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魔術師の杖【11/1連載開始】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@11月1日コミカライズ開始!
番外編

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506/561

506.ネリアの困惑

「レオネリの絡みもドンドンあってほしい」とマシュマロでメッセージを頂きました!

8巻はふたりのエンツでの会話シーンを増やしました。

誤字報告や感想もありがとうございます。

 背は高くてよく通る低い声、まっすぐな黒髪に黒曜石の瞳。竜騎士のレオはわたしが知る人物にとてもよく似ていて、けれど着ているのはローブではなく、紺地に銀のラインが入った騎士服だった。


 ハルモニア号でわたしは、護衛騎士となったレオと向かいあう。


「あの……」


「はい」


 彼はかすかに口の端を持ちあげてほほえむ。わかってる、大頬骨筋を持ちあげているだけってことは。


 瞳の色がちがうだけで、髪の色がちがうだけで、それに騎士服を着ているだけなのに、もうレオポルドとは呼べない。


「レオはなぜ、わたしの護衛騎士に?」


 さらりとした黒髪が吹きつける風に舞い、整った目鼻立ちの中でも黒曜石のような輝きを放つ瞳が、まっすぐにわたしを見つめた。


「カーター副団長からの推薦です。それに父の故郷でもあるサルジアを、この目で見ておきたい」


「副団長の推薦なんだ……」


 言っていることはウソじゃないのだろう。彼はドラゴンにも乗れるし、剣も扱える。それに魔法だって得意だ。対抗戦をきっかけに、たびたび塔にいくようになった副団長と、護衛騎士の話になったのかも。


 それにレオが護衛騎士として同行することは、ライアスやローラ・ラーラも知っていた。わたしはすぐそばにいるユーリを振りむく。


「ユーリは知ってた?」


「いいえ」


 首を横に振ったユーリは、わたしよりも前に進みでた。


「レオ、ひとつ確認したいことがある」


「……どうぞ」


「今回サルジアに招待されたのは僕で、ネリアは師団長として同行する。きみはあくまで護衛騎士で、公の場で彼女をエスコートするのは、僕になるけどいいのか?」


 問いかけるユーリの横顔が緊張している。わたしも最初のころ、彼と話すのは緊張したものね。がんばれ、ユーリ!


 心の中でグッと拳を握ってユーリを応援していると、レオはうなずいて落ち着いた低い声で返事をする。


「おふたりの安全は、この身にかけてお約束を」


「それは頼もしいね」


 きっぱりと言い切ったレオと、少しにらみ合うようにしてから、ユーリはわたしを振り返って苦笑する。


「僕もまさか彼がここまでやるとは思いませんでした」


「え?」


 ユーリは赤い色に戻した髪を、くしゃっと握りしめて遠い目をした。


「あなたの婚約者ですよ。何よりも職務を優先すると思っていた。この人選は彼の意向でしょう。信用できる人物をあなたのそばに置きたいみたいだ」


「え……そんなに心配かけたのかな?」


 だからってどう見ても、この竜騎士は彼本人じゃないですか!


「どうやらそういうことみたいです。自覚なしですか?」


「引きかえすなら、まだ間に合うよね?」


 わたしはチラッと彼を見あげて確認する。


「ええとレオ……ナルドさん、エクグラシアでのお仕事はどうするつもり?」


「部下が何人かいますが、みな優秀です。留守を任せても問題ありません」


「ぜったい部下の人は困っていると思います!」


「さて?」


 塔にいるバルマ副団長やマリス女史の、困り果てた顔が目に浮かぶ。師団長が仕事ほっぽりだしてどうすんのよ!


 けれど竜騎士のレオは無言のまま、薄くほほえむだけだ。大頬骨筋を持ちあげているだけだってのはわかっている。


「あなたなら今からでも、転移して戻れるのでは?」


 彼は不思議だとでもいうように首を傾げた。


「できますが、お断りします」


「ユーリ……」


 わたしが困ってユーリを見ると、彼はいたずらっぽく赤い瞳を輝かせた。


「ネリア、気持ちはすごくよくわかりますが、彼ほど戦力としても頼もしい人物はいませんよ」


「いいっ⁉」


 そのままユーリはおかしそうにフッと笑い、黒髪の竜騎士をちろんと眺める。


「むしろあれだけ挑発したのに、岸壁でのんびり見送るわけないでしょう、彼の性格からいって」


「…………」


 なんか王太子と護衛騎士のあいだで、バチバチと火花が散る。ちょっと待って。あんたたち港でやんちゃしただけじゃ、まだ足りないの⁉


 だれか……だれかコイツに何か言ってやってください!


 キョロキョロとまわりを見回すと、わたしと目が合ったローラが肩をすくめた。


「あたしはうまい茶が飲めればそれでいい」


「お淹れします」


「ん」


 わたしの秘書として乗りこんでいるリリエラは、海風に吹かれながら物憂げに返事をする。


「あたしも~退屈しないなら何でもいい」


「あ、あの……」


 ヌーメリアがそっと手をあげた。


「王都ではヴェリガンがとてもお世話になって……私たち魔術師をメラゴの根で襲ったり、ヘリックスで踏んだりしたのに……」


「対抗戦は全力勝負ですから、お気になさらず」


 にっこりと笑っているけれど怖いから!


 サルジアでは何があるかわからないし、エクグラシアの守りだって手薄になる。影武者を立てて、あくまで竜騎士として参加しているけれど……。


 ユーリがテルジオに合図を送る。


「ネリア、とりあえず動きやすい服に着がえましょう。あと一アウルも進めばドラゴンの領域を離れて外洋にでます。マウナカイアと違い、穏やかな海ではありません。大型の魔物がでてきます」


「うん。海を越えるのも大変なんだよね」


 わたしは大きく息を吐いた。


「ええと……レオ、同行は認めるけれど、特別扱いはしない。いい?」


「はい」


 カチリと目が合う、黒曜石の瞳はあくまで他人、護衛騎士の眼差しで。だからわたしも背を向けて、彼を意識から締めだした。ユーリが彼に声をかける。


「レオ、お前の腕前を見せてくれ」


「……承知」


 すっと頭をさげて、彼は転移して姿を消した。


「ネリス師団長とヌーメリアは、あたしたちといっしょに艦橋へ移動するよ」


「はい。ローラさん、よろしくお願いします」


「あたしはここでいい」


 リリエラはのんびりと言った。


「でも揺れるし、危ないよ」


 海に溶けてしまいそうな藍色の髪をなびかせ、リリエラは艶然とほほえんだ。


「海にきて〝海の魔女〟を心配するのは、あんたぐらいのもんだよ、ネリア」

ネリアよりまわりの方が受けいれるの早かった。

投票数29、アンケートにご協力ありがとうございました!

1.ネリア 5

2.レオポルド 16

3.オドゥ 6

4.その他 2

レオポルド強し!

この結果から、8巻はレオポルドでスタート→ネリアと書き進めました。

オドゥのシーンもがっつり加筆してあります。

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― 新着の感想 ―
[一言] ああもう本当にこのふたりの絡みようやく落ち着いた日常って感じ、染みる
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