表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師の杖【11/1連載開始】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@11月1日コミカライズ開始!
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

484/560

484.惚れ薬ドリンク②

Amazonで電子書籍がセール中!

お得なこの機会にぜひ!

『魔術師の杖短編集①』は4月26日(金)発売です。

 屋台の売り子をしているミンサちゃんが、残念そうにほっぺたをふくらませた。


「えぇー、『惚れ薬ドリンク』ってネーミング、受けそうなのに。ボッチャジュースだって評判よかったんです、ぜひ商品化しましょうよ!」


「うん、あれ……スゴクよかった……」


 ヴェリガンはポッと顔を赤らめて、もじもじとヌーメリアを見る。


 ヌーメリアはといえば「えっ」と顔をあげて、ヴェリガンと目が合うと真っ赤になってうつむいてしまう。


 でもうれしそうにアミュレットとしてもらったバレッタに指でふれ、そしてふたたびヴェリガンとそっと視線を交わしてほほえみあって……。


 なんだか暑くなってきた!


「錬金術師団に春がきた感じ……」


「何をぽやっと感心してるんだい、自分もじゃないか」


 リリエラにつつかれて、わたしは我にかえった。


 そうでした!


 それで手作りについて相談しようと思ったんだ……ぜんぜん関係ない方向に話が転がったけど。


「えっと、じゃあ効き目はほどほどに見映え重視で、カップルで飲めそうなドリンクを考える?」


「ぜひ、お願いします。コールドプレスジュースの売れ行きも、寒い冬場は落ちて困ってたんです!」


 ミンサちゃんが前のめりにうなずく。考えてみれば屋台の売り上げで、ヴェリガンの研究費用もまかなっている。


 冬から春に向けて目玉商品がほしいという、ミンサちゃんの気持ちもわかるし、それにやっぱり期間限定という、うたい文句に人間は弱い。わたしは決断した。


「うん……じゃあ、売り物になるかはともかく、試作だけはしてみようか」


 〝緑の魔女〟フラウが満足そうにケタケタと笑って、シワだらけの顔をほころばせた。


「いいね。滋養強壮たっぷりで、体がポカポカしてくるのを頼むよ。ヴェリガンが作るなら当然、試飲はヌーメリアちゃんとしなくちゃね。ヒーッヒッヒ」


「「えっ⁉」」


 ヴェリガンだけでなくヌーメリア、ふたりとも目を丸くして彼女をふり向いた。あぁ、そっか……もしかしなくてもフラウは、それが目的だったのかぁ。


「一方的に薬で相手の心をひきよせようなんざ、クズのしわざだけどね。カップルがふたりで飲むぶんには、ますます……ぐふふふ」


「えっ、あの……えっ?」


 動揺するヌーメリアに、わたしはしかたなくお願いをした。


「お願いできるかな、ヌーメリア。くれぐれも効果は()()()()でいいから、屋台で売っても問題ないものにしてほしいの」


 ヴェリガンのコールドプレスジュースは、コアなファンも獲得していて評判がいい。ここで変な悪評が立っても困る。そもそも街で売っている薬は、だれが飲んでも問題ないものように作ってあることが多いんだから。


 ヌーメリアならきっとわたしの意を汲みとってくれるだろう。そう思ってニッコリしてみせたら、彼女はキリリと顔をひきしめてうなずいた。


「か……かしこまりました。師団長命令とあればヴェリガンと協力して作らせていただきます。錬金術師団の評判を落とすようなことはいたしません」


 ……うん?


「あの、効果は()()()()でいいからね?」


 念を押したわたしの声が耳に入らなかったのか、彼女はそのままひとりでブツブツと、思考をめぐらせ始めた。


「そうですね……遅効性で精神を絡めとり、判断力を鈍くさせる素材を用います。ほどほどの効き目で気がつけば、深い落とし穴にはまっているような……」


 待てーい!


 そういえば彼女は毒の魔女だった。ヌーメリアとヴェリガンが本気でタッグを組んだら、ものすごい惚れ薬を作ってしまうんじゃないだろうか。わたしはあわててつけ加えた。


「あのさ、市場で売るんだから例えばアレクとか、子どもが口にしても問題ないものにしてね」


 それを聞いた〝白の魔女〟ローラは、感心したようにため息を漏らす。


「さすがは錬金術師団長だね。惚れ薬ドリンクを老若男女問わず飲ませようって腹かい」


 そうじゃないです!危険を回避しているつもりなんです!


