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魔術師の杖【小説9巻&短編集】【コミカライズ準備中】  作者: 粉雪
第七章 ネリアとお城の舞踏会
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251.季節外れの雪を降らせましょう(ネリア→オーランド視点)

よろしくお願いします!

「では王都を歩くときは仮面はつけず〝ネリィ〟として過ごし、それでライアスともよく一緒にいたということか」


 オーランドも席につき、目の前には金の髪もまぶしい美丈夫が二人ならんだ。


 なんともぜいたくな光景に道行くひとたちの視線が二倍増しになり、もぅわたしを通り越えてゴールディホーン兄弟に集中している。


(うん……〝モブ中のモブ〟ってきっとこんな感じだわ。テルベリーの味もわかるようになった!)


 ほっとしたわたしはようやくのんびりとお茶を楽しめていた。


 オーランドは銀縁眼鏡のつるをくいっと持ちあげ、キラリと光るレンズ越しにライアスとわたしを交互にみる。


「もしかして……二人は交際しているのか?」


 タルトをのどに詰まらせたわたしの横で、ライアスが真っ赤になってオーランドをさえぎった。


「兄さんっ、ちょっと待ってくれ!」


 オーランドはそんなライアスの様子をみて、「ふむ」と眉間にシワを寄せた。


「ではネリス師団長……ユーティリス殿下とリメラ王妃が王城の服飾部門に命じ、あなたのドレスを製作させているのはご存知か?」


「ドレス?」


「錬金術師団のローブをつくった際に採寸をされたであろう」


「あ、そういえば竜王神事のときに服飾部門で採寸したね……けどドレスのことは聞いてないよ」


 わたしが首をかしげる横で、ライアスが驚いた顔をする。


「王城の服飾部門がかかわるなど王族なみの扱いではないか……師団長の礼装ということか?」


 オーランドが銀縁眼鏡のつるをくいっと持ちあげて、青い瞳をこちらにむけてきた。


「さて……夜会で王太子殿下といっしょにネリス師団長もデビューされるのかと思っていたが」


「うそ、初耳……!」


 わたしがびっくりして手を口にあてると、ライアスがハッとして身をのりだした。


「まさか〝赤〟をまとわせるつもりでは……国中の令嬢たちがあつまるお妃選びも同然の場だぞ!」


「ドレスの色までは知らん。ライアス、お前には職務もある……ここはユーティリス殿下におゆずりしたらどうだ」


 オーランドの答えにライアスは勢いよく首を横にふった。


「そうはいかん、ユーティリス殿下にゆずる気はない。ドレスを贈るのは断られたが夜会で俺は彼女にダンスを申しこむつもりだ。ネリィ、まとうならどうか〝青〟を!」


「ライアス!おまえ本気か……⁉」





「ちょっと待ってよ……赤とか青とかって……わたしのドレスの色をなんでライアスやユーリが決めるの?」


 兄弟のやりとりを不思議そうに聞いていたネリアの質問に、ライアスとオーランドは雷に打たれたようにかたまった。


((……そこからかあっ!))


 しばらくして気を取りなおしたオーランドが、銀縁眼鏡のつるをくいっと持ちあげネリアにたずねた。


「……ネリス師団長、きみに二番街のミネルバ書店を教えたが……ちなみにどんな本を買ったのだろうか?」


「このまえ買ったのは……〝市場グルメまっぷ〟と〝三番街おつかい便利帳〟に〝四番街スイーツ巡り〟」


 食べるのが大好きなネリアらしいセレクトだ。


「ふむ……その、読み物とかは……恋愛小説なども種類が豊富だったと思うが?」


 ネリアはちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめて、モジモジと答える。


「もちろん買ったよ、二番街の書店じゃなくて八番街の古本屋さんでなんだけど……〝魔術師の杖〟といって、錬金術師の男性が恋した魔術師に杖を作ってあげるお話なの!」


「〝魔術師の杖〟……」


「そう、錬金術師がでてくるお話だから気になったんだよね!」


「…………」


 どうしてそっちにいくのだ、書店の目立つコーナーにもっといろいろあるだろう!


 〝婚約破棄された悪役令嬢は竜騎士に溺愛されました!〟とか、


 〝聖女になったら竜騎士が護衛と称してくっついて離れません!〟とか、


 〝食堂をひらいたら竜騎士の胃袋をガッチリつかんだようです!〟とか、


 〝司書をしている図書館で本好きの竜騎士と仲良くなりました!〟とか、


 〝薬師ですがドラゴンの病を治したら竜騎士の視線がやたらに熱いです!〟とか……。


 ほかにも〝花売り娘と竜騎士〟や〝宿屋の娘と竜騎士〟……竜騎士のありとあらゆる恋物語が売られている。


 どうみてもライアスがモデルだろう……と思えるものもある。


 ちなみに王子様も……以下略。


 とにかくそれらの恋物語で、ヒーローたちは自分の色を身につけて欲しい……と、ヒロインに自分にちなんだ色のドレスやアクセサリーを贈るという。


 そんなこといったって黒目黒髪で育ったネリアはそんなの知らない。異世界だから〝色〟がモノをいうのであって、黒目黒髪で服を贈りあっても喪服カップルになってしまう。





 何をどう説明すべきか言葉をさがす二人そっちのけで、ネリアは楽しそうに話をつづける。


「それでね、〝魔術師の杖〟はもう十年前に絶版になってるんだって。八番街すごいよねぇ……魔術書の専門古書店もあってエクグラシアの神保町みたい!」


「ジンボーチョー……?」


「あと〝初級魔術読本〟をみつけたの。アレクといっしょに読もうと思って……それでね、いま氷の魔法の練習をしているの!」


 ネリアは自分のまえにおかれたグラスに、ちいさく氷の魔法陣を展開した。


「マウナカイアでオドゥがグラスに雪を散らせてくれたでしょ、自分でもできないかなぁって思って。うまくできたら器によそって雪のカキ氷もできちゃいそうだよね!」


 魔法陣はなかなかうまく描けている。これに魔素を流しこめば、キラキラした雪の結晶が降ってくるはずだ。オーランドとライアスはとりあえずそれを見守ることにした。


「えい!」


 ドッゴオオオオン!


 その日まだ秋だというのに王都シャングリラの一部が突然、二階の高さまで雪にうずまり周囲の交通はストップし現場は大混乱したという。


 たまたまその場にいあわせた竜騎士団長が埋もれたひとびとを救出するために、風魔法を発動したら舞いあがった雪がブリザードとなって王都上空に吹き荒れ。


「だからカキ氷みたいなのできないかなって……」とべそべそ泣きながら、事態の収拾にかけつけた魔術師団長にこってり絞られていた小柄な女性がいたとかいないとか……。

オーランドの知っている小説名は適当に考えたものですが、実際にあったらすみません。


なんでオーランドが恋愛小説に詳しいのかというと、カディアンがヒロインたちのドレスの描写を読むのが好きで、月に数冊愛読している……という裏設定があるのですが、本文中で触れることはないと思います。

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