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魔術師の杖【11/1連載開始】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@11月1日コミカライズ開始!
第十二章 移動要塞バハムート

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537/561

537.対策本部設置

『魔術師の杖⑨ネリアと夜の精霊』

25日発売です!

挿絵(By みてみん)

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 わたしたちが合流したところで、ユーリが空を指して叫んだ。


「通信用魔道具!」


 ヒュンっと飛んできた魔道具から、ローラの声が聞こえる。


「あたしたちは市場にいる。ヌーメリアが呪術師と消えた!」


「ヌーメリアが⁉」


 そのまま魔道具は羽をたたむと、小さな丸いボールになる。すかさずキャッチしたユーリが、それを収納ポケットにしまった。


「どうしよう、戻らなきゃ!」


 あわてるわたしを制して、レオがグストーに話しかけた。


「ここでの用事は終わった。我々は港に戻る」


「どうするつもりだ。呪術師がいる限り、俺たちはたとえどんなに魅力的な条件をだされても、あんたたちに協力できない。」


「ならば一掃すればいい」


 レオの言葉にグストーは首を横に振る。


「持ちつ持たれつなんだ。連中は金を落とすし、サルジアの魔道具も流してくれる。こんな離れ小島で、豊かな暮らしができているのはそのおかげだ」


「それは違う」


 レオは黒い瞳でまっすぐにグストーを見る。


「バハムートの海域はもともと豊かな漁場で、サルジアに頼らなくとも暮らしは保証されている。呪術師に惑わされているだけだ」


「あ、あんたになにがわかる」


「この島には最初から地の精霊の加護を受けていない。エクグラシアと同じだ」


「あんたたちには魔石があるだろうが!」


 気色ばむグストーに無言で立ちはだかるレオとのあいだに、わたしは割ってはいる。


「バハムートには海があります!これこそが豊かな資源です。それに解決策だってちゃんとあります!」


「いったいなにを……」


 わたしはぐっとグストーをにらみつけて、その場で転移陣を勢いよく展開した。


「ごめんなさい、今は時間が惜しい。港へ転移します!」


 転移陣が光ったとたんバッと景色が変わり、わたしたちが一瞬で港に戻ると、グストーが目を見開いている。


「はっ?」


 ザワザワとした騒めき、グストーに駆け寄ってくるひとびと……そして人ごみのなかに白髪の魔術師を見つけ、わたしは彼女に向かって叫んだ。


「ローラ、ヌーメリアは?」


 遠くに見えた姿がふっとブレたかと思うと、もう彼女は目の前にいた。


「先に呪術師がアミュレットに術をかけた。けれどちょうどヌーメリアはそれを外していてね、持っていた市場の女性が奈落に吸いこまれた。逃げようとした男に飛びかかって一緒に転移陣へ……」


「もうここにはいないのね。痕跡は追える?」


 奈落に消えた女性と、呪術師を追ったヌーメリア、両方を探さないといけない。わたしはレオを振りかえる。こういうときに自然と彼を頼りにしてしまう。


「レオ、現場の指揮をまかせていいかしら?」


「……承知しました」


 風の属性を持つ竜騎士は、情報伝達の手段も豊富だ。すぐにエンツを数か所に飛ばし、ハルモニア号の船員たちもやってきて、現場の混乱は治まった。


「ほら、男たちは片づけを手伝え。女たちはケガ人の手当て。気持ちを落ち着かせる飲みものも準備しろ」


 グストーも顔役らしく、まわりを落ちつかせて、テキパキと指示をだしている。


「ユーリ、グストーと協力して対策本部を設置して。テルジオにここで港と施設の準備をする人材を選んでもらって」


「ハルモニア号に乗った使節団から選ぶんですか?」


 首をかしげるユーリに、わたしは説明する。


「エクグラシアに派遣してもらう余裕はないもの。今はひとりかふたりでもいいわ。寄港地とするには何が足りないか、何をすべきかを考えてもらうの。えっと……ドッグが必要なら機関士の意見も必要だわ。エリスかだれか……」


「バハムートに残りたいという者がいるかわかりませんよ。僕らはサルジアに向かわないといけません」


「まずヌーメリアを探すわ。だから彼女が見つかるまでのあいだに、考えてもらうの」


 ここであまりグズグズしている時間はない。けれど呪術師に対する対策は、これからだって必要になってくる。ちゃんとした足がかりをバハムートに残しておきたい。ユーリはキュッと眉を寄せたけれど、息を吐いてテルジオを呼ぶ。


「わかりました。テルジオ……できるだけのことをしてみよう」


 駆けつけてきたテルジオの顔も青ざめたままだ。


「はい。けれどヌーメリアさんは無事でしょうか……」


 ローラが渋い顔のままうなずく。


「あの子は心配ない。もともと慎重な性格だし、毒の知識がある限り命は無事だ。それがわかっているから飛びこんだんだろう」


 船員たちと話し合っていたレオが戻ってきた。


「魔道具師や魔導機関士の手を借りたい。回収してきた傀儡の分析を船でおこなう」


「はい、すぐに」


 気を取り直してテルジオも動きだす。こういうとき動揺を鎮めてさっと動けるのは、さすが王城勤めが長いだけのことはある。


 レオは髪をくくって頭を振り、運ばれてきたポーションを何本か、自分の収納ポケットにしまう。


「私はちょっとでかけてくる。マイレディ、きみは船に……」


「どこへいくの?」


 黒い瞳がわたしに向けられた。薄い唇が言葉を紡ぐ。


「地下深くだ。バハムートの深淵へ向かう」


「わたしもいく!」


 間髪入れずに、わたしは叫んでいた。

挿絵(By みてみん)

今回の表紙はダークオドゥ!

ヌーメリアの花嫁姿も!

挿絵(By みてみん)

サルジア皇帝やマグナゼ、レクサも出てきます。

レオポルドと奈々のシーンは書き下ろしです。お楽しみに!(^^)ノ

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