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魔術師の杖【11/1連載開始】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@11月1日コミカライズ開始!
過去編 レイメリアと魔術師の杖

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406/560

406.仕事開始

『魔術師の杖』は連載中の作品なので、連載を追いつつも書籍を楽しみに待っていただけるよう、さまざまな工夫をしています。

読者さんとは双方向でやりとりし、ご意見を内容や書籍に反映させています。

アンケートなどへのご協力、ありがとうございますm(_)m

 訓練場の防御壁できた傷の修復には、たっぷり数日かかった。


 わたしひとりでは終わらなくて、休暇明けのカーター副団長にも手伝ってもらう。


 カーター副団長のそばではカディアンが、これまた見よう見まねでせっせと術式を紡いでいる。


 ふたりとも土属性があるから、えぐれた地面をきれいに元どおりにしてくれた。


「うわぁ、ありがとう。カーター副団長もカディアンも……助かるよ!」


 心の底から感謝していると、カーター副団長が鼻を鳴らしてぶつくさという。


「ふん、まったく派手に壊しおって……ドラゴンなみに暴れたヤツはどこのどいつだ!」


「すまない、私と魔術師団長だ」


 正直に名乗りでたライアスを、カーター副団長はギロリとにらむ。


「ゴールディホーン竜騎士団長とアルバーン魔術師団長か……ふん、秋の対抗戦をみておれ。錬金術師団がふたたびお前らを地に沈めてくれるわ!」


「……っ!もちろんだ、では秋の対抗戦には参加してくれるのだな!」


「ちょっと待って、カーター副団長!」


 パアッと顔を明るくしたライアスをみて、わたしはあわててカーター副団長をとめようとした。


 けれど副団長はギンッとわたしのこともにらみつける。


「ネリス師団長、まさか竜玉ひとつで満足するつもりではありますまい。竜騎士団の倉庫をあらためたところ、まだまだ素材はありましたぞ!」


「はいぃ⁉」


 副団長はずいっとわたしに迫った。


「せっかく手にいれた竜玉もオドゥに渡して終わりでは、錬金術師団としては対抗戦に勝利したかいがありません!」


「で、でも今年は参加しないつもりで……」


 昨年はビギナーズラックというか、錬金術師団が初参加だったから勝てたようなもので、人数だって戦力だって足りてない。


 またやるとしたらこんどはオドゥも警戒されるだろうし、昨年のようにはいかないだろう。


 むしろきっちり対策を練ってきた竜騎士団と魔術師団双方から、集中砲火を食らう可能性がある。


「ネリア、遠慮することはないぞ。竜玉だけでなくほかの素材も今年はつけよう」


 あわてて声をあげたライアスの背後で、竜騎士たちがウンウンとうなずく。


「あのね、遠慮とかではなく」


 いいかけたわたしの横で、カーター副団長が声を張りあげた。訓練場全体に彼の声がひびく。


「当然だろう!倉庫を丸ごと差し押さえさせてもらう!」


 その瞬間、ライアスがホッとした顔をした。


「では今年も錬金術師団は参加で決まりだな!」


「あ、いや……」


 口をパクパクさせるわたしにむかって、竜騎士たちが全員声をそろえて敬礼をした。


「「「「ネリス師団長、よろしくお願いしますっ!」」」」


 ……なんでそんなにみんな嬉しそうなの⁉


「わははは、みておれ!お前ら全員そのピッカピカの甲冑ごと、沼に沈めてくれるわ!」


 カーター副団長は高笑いをするけれど、北の平原に沼なんてないよ!


 わたしはカーター副団長を連れてきたことをちょっと後悔した。





 師団長会議はもうすぐなのに、オドゥとユーリはまだ戻らない。


 ギックリ腰になった緑の魔女につきそっているヌーメリアたちも帰ってこない。


 訓練場の修理を終えて研究棟に戻れば、カーター副団長とついてきたカディアンと三人だけの昼食になった。


「ひさしぶりに、研究棟のカレーが食べたいなと思って」


 そういって席についたカディアンに、わたしは謝った。


「きょうはちがうんだ、ごめんね」


 師団長室の大きなテーブルにならぶのはスープとサラダ、それにデーダスでも好評だったトテポグラタンだ。


「いえ、このトテポグラタンもうまいです。錬金術師団の昼食も楽しみなんです」


「ふん、お前は色気より食い気ぐらいでちょうどいいわ」


 食べ盛りだからカディアンのひと口はすごく大きい。


 彼はメレッタのこととか関係なく錬金術師になりたいみたいで、カーター副団長にしかられながらも真面目にとりくんでいる。


 卒業までまだもうすこしあるけれど、卒業前からこうやって研究棟に通ってくれるのは本当にありがたかった。


 なにせ人数が少ないからね!


