483.惚れ薬ドリンク①【2024バレンタインSS】
2024年バレンタインSSです。
2023年に旧Twitterに掲載したバレンタインSSは、加筆して短編集に掲載しました。
SSなので時系列や登場人物については気にしないでください。
昨年のリベンジをするべく、今年は早めに準備することにした。今回は女性陣にも協力を仰ぎたい。わたしも真剣なのだ。気合入りまくりだってことはわかってほしい。
「てっ、手作りとかどうかな?」
言ったとたんにわたしは自分の言葉に赤くなって、みんなの視線が生温かくなる。ローラが金の目をまたたいた。
「媚薬でも仕込むのかい?」
「仕込みません!」
即答したわたしに、ローラはため息をついて残念そうに首をふる。
「やらないのか……面白そうなのに」
「何を残念がっているんですか」
緑の魔女フラウがいった。
「ヴェリガンも屋台で惚れ薬ドリンクを売ったらどうだい」
「へっ?でもばあちゃんが『あんな物使うヤツは男のクズだ』って」
「お前が使ったらクズだけど、ヌーメリアちゃんとアレクにはいい暮らしさせたいだろ」
「そ、そっか……」
「市場の屋台で怪しげなモノ売らないでください!」
いちおう錬金術師団の看板を掲げている店だから、変なイメージがついても困る。ここは師団長のわたしがビシッとしないと!
「カップルがふたりで飲むぶんには問題ないだろ。大きめのグラスに惚れ薬と口当たりのいいジュースを注いで、花でも飾れば……」
「あ、かわいいですね。それならウケそうです」
春めいてきたし、スウィートカラーのトロピカルドリンクなんて、いかにもカップル向きで映えそうだ。ちょっと想像していると、ヴェリガンが悲しげな顔でうめいた。
「ぼ、僕がそんな『リア充爆発しろ』的な……ドリンクを作るなんて」
ヴェリガン、きみはもうリア充だよ!元気だして!
屋台の売り子をしているミンサちゃんが、両の拳をにぎって彼を励ました。
「心の修行です、ヴェリガンさん。笑顔で幸せそうなカップルに売りきれるかがだいじなんです。決して心の中で呪詛を吐いてはいけません!」
「ていうかヴェリガンは、リア充真っ最中なんじゃないの?」
「まだ、じ……実感がとぼしくて……朝起きたらゆ、夢なんじゃないかって……そ、それにこれから離れ離れ……だし。ウウッ」
急にオイオイ泣き始めたヴェリガンに、フラウはあきれてため息をついた。
「そのためにしっかり働くんだよ。バリバリ稼いでヌーメリアちゃんを幸せにすれば、自信もついてくる」
「う、うん。が……がんばる」
「だからって惚れ薬ドリンクはダメだからね」
「ダメかねぇ?」
「ダメです」
きっぱりとダメ出しをしたとたん、緑の魔女フラウは胸を押さえた。
「うっ!」
「ばあちゃん⁉️」
「こ、この婆が生きているうちに……ハァハァ、孫たちの幸せな姿を……うぅっ!」
「ば、ばあちゃん……僕、がんばるから!」
「ヴェリガンも!ほいほい惚れ薬作っちゃダメ!」
そのとたん魔女の曲がった腰が伸び、シャキッと背筋を伸ばしたフラウがわたしを見て毒づいた。
「チッ、泣き落としも効かないとは……強情な師団長だね」
「何といわれても惚れ薬ドリンクは売らせません!」












