しい訓練はさせていないが、適度な運動はさせていた」


 ということは、『研究棟』に戻ればまた元に戻っちゃうかも……気をつけよう。


 ウブルグ・ラビルは『錬金術師団』に籍を残したまま、マウナカイアビーチの近くの『海洋生物研究所』に異動する事が決まっている。すでに『ヘリックス』の残骸は送っておいた。ラビルは黒蜂や爆撃具の第一人者なので、王都を離れても『手綱』をつけておく必要があるらしい。


「あの……僕の……植物達……どうなって……」


「ヴェリガンの部屋の植物達のこと?大丈夫だよ、クオード・カーターが面倒みてくれてた」


「そ……よか……った」


 そう。ヴェリガンの部屋の植物達……申し訳ない事に、わたしは全然気づかなかったんだけど、クオード・カーターが世話をしてくれていた。


 わたしには散々な態度のクオードだが、元からの同僚のフォローはきちんとやってくれる。


 どうしたらいいんだろう。わたしとしては、実務面に長けたカーター副団長とはうまく関係を築いていきたいけれど、ぽっとでの得体の知れないわたしが『師団長』なのは、彼にとって腹に据えかねるのだろう。


 ウブルグやヴェリガンの背後に居て、彼らをけしかけたのもクオード・カーターだと聞いている。


 普段の仕事でも、何となく見張られていたり、地味な嫌がらせをされたりという事が続いている。


 彼を外にだした方がいいんだろうか……けれど、彼はわたしが苦手とするデゲリゴラル国防大臣やダルビス魔術学園長と親しい。彼が自分で望まない限り、外にだすのも得策じゃない気がする……。


 思い切って真正面からぶつかってみる?……それもなんだか良い結果を生まない気がして、わたしはクオード・カーターに対する態度を決めかねていた。


「ねぇ、二人から見て、クオード・カーターってどんな人?」


「副団長か?頭が堅いな!わしがどんなに『ヘリックス』が素晴らしいか説明しても、理解しようとせん!三十五時間も説明したのに!」


「しつこい……かな……わり振られた仕事……片付けろ……ってずっと……言う」


 それは、カーター副団長の方が大変だったんじゃ……。


「仕事ぶりに関しては『錬金術師』というよりは『錬金職人』じゃな」


「錬金職人?」


「錬金依頼……きっちり……こなす……正確……早い」


「だが発想力は乏しい。そのせいかグレンに対する憧れが強い。それを裏返したコンプレックスもな」


 じゃから、と一旦区切ってウブルグ・ラビルはわたしを指さす。


「お前さんみたいなのは、目障りで仕方ないだろうよ」


 わたし⁉︎


「カーター……ずっと……グレンの側……居た……」


「じゃがグレンに認められ、『後継者』として指名されたのは『ネリア・ネリス』……それだけでお前さんは、カーターにとってムカつく存在じゃ」


「ええと、それじゃ、クオード・カーターは、グレンに認めてもらいたかった……って事?」


「そうなるのぅ」


 ウブルグは、そこまで話すと満足したのか、目の前にあるお茶を手に取ってすすった。


「グレン……そういうの……無頓着」


 何それ?それじゃ、どれだけわたしが頑張ってみせても無駄じゃん!というか、元をたどれば全部グレンのせいじゃないかぁ!


 グレン爺!少しでいいから副団長を褒めたげてよぅ!……あうぅ……。


 ウブルグは落ち込んだわたしをカップ越しに「ふむぅ」と眺めると、「おお」と思いだしたように声を上げた。


「クオード・カーターの事だったら、あいつが居たじゃろう、あいつが!」


 誰?


「ほら、あいつじゃ、あの若いの……何と言ったかのう、なんだ、あれだ」


 うん、誰かなぁっ?


「だからほれ、あいつじゃよ!ここまで言ってもまだ思いださんか?」


 思いだすのはわたしじゃないと思うの……。


 その時、それまで黙って聞いていたライアスが口を開いた。


「オドゥ・イグネルの事ではないか?ウレグ駅で会っただろう……あいつなら今デーダスに居るはずだ」


 オドゥ・イグネル⁉︎そう言えば六人目の錬金術師が居た。


 でもなんでデーダスに⁉︎

ありがとうございました。

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