 ユーリが自分のあごに手をやって、思いついたように言葉を発する。


「あ、じゃあカディアンたちにも飲ませましょうか。アレクに試飲させるのもかわいそうだし」


「えっ、俺?」


「私たちが惚れ薬を飲むの?」


 カディアンは急に赤くなってもじもじし始め、メレッタはふしぎそうにコテリと首をかしげた。


 ユーリ……きみの弟はかわいそうじゃないんかい。ところがその言葉に、カーター副団長が過敏に反応した。


「ちょっと待て。カディアンが飲むのはかまわんが、メレッタまで飲むのは許さんぞ!十年早いわ!」


 赤い瞳をきらめかせて、ユーリは副団長に切りかえす。


「では十年後ならいいんですか?」


「ぐっ……よくはない!」


 一瞬言葉をつまらせた副団長は、ギッとすごい形相でユーリをにらみ返した。


「いいか、メレッタに飲ませるぐらいなら私が飲む!」


 カディアンがギョッとした顔をした。


「えっ、俺とクオードさんが惚れ薬を飲むのか?」


 カーター副団長はカッコよくカディアンに、ビシッと指を突きつけて宣言した。


「何をいっとるか、私とアナに決まっておろう。いいか、私が生きているうちは未来永劫、メレッタに惚れ薬など飲まさんぞ!」


「うわ、十年後から未来永劫に伸びちゃったよ……」


 オドゥが首の後ろに手をあててあきれたようにいうと、ユーリも赤い髪をかきあげてあいづちを打つ。


「いわせときましょう、男親の心理ですかねぇ。ホント認めたくないんだな」


 カーター副団長、すごい決意だ。でもそういいながら毎年アナと仲良く惚れ薬を飲むのかしら……。


 金の瞳を輝かせたローラは、楽しそうにくつくつと笑いながら、急に矛先をわたしに向けた。


「当然、ネリス師団長もレオポルドとそれを飲むんだろうね」


「飲みますとも!安全な惚れ薬ドリンクかどうか、わたしが身をもって証明します!」


 変なものは売らせない。断固とした決意でそういうと、金の瞳は妖しいきらめきを放つ。


「安全な、ねぇ。師団長の要求は厳しいようだよ、ヌーメリアもがんばりな」


「は、はい。もちろんです!」


 ちょっと待って。ヌーメリアもここで本気出さないで!


 本当に()()()()でお願い!


 そしてわたしの手作りに関する相談に、乗ってくれる人はどこにもいないんだろうか……。


 なんていうかこう……材料をそろえて計量して、ウキウキワクワクでチョコレートを湯煎で溶かすようなのを想像していたんだけど⁉

まだレオポルドが出てきませんが、アンケートです。

484話の感想欄か活動報告に回答をお願いします。(2/23〆切)

X等SNSでも実施します。

『惚れ薬ドリンク』、当然レオポルドも飲むことになりますが……その効果は?


1.ほどほど

2.辛口スパイシー

3.とろける甘口

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者にマシュマロを送る
☆☆11/1コミカライズ開始!☆☆
『魔術師の杖 THE COMIC』

『魔術師の杖 THE COMIC』

小説版公式サイト
小説版『魔術師の杖』
☆☆NovelJam2025参加作品『7日目の希望』約8千字の短編☆☆
『七日目の希望』
☆☆電子書籍販売サイト(一部)☆☆
シーモア
Amazon
auブックパス
BookLive
BookWalker
ドコモdブック
DMMブックス
ebook
honto
紀伊國屋kinoppy
ソニーReaderStore
楽天
☆☆紙書籍販売サイト(全国の書店からも注文できます)☆☆
e-hon
紀伊國屋書店
書泉オンライン
Amazon

↓なろうで読める『魔術師の杖』シリーズ↓
魔術師の杖シリーズ
☆☆粉雪チャンネル(Youtube)☆☆
粉雪チャンネル
― 新着の感想 ―
[一言] 甘々の2人は結構お気に入りなので個人的には③!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