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486.惚れ薬ドリンク④

4月発売の短編集が後書きや登場人物紹介、あらすじに著者メッセージまで諸々全部渡せたのでほっとしてます。まだ校了に向けた作業がありますけど……もうちょいですね!

 ちらりと指の間からレオポルドの姿を探すと、彼は屋台の売り子をしているミンサちゃんに話しかけるところだった。


「このドリンクは毎日売るのか?」


 レオポルドが確認すると、ミンサちゃんは元気よく答えた。


「期間限定でっす!」


 それを聞いたライアスが彼をたしなめる。


「レオポルド……毎日飲ませようとか考えるなよ?」


「買いだめ……」


 ぽつりとつぶやかれた言葉には、ミンサちゃんがキッパリと対応してくれた。


「ひとカップルにつき1杯までにさせていただきます!また来年ご利用くださいませ!」


「レオポルドは変わんない……?」


 おそるおそる聞いてみると、彼のまぶしすぎる顔がこちらを向いた。目が潰れちゃう!


「私は飲む前からきみに夢中だからな。とくに変わりはない」


「ひゃいぃ⁉️」


 サラッと言われたとんでもない言葉の直撃を受けて、わたしは自分の耳を手で押さえ、涙目になってぶんぶんとかぶりをふる。


「なぜ耳をふさぐ」


 レオポルドの眉間にグッとシワがよるけれど、動揺したわたしはそれどころじゃない。


「ダメだ、ヤバすぎる。低くよく通る声まで美声だなんて」


「耳をふさいだら口説けんではないか」


「ひゃいいいぃ!口説くって……口説くって言われたあぁ⁉」


 ガクブル震えるわたしを見かねて、ライアスが止めに入ってくれる。


「おいレオポルド、泣かすなよ」


「泣かしたいわけでは……」


「本当に今まで気づかなかったんでしょうか?」


 ユーリが不思議そうに首をかしげる横で、オドゥが眼鏡のブリッジに指をかけて苦笑する。


「いや、自白効果じゃね?ヌーメリアが何か混ぜたな」


「言質を取るのは必須ですから……」


「……ヒッ!」


 ヌーメリアが真剣な表情でヴェリガンをちらりと見ると、彼は飛びあがった。


「そういえばふたりは飲まないんですか?」


 ユーリに聞かれたヌーメリアは、ちょっと恥ずかしそうにうつむいた。


「試作段階で……何回も試飲を……」


「あ、なるほど」


 それでどうやらヴェリガンは、いつも以上にしおれているらしい。





 黄昏色の瞳でじっと婚約者を眺めていたレオポルドは、腕組みをして首をかしげた。


「できることならこのまま部屋に連れ帰って、ぐずぐずになるまで蕩したいが……本人は聞いてないようだな」


「レオポルドも心の声がダダ漏れになってるぞ」


 ライアスが注意する横で、ユーリも納得したようにうなずく。


「ネリアにくらべて変わんないけど、ちゃんと効いているんですね」


「レシピがほしい」


 レオポルドがヴェリガンの方を向くと、白髪をキリリと束ねた前魔術師団長ローラ・ラーラがビシッと一喝した。


「師団長のアンタがそれじゃ、塔の魔女たちに示しがつかないだろ。ヴェリガンはそれで入団を断ったんだから」


「ヒッ!」


 残念だがローラに怯えるヴェリガンから、レシピは聞きだせそうにない。少し肩を落としてレオポルドはため息をつく。


「また来年か……」


「来年もこれ飲むの⁉」


 ぎょっとしたわたしに、レオポルドは黄昏色の瞳をきらめかせて応じる。


「きみは師団長だろう」


「そうだ、わたしは師団長……錬金術師団の看板を掲げる屋台で売る商品の試飲ぐらいしなきゃ……でもこれヤバい!」


「だいじょうです、師団長だけに責任は押しつけませんぞ。私もアナとともに毎年飲みますからな!」


「まぁ、あなたったら!」


 何だかいい感じにほんのりと上気した、カーター副団長が力強く宣言すると、夫人のアナも花飾りを手にポッとほほを染めた。


「わ、私も……改良を重ねて、これからもヴェリガンと飲みます!」


「ヌ……ヌーメリア。こうしていっしょに仕事ができるだけでも……僕は幸せすぎて」


 拳をにぎりしめて決意するヌーメリアの横では、感動したヴェリガンがオイオイと泣きだしている。


「あうぅ……逃げ道をふさがないでええぇ」


 やる気になっているみんなに押されて、わたしは涙目になった。


 みんなが飲むならわたしも、責任持って飲まなきゃじゃん。どうしよう……自分が何を口走ることになるのか、予想もつかなくて恐ろしいんだけど⁉


「だいじょうぶか?」


 レオポルドが気づかわしげに腕を伸ばし、そっとわたしの顔にさわる。それだけでわたしはピョンと飛びあがった。


「ひゃあああ!指が、指がほほにふれたあぁ⁉」


「…………」


 ほっぺたを両手でさすさすしていると、彼は何を思ったかいきなり、わたしの耳をつまんだ。


「きゃあああああぁっ⁉」


 それだけでもう、わたしは絶叫した。


「何、何なの?」


 衝撃にうずくまっていると、彼の低い声がぽつりと降ってくる。


「すごく、おもしろい」


「おもしろがるなあぁっ!」


 真っ赤になって抗議しても、彼は黄昏色の瞳をキラキラさせてしゃがみ、わたしの顔をのぞきこんでくる。


「見ないでよおぉっ!」


「見たい」


「だから見ないでって言ってるのに!」


「見せろ」


 わたしとレオポルドが謎の攻防戦を繰り広げていると、あきれたような声がする。


「よくわからないイチャイチャだなぁ」


「レオポルドは楽しそうだぞ」


「まぁ、これだけ楽しそうな魔術師団長ってあんま見ないですよねぇ」


 楽しそう?楽しそうなの?これで?


「どうしよう、わたしレオポルドとお話するだけで、ドキドキするんだけど!」


「そのままでいいから、もう帰るか」


「ひうっ⁉」


 黒いローブの魔術師団長に、わたしが連れ去られそうになったところで、オドゥの茶々が入る。


「うわ、師団長たちが現場ほっといて帰っていいのかよ」


「いいなぁ、飲ませる相手がいたら楽しそうなのに」


 ユーリがちょっと残念そうにつぶやくと、緑の魔女フラウは体を揺らして楽しそうにケタケタ笑った。


「ヒーッヒッヒ。錬金術師団の惚れ薬ドリンクはカップル限定だよ」






 そして日に日に春めいてくるこの季節。


『市場で僕(私)と、錬金術師団のドリンクを飲みませんか?』


 そんなフレーズが告白がわりに、王都で流行ることになるのだけど……それはまた別のお話。

何だかわやくちゃになりまして。

作者渾身の『とろける甘口』は、これから書きます。.....〆(・_・;)

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