表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師の杖【コミカライズ】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@『魔術師の杖』11月1日コミカライズ開始!
第二章 錬金術師ネリア、師団長になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/565

39.ニーナ&ミーナの店

ブクマ&評価ありがとうございます。

女の子たちが出てくるシーン、コミカライズも楽しみですね(^^)

 すぐにでもメロディは店を閉めてでかけようとしたけれど、わたしは商売の邪魔はしたくないと断り、閉店までゆっくり魔道具を眺めて過ごす。


 それからメロディといっしょに、五番街にあるという〝ニーナ&ミーナの店〟へ向かった。


 実用品がそろう三番街とは違い、五番街はいわば王都のファッションストリートだ。服のほかに帽子や靴、鞄などの小物も扱う店もあり、歩いている人たちの服装も華やかだ。


 五番街の通りに面した店舗の横に小さな看板をだし、人ひとり通れるほどの細い階段をあがると、二階に〝ニーナ&ミーナの店〟がある。


 小さな看板は目立たないし、ひとりで来ても見つけられなかった。連れてきてくれたメロディに感謝だ。


「絶対ネリィも気にいるわよ!こんばんはぁ、突然で悪いわね。ニーナ、ミーナ!」


 奥から顔立ちのよく似た、黄緑の髪をした女性がふたりでてきた。


「「いらっしゃい!」」


 わたしたちを迎え入れたふたりは、さっと店のドアに『閉店』の札をかけ、「今日はもう貸し切りよ」とほほえむ。


「メロディから〝エンツ〟なんて興奮しちゃったわ!」


「この子がお相手ね、あらかわいい」


「ネリィよ。魔力持ちだから、ここの服も着こなせると思って連れてきたの」


 背の高いほうがニーナで、低いほうがミーナ。ふたりは双子の姉妹でお店をやっているらしい。


  ニーナはまとめ髪で、左耳の脇にひと筋髪を垂らし、ミーナは頭のてっぺんでお団子にしていた。


 主にニーナが服を作り、ミーナが靴やバッグ、帽子などの小物を作っているそうだ。


 わたしはあわてて説明した。


「あの、デートといっても王都を案内してもらうだけで、その……エルリカ郊外の辺境にある、デーダス荒野からでてきたばかりで、新しい服がほしいんです」


 ホントは下着から何から新調したいけど、とりあえずは王都を着て歩ける服がほしい。あとでちょっと相談してみよう。


 双子の姉妹はわたしを囲んで、じーっと上から下まで食い入るように見つめ、目をキラキラさせていっしょに話しだした。


「純朴ね……素敵!」


「なんて華奢なの!」


「しかも可憐だわ!」


「おうちに持って帰りたい!」


 メロディが叫ぶ。


「ちょっと!ネリィはあたしが見つけたんですからね!」


 背の高いニーナが、左耳の脇に垂らした髪を指でいじる。


「わかってるわよぅ。でもこういう子を選ぶって、ライアス・ゴールディホーンの好感度が上がったわ」


「やるわね……ライアス・ゴールディホーン」


「時間があればイチから仕立てたいけど……小柄だから、華奢さを引き立てる装いがいいわね」


 話しながらニーナは何点か、すばやく見繕ってくれる。


「ミントグリーンのストライプにレースの飾りをつけた可愛いワンピ、それにサンセットオレンジのお洒落なツーピースも合いそうね」


 わたしの髪や瞳の色に合わせて選んでくれたらしい。


 そのうちのひとつ、ミントグリーンのストライプワンピの試着をさせてもらった。ふわりと翻るスカートが風にそよいで涼し気だし、襟のレースも上品でとても可愛い。


 共布のベルトがついていて、すそには細かい術式の刺繍がしてあり、風が吹くとさわやかな香りがする。でもちょっと恥ずかしい。わたしが黙っているものだから、ニーナが心配そうに眉を下げた。


「どうかしら?気に入らない?」


「いえ……スカートをはくのが数年ぶりで……」


 なんだか脚のまわりが、スース―して頼りない。これも慣れなんだろうけど。照れてからニーナとミーナを見ると、ふたりとも手を取り合ってぷるぷる身を震わせている。


「か、かわいい……」


「なんなの、このかわいさ!おうちに持って帰りたい‼︎」


 メロディが叫ぶ。


「ダメよ、ふたりとも!ネリィを見つけたのはあたしなんですからね!」


 ミーナは靴をだしてきた。


「小柄だからヒールを履くといいわ。足首がストラップになったステキなサンダルがあるの!ちょっとお高めだけど靴ずれしない術式つきで、どれだけ歩いても平気よ!」


 すぐに履かせてもらい、鏡の前でターンをした。すっと背筋も伸びて、いつものショートブーツとぜんぜん違う。


「ホントだ!羽のように軽いです!」


 メロディを見れば、彼女は得意そうに笑っている。


「ここの服は術式が使ってあって、それ自体が魔道具なの!そのぶん着る人を選ぶんだけどねー」


「すごい!あれこれ試したくなっちゃいます!」


 ほかの服もよく見ると、汚れ防止や交通安全といった術式の刺繍が、細かい文様のようになっていて、きれいな色糸を使った装飾になっている。うわぁ、おもしろい!


