表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師の杖【11/1連載開始】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪
第十二章 移動要塞バハムート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

516/560

516.好みは黒髪

『魔術師の杖⑨ネリアと夜の精霊』

タクラ編です。こちらもお楽しみに!

挿絵(By みてみん)

挿絵①はミストレイとライアス。(なろう版465話)

挿絵②はヌーメリアとヴェリガンの船上結婚式。(なろう版475話)


「それで港を……」


「そうなの。条件としては『動力源となる魔石が手に入りやすい』『船の修理ができる技術を持つ魔道具師がいる工房がある』『サルジアの影響下にない』という三つが最低限かしら」


「そうですね。サルジアの都合で、港を閉鎖されてはたまりませんから。けれどエクグラシア領海の外となると……」


「どこか候補地はある?」


 ユーリは稼働している魔導機関を見あげて、ため息をついた。


「貿易港ならいくつか。でも協力してくれるかはわかりませんよ」


「それができなくて、何のための外交使節団なのよ。そのために王太子が行くんでしょ。一ヵ所だけに絞ると、何かあったときに困るもの。できれば複数ほしいわ」


 ユーリはぎょっとしたように後ずさると、頭をガリガリとかいて天を仰いだ。


「うわ、ネリアがさらにハードル上げてきた。僕はいいけどテルジオが心配だなぁ」


「少しいいだろうか」


 黒髪の竜騎士が口を挟むと、指をひらめかせて遮音障壁を展開する。


(レオポルドだったらこういうアクションは必要ないから、ちゃんと竜騎士のふりしてるんだなぁ……)


 最初は見慣れずとまどったけど、よくよく見ればすごく凝った本格的なコスプレじゃん!


 紺地に銀のラインが入った騎士服なんて、だれが着てもめちゃめちゃカッコいいし。むしろ護符をジャラジャラつけた重苦しい黒のローブより、断然わたしの好みかも!


 それにまっすぐな黒髪って、やっぱ親しみやすいというか……単純に好き!


(ヤバい。フォト撮りたい……あとでお願いできないかな)


 遮音障壁を展開してユーリと言葉を交わしていたレオが、くるりとわたしのほうに顔を向けた。え、まつ毛の長い黒曜石の瞳に整った顔立ちって……一瞬の流し目すら、すごく色っぽい。


「……聞いているのか?」


「いえっ、どこかでフォトをお願いしたいなって考えてました!」


 正直に答えたのに、彼の眉間にはググッとシワが寄り、どうやらダメな回答だったっぽいと気づく。


 ユーリがおかしそうに肩を震わせて、結局こらえきれなくてクスクスと笑いだした。


「ネリア、あからさまに見惚れちゃダメですよ。婚約してるんですから」


「そんなややこしいこと、言わないでください」


 だって当人じゃん!


 なおもユーリはいたずらっぽく、赤い瞳をきらめかせて聞いてきた。


「もしかして彼みたいなタイプが好みなんですか?」


「タイプっていうか……黒髪が好きかも」


「へぇ」


 ユーリは意地の悪い笑みを浮かべて、レオの髪に視線を走らせる。


「サルジア人には黒髪黒目が多いというし、精霊の血を引く彼らは美形ぞろいだって話ですよ。ネリアも目移りしちゃうんじゃないかな」


「ちょっと!それじゃ、わたしが浮気者みたいじゃん!」


 そういえばユーリってわりと煽り体質だった。そしてレオはというと……。


「ほぉ。それは目を離せぬな」


(ひいいぃ⁉)


 氷点下の笑みにわたしは凍りついた。わたしまだ何もしてないのに。黒髪が好きって言っただけなのに。このひとも煽り耐性ゼロだったよ!


 冬だというのに背中に汗をダラダラかきながら、わたしは必死に言葉をしぼりだす。


「あ、あのぅ……遮音障壁を展開して、レオは何か話したいことがあったのでは?」


 わたしは黒髪が好きって話じゃないもんね。話をそらそう、そうしよう。


「…………」


 じっとわたしを見つめてきたものの、レオはふぅとため息をついて、疑問を口にする。


「港のことだが……この機関室でする話か?」


「ええと、それは……」


 わたしがチラリとユーリを見ると、彼は心得たように話しだした。


「わざとです。艦橋にいる者たちは艦長をはじめ、出自がハッキリしていますが、機関室で働く船員たちはタクラで雇われた者が多い。きちんとした身元調査を受けておらず、サルジアの間者が紛れこみやすい」


「……つまりハルモニア号の寄港地について、わざと情報を与えたのか」


「ええ。機関室なら雑談のように見えますし、いくつかの港に寄るついでに間者をあぶりだし、逆に監視下に置きます」


「なるほどな」


 これだけの大きな船を動かす魔導機関だ。機関室には主動機関に補助機関、艦内各所に動力を送る魔導回路……その動力源となる魔石倉庫などがあり、ここでも多くの船員たちが忙しく働いていた。


 もちろん見学者の王太子一行を気にして、チラチラと視線を送ってくる者もいたけれど、彼らがぜんぶ間者だとは考えにくい。


 全員が怪しいけれど、全員を疑っていたらキリがない。


「招待したからには、サルジアもいろいろと準備しているはずです。過去はともかく友好的な関係が築ければ理想ですが……」


「間者の動きでそれを探るわけか」


 納得したようにうなずいて、彼は遮音障壁を解除した。そしてにっこりと笑顔でわたしに問いかけてくる。


「錬金術師団長は黒髪がお好きとは知りませんでした。それでフォトはどこで撮りましょうか?」


 ……忘れられてなかったー!


 目がちっとも笑ってないよおぉ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者にマシュマロを送る
☆☆MAGKAN様にて11/1連載開始!☆☆
WEBコミックMAGKAN
『魔術師の杖 THE COMIC』

☆☆『7日目の希望』NovelJam2025参加作品。約8千字の短編☆☆
『七日目の希望』 ☆☆電子書籍販売サイト(一部)☆☆
シーモア
Amazon
auブックパス
BookLive
BookWalker
ドコモdブック
DMMブックス
ebook
honto
紀伊國屋kinoppy
ソニーReaderStore
楽天

☆☆紙書籍販売サイト(全国の書店からも注文できます)☆☆
e-hon
紀伊國屋書店
書泉オンライン
Amazon

↓なろうで読める『魔術師の杖』シリーズ↓
魔術師の杖シリーズ
シリーズ公式サイト
小説版『魔術師の杖』

☆☆作詞チャレンジ
☆☆
↓「旅立ち」↓
旅立ち
↓「走りだす心」↓
走りだす心
↓「ブルーベルの咲く森で」↓
ブルーベルの咲く森で

↓「恋心」↓
恋心

↓「Teardrop」↓
Teardrop
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