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魔術師の杖【コミカライズ】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@『魔術師の杖』コミティア155東4【F34b】
第二章 錬金術師ネリア、師団長になる

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40.ネリモラの花飾り

さあ、ライアスのターン!(違

 わたしでもわかる場所にしてと頼んだら、待ち合わせは王城前の広場になった。


 広場に着いてから「時計台の前にいるね」とエンツを送る。


 今日はいつもの動きやすい、簡素なチュニックは封印。〝ニーナ&ミーナの店〟で購入したミントグリーンのストライプのワンピースに、ストラップつきのサンダルだ。


 服もかわいいし、サンダルも軽くて履きやすい。こんな女の子っぽい格好をするだけでも、テンションが上がる。


「おかしくないかな?」


 ちょっとソワソワして落ち着かない。十七歳のときにデーダスへ飛ばされてから、グレンと暮らして三年。よく考えたらわたし、大人の男の人とこういうデートっぽいおでかけって……はじめてでは⁉︎


 ちょっと待って!


 意識したらなんかすごく恥ずかしいんですけど⁉︎


 あわあわしていたら、向こうから歓声が聞こえ、人だかりがしている。


「何かな?」


 すると「失礼、通して下さい」とか言いながら、その人だかりをかきわけて、精悍な顔立ちの美丈夫があらわれた。陽光に輝く金髪がまぶしい!


 わたしを見つけたライアスは、晴れやかな笑顔を見せて、まっすぐこちらに歩いてくる。


「きゃああ!あれライアス様よ!」


「ちょっと!こっちに歩いてくるわ!」


「えっ!どうしよう⁉︎」


 わたしのまわりでも女の子たちが大騒ぎして、パニックになりはじめた。


 そんな彼女たちには目もくれず、ライアスはずんずん歩いてわたしの前に立つ。


「すまない、待たせたか?人ごみを抜けるのに時間がかかった」


 大きな手がわたしへと手を差しだされた瞬間、まわりの女の子たちから悲鳴が上がる。


 失敗した!もっと目立たない場所にすればよかった!


 よりによって、待ち合わせスポットの時計台前なんて!わたしのバカ!


「ネリア?」


「えっ!ああ、あの、外では『ネリィ』でお願いします」


「了解した……ネリィ」


 ライアスがとろけるような笑みを浮かべるだけで「キャー!」と悲鳴があがり、その手を取ると「イヤアァー!」とさらに甲高い悲鳴がする。どうすりゃいいのよ!


「おどろいた……ライアス、すごい人気だね」


「休日で人出も多いからな……なるべくすいているルートを行くつもりだ」


 私服を着た彼は、いつもの髪をきちっと整えた騎士服姿と違い、髪を崩している。ラフな生成りのシャツに茶のスラックス、腕には麻のジャケット。


 うわぁ……めっちゃ格好良い!


(落ち着け、わたし!これは王都見物!おのぼりさんへの観光案内なんだから!)


 さっきまであちこちから話しかけられて、ライアスは歩くのもままならなそうだったのに。


 彼がわたしのエスコートをはじめたとたん、さーっと人垣が割れるように道ができる。


 話しかけられることはないけれど、かわりに視線が……視線が……もすごく痛い!突き刺さる!


 うわぁあああ!メロディが言っていたのはこれかぁ!ライアス・ゴールディホーンの隣がこんなわたしでごめんなさい!ただの同僚なんですよぉ!


「ネリィはすごいな!とたんに歩きやすくなった」


 そうした視線は気にならないようで、ライアスは広場をまっすぐに進んでいく。見られることに慣れているのだろう。わたしはぜんぜん慣れてないけど!


 しかも歩調はゆっくりとわたしのペースに合わせてくれる。


 ゆっくりと……合わせてくれて……広場引き回しの刑のようです……おおぅ……早くこの場を抜けだしたい。


「あ」


 何かを思いだしたのか、ライアスは立ち止まって、困ったようにこちらを見下ろした。


「俺は今日のあなたが素晴らしく美しくて、いつものかわいらしさにくわえ、さらに魅力的だといったかな?無作法な男で申し訳ない……」


 ここでまさかのホメ殺し⁉︎わたし、今間違いなく赤くなってるよ!顔あついもん!


「いえっ、わたしもライアスに、『すごくステキでかっこいい!』ってまだ言ってないし……」


「ありがとう。ネリィにそういってもらえるなんて、とても光栄だ!」


 夏の青空のような澄んだ青い目を細め、くしゃっと照れたように笑うライアスは……うわぁ、太陽みたい。うれしいけど、緊張してしまう。数年ぶりにワンピースを着たせいか、ライアスがかっこいいせいか……全部だきっと。


 けれど見上げるライアスは、本当に楽しそうに笑っている。その笑顔を見ていたら、わたしもだんだん緊張がほぐれてきた。


 そうだね、楽しまなきゃ。


「一番街は官公庁が多いから殺風景なんだ。二番街は金融街だから同じく……ゴブリン金庫は見応えがあるが」


「ゴブリン金庫!へぇぇ……」


「ネリィなら興味を持ちそうだな。三番街から六番街までは商業区域になっていて……」


「ちょいとお兄さん!」


 とつぜん呼びかけられて振り向くと、花車を押したおばあさんがニコニコと笑っていた。


「彼女、まだネリモラの花を身に着けてないじゃないか!おひとつどうだい?」


 花売りのおばあさんは、小さな花飾りを差しだしてきた。白くて小ぶりな、甘い爽やかな香りの花を束ねたものだ。


「そうだな、ひとつ……いや、ふたつもらおう」


「!……おやおや、ふたつとはごちそう様!さぁどうぞ!お兄さんの手で飾っておあげ!」


「ネリィ、つけてもいいか?」


「えっ?はい」


 ライアスは慎重な手つきで花飾りを、ひとつは髪に、もうひとつは胸元につけてくれた。まわりの女の子たちから悲鳴があがる。


 かわいい花飾りからは、ふわりと優しい香りがした。


「ネリィの髪に、この白い花は映えると思ったんだ」


 うん、いちいち格好いいよね。にっこりしたライアスの横から、おばあさんが手鏡を差しだして見せてくれた。


「おお、かわいい!」


 メロディたちが「アクセサリーはつけていかないほうがいい」とアドバイスしてくれたのは、このためか。花で身を飾る習慣があるんだね。


「ありがとう!ライアス!」


 わたしたちが立ち去ると、花車はあっというまに押し寄せた人で埋もれた。


「いまの!いまの花をわたしにも!」


「わたしも!」


 ネリモラの花飾りを着けた人で、広場はいっぱいになりそうだ。わたしはライアスと顔を見合わせて笑った。


 はじめてのシャングリラ、背筋を伸ばして堂々と歩こう。


 さぁ、どこに行こうか。

傍から見たら「どう見てもそれ、デートだろう!」…と思うような『王都見物』をお送りしております…。

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― 新着の感想 ―
???「へぇ、デートかよ。格好良くしようぜ、もっと腕にシルバー巻くとかさ!」 いかんいかん、あまりの鈍感コンビっぷりにカードゲームアニメの台詞が頭を謎に過った…。 高校生からこっち、リハビリに勤しん…
[気になる点] (これ花の品種になんか意味のあるやつじゃ…?)
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