 ニーナが胸を張った。


「そうよぉ、『胸がどう見ても大きく見える服』とか、『足がどう見ても長く見える服』なんてのもあるけれど、ライアス相手なら素材そのままで勝負したいわね!」


「小細工なしね!ステキ!最高だわ!」


 ふたりは興奮してきたのか盛り上がり、ミーナが思いがけないことを口にした。


「でもネリィみたいな子でよかったわぁ……ほらライアス・ゴールディホーンといえば、ライザ・デゲリゴラル嬢と婚約間近だっていうウワサじゃない?」


「えっ⁉︎」


「ミーナ!よけいなこといわないの!」


「そうよ、どうせそれライザ側の流した情報でしょ?竜騎士団長を囲いこもうと必死なのよ」


「ネリィは気にしなくていいからね!」


「はぁ、まぁ……」


 気にするもなにも、わたしもライアスとおつき合いしてるわけじゃないからなぁ。んん……でも、ちょっとだけもやっとする?


 ほかにも〝着るとシャッキリするブラウス〟とか、〝雨除けつき傘いらずのワンピース〟とか〝着ると眠くなるパジャマ〟なんかがあって。


 魔道具になっている服がおもしろくて、ふだん着も買ったら、かなりの量になってしまった。


「どうするネリィ?送ってもらう?」


「あ、だいじょうぶです。鞄に入りますから」


 わたしはデーダスを旅立つときに持ってきた、小さな布製の肩掛け鞄の口を開ける。帆布のような生地を縫い合わせて、自分で作ったシンプルなものだ。


 わたしが買った服を鞄に詰めだすと、三人の目がいきなりキラリと光る。


「ねぇ、それ魔道具よね?」


「ネリィの手作り?」


「……すてき……」


「えっ?はいそうです。空間魔法の応用で収納力をアップして……」


 ミーナさんがずいっと身を乗りだしてくる。


「ネリィ!その術式、教えてもらえないかしら!」


「うちで作る鞄に組みこみたいわ!」


「えっ、ええっ⁉︎でも空間拡張に魔力をけっこう使いますよ?」


「収納力はそんなになくてもいいの。そうね……大きなトランクひとつぶん、七泊八日用の荷物が入るぐらい」


「三泊四日用とかでもいいわ!」


「ああ、それなら使う魔力も少ないですね。いくつか術式を書き換えないとですけど」


 我慢できなくなったメロディが口を挟む。


「その鞄、できあがったらうちの魔道具店でも扱わせてもらうわ!絶対よ!」


「じゃあメロディのお店と、ウチの独占販売ってことで!」


「契約書!契約書作りましょ!みんなで魔道具ギルドに行きましょ!」


 きゃいきゃいと騒ぐ三人の勢いに押されて、わたしはついうなずいてしまう。


 数日中に術式を書き直す約束と、ついでにわたしも新しい鞄ができたら、ちゃっかりもらう約束をした。


 だってかわいくておシャレな収納鞄って……あったら最高じゃない?

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者にマシュマロを送る
☆☆MAGUKANの他、ニコニコ漫画、アプリ『コミマガ』でも配信開始!☆☆
『魔術師の杖 THE COMIC』

『魔術師の杖 THE COMIC』

小説版公式サイト
小説版『魔術師の杖』
☆☆NovelJam2025参加作品『7日目の希望』約8千字の短編☆☆
『七日目の希望』
☆☆電子書籍販売サイト(一部)☆☆
シーモア
Amazon
auブックパス
BookLive
BookWalker
ドコモdブック
DMMブックス
ebook
honto
紀伊國屋kinoppy
ソニーReaderStore
楽天
☆☆紙書籍販売サイト(全国の書店からも注文できます)☆☆
e-hon
紀伊國屋書店
書泉オンライン
Amazon

↓なろうで読める『魔術師の杖』シリーズ↓
魔術師の杖シリーズ
☆☆粉雪チャンネル(Youtube)☆☆
粉雪チャンネル
― 新着の感想 ―
デゲリゴラル…。なんて屈強な印象の家名だ…。これはゴリゴリの悪役令嬢の予感。 しかし、相当革命的な空間拡張術式だろうにさらりと教えてしまいましたね。 錬金術師団を独立採算制に持っていく切り札になり得…
[良い点] とても読みやすいです。 導かれるように読んでしまいます。 どれだけの思いとご工夫があるのやら。 素敵な読書体験をありがとうございます。 (登場人物同様、作者様のお人柄もしのばれます!)…
[良い点] わーい教えてーいいよー終わり、じゃなくて、契約書作ろう今度ギルド行こう、とちゃんとなるところが、しっかりしたちゃんとした人たちだなーと安心しました。 あとその鞄、私も欲しいですほんと。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