 入団するまえから即戦力……ってどんだけ人手不足なのよ。


 それなのにわたしは、ユーリについてサルジアに行こうとしている。


 カディアンには半年……いや、三ヵ月ぐらいで錬金術をバンバンやってもらうことになる。


 ちょっと内心カディアンに申し訳なくなりながら、わたしは彼にデザートをすすめた。


 簡単なカップケーキだけど、色鮮やかなバタークリームを盛って、フルーツを飾りつけている。お皿のうえが花畑のようにカラフルだ。


「うわ、宝石みたいだ。食べるのがもったいないぐらいの、かわいいお菓子ですね!」


 カディアンが目を輝かせる。うわー、カディアンてばお兄ちゃんより素直ないい子だよ。





「あのね、ふたりにいっておくことがあるんだけど……わたし、ユーリについてサルジアに行こうと思うんだ。カーター副団長にはわたしが留守のあいだ、研究棟の采配を頼みたいの」


 カーター副団長が食事をやめ、無言でごくりとつばを飲んだ。


「わ……私にまかせていただけると、そういうことですかな?」


「うん、お願いできるかな?」


「…………」


 たぶんグレンがいたときもやっていたことなのに、カーター副団長は即答しなかった。


「錬金術師団の業務はわたしがいなくても問題ないと思うんだ、カーター副団長の負担は増えちゃうけど……」


「そう、ですな……問題ありません、問題ありませんとも!」


 力強くいいきったカーター副団長に、わたしはにっこりと笑顔をみせる。


「よかった、お願いするね!あ、でもその前に師団長会議でサルジア行きを認めてもらわないといけないけど」


 竜騎士団長のライアスはエクグラシアに残る。レオポルドは自分がサルジアに行くつもりで、わたしが行くことには反対している。


 だから師団長会議で話しあう内容が、どうなるかはわからない。


 けれど王太子がサルジアに行くのは決定だろうし、師団長がかならずひとりはつきそうことになる。


 新年の祝典で三師団長が顔を合わせた以外は、レオポルドとはとくに話もしていない。


「ネリス師団長……」


「ん?」


 何かいいたげなカーター副団長に首をかしげると、彼は頭を振ってぽつりとつぶやいた。


「かならず帰ってきてください。研究棟は人手不足ですからな」


「……うん!」





 小会議室に跳べば、そこにはレオポルドが先にきていて、アーネスト陛下と話をしていた。


 ふたりのそばに紅茶のカップが置かれていたし、お茶の減り具合からみてもそれなりに時間がたっていることがわかる。


 ずいぶんと話しこんでいたらしい。


 レオポルドは眉間にシワをよせてこめかみに指をあてているし、アーネスト陛下はそんな彼に苦笑いしていたけれど、わたしに気づいて手をあげた。


「おお、ネリス師団長きたか!」


「よろしくお願いします、わたし……遅れちゃいました?」


 アーネスト陛下は手を振って否定した。


「いいや、レオポルドとは思い出話をしていただけだ。ライアスもまだきてない。デーダス荒野はどうだった?」


「レオポルドとグレンの工房や書斎の探索をしました。資料もいくつか研究棟に持ち帰ってます……ご覧になりますか?」


「ああ、まあそれは後で……それだけか?」


 そういってアーネスト陛下はレオポルドの顔をみると、彼はますます顔をしかめた。まるで渋柿でも食べたみたい。


「それだけですよ?」


 わたしが首をかしげて答えると、ちょうどライアスもやってきた。

ネリアは「お雑煮食べたいなぁ」とか思ってます。

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