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魔術師の杖【11/1連載開始】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪
第七章 ネリアとお城の舞踏会

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242.レオポルドのお仕事、拝見!

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 あいかわらずこいつは不機嫌大魔王だ。おかげで寝ぼけていた頭もシャッキリする。


 思いっきりにらみかえし、グレンの仮面を被りなおして彼に返事をした。


「現場を見学したくてミストレイに乗せてもらったの。竜騎士団や魔術師団の仕事にも興味があるし」


「興味だと……?」


 レオポルドがますます眉をひそめた。


「ほかの師団がどんな仕事をしているか知れば、錬金術師団だってもっと協力できることがあるかも」


「協力など必要ない、錬金術師団は後方支援が主体だ。ポーションづくりならともかく現場で何の役にたつ。ハッキリいって邪魔だ」


「そうだけど……なるべく邪魔にならないようにするから!」


 そのときドラゴンたちの咆哮にとび起きた人たちが、避難用のテントからでてミストレイの姿に歓声をあげる。


「おお、竜王だ。我らがエクグラシアの守護者がきたぞ!」


「よかった、これでもう安心だ!」


 ミストレイに駆けよるひとびとをみて、レオポルドは口を閉ざしため息をつくと歩きだした。


「説明してやるからついてこい。ライアスは物資の搬入をたのむ」


「わかった、じゃあ後でな、ネリア」


 えっ……何もレオポルド本人じゃなくてもいいのだけど……けれどライアスはさっそく忙しそうだし、彼についていくしかない。


 レオポルドを邪魔するものはなく、おかげでわたしは混雑する広場でもスムーズに歩けた。


「災害時はまず魔術師団が出動して事態の収束にあたり、竜騎士団が必要な物資を運ぶ。今回の豪雨により山の崩落がおき、川が決壊し街の一部が浸水した。魔導列車の線路にも被害がでている」


「うん……」


「そのほかに山から数体レビガルが降りてきて、その退治に手間どったが……」


 水が引いた広場の中央には退治されたレビガルが数体、積みあがっていた。


「やることいっぱいあるんだね」


「そうだ。転移してすぐに私の広域魔術により雨雲を散らし、水属性の魔術師たちが川の水を鎮めた。ほかの魔術師たちはそのあいだに避難用の転移陣を構築し、ひとびとの避難と救助をおこなう」


 とにかく人命優先……転移魔法が使えるだけでこんなに機敏に動けるんだ……わたしは災害のときに活躍する魔術師たちをあらためて見直した。


 事象を支配する力をこんなふうに使えるなんて。


 ライアスたちが運んだ物資はさっそく仕分けされ、ふたたびドラゴンたちによりあちこちの避難所に輸送されるようだ。


 風の守護を持つドラゴンはどんな天候でも飛べるし、力もあるからレスキューでも活躍する。エクグラシアの象徴でもある竜王が被災地に姿をみせるのは、国王の視察より効果があるらしい。


 アーネスト陛下はむしろ王城から動かず、支援物資の調達や復興準備、税収の見直しなどをおこなうという。


 わたしは目を凝らして水に浸かった街並みから、元の姿を思い起こそうとした。


「あのね、今回来たかったのは、カレンデュラがオドゥの故郷だと聞いたからでもあるの」


「……オドゥの?」


 レオポルドがふりむいて聞きかえした。


「うん……彼の家族は亡くなったって聞いているけれど、彼の人となりを知るてがかりが何かないかと思って。ところで……これだけのことができるのなら、被害がでる前にレオポルドが嵐を消すとかできないの?」


「できるかどうかでいえば可能だが……暴走する自然の力をすべてとめるのは不可能だ。それに人間にとっては大災害でも、星にとっては軽いくしゃみ程度のことだ。星が生きているかぎり災害は起こる」


 あ……そうか、すべての災害に対処していたら、レオポルドが何人いても足りない。


「無理に自然の力に抗うことはしないかわりに、われわれは人の暮らしが続くように働きかける」


「人の暮らしが続くようにって……どうやって?」


「……いまからみせる」


 そういってレオポルドは自分のローブから杖をとりだした。わたしたちの背後から声がかけられる。


「師団長、準備ができました!」


「えっ?」


 うっかりわたしまで振りむいたけれど、魔術師団で〝師団長〟といえばレオポルドのことだ。


 呼びかけてきた魔術師が不快そうな顔をした。まわりにいた魔術師たちからも鋭い視線がとんでくる。


「あなたなど呼んでませんよ」


「あっ、ハイ……そうですよね」


 気まずくなって小さくなったわたしの耳に、レオポルドに心酔している彼らの声が聞こえる。


「あんなのがうちのアルバーン師団長と同列だなんて……陛下にも困ったものね」


「ちっさ……前の師団長ほど迫力もないあんなチビ、魔術学園に入りなおしたらどうかしら?」


 そのときレオポルドのよくとおる声が聞こえ、彼が発する魔力の圧に魔術師たちがビリっと緊張した。


「お前たち……私に恥をかかせる気か。王都三師団の師団長は、国王陛下とともに並びたちその治世をささえる。ネリス師団長への礼儀を忘れるな!」


「も、もうしわけありませんっ!」


 最初に声をかけてきた魔術師が真っ青になってわたしに頭をさげ、まわりにいた魔術師たちも静かになる。


「あの、ありがとうレオポルド」


 こんなところでかばってくれたレオポルドに、ちいさな声でお礼をいうと凍りつくような視線が返ってきた。


「お前に威厳がないのが悪い」


 う……悪かったわね、ちっさくて。威厳とか貫禄がどこかに売ってればいいのに!


「はじめるぞ」


 レオポルドのひと声で準備を終えた魔術師たちが一斉にカレンデュラ中に散る。


 レオポルドは杖を中心に広域魔法陣を展開した。


 彼がくりだす術式が街全体を覆っていく……魔術師たちはその補助をしているようだ。


「これは……まさか街ごと修復するの?」


「そうだ」


 たったひとこと返事をしたきり、レオポルドは歯を食いしばり、巨大な魔法陣に魔力を注ぎつづける。


 修復の魔法陣なら何度もみたことがある。魔術学園の窓ガラスを割ったときや、リメラ王妃のティーカップが割れたとき……けれどそれを街ごとこんな大規模にやるなんて。


 やがて泥が地面から姿をけし、そこからまるで芽がでるように、家がにょきにょきと建っていく。


 街が再生していくさまからわたしは目が離せなかった。再生するのは建物だけじゃない……壊れた橋が元に戻り、線路のレールがあらわれる。


 やがてレオポルドは広域魔法を解除して息をつくと、見守っていたひとびとから歓声があがった。


「すごい……街が元通りになってる!」


「ほうっておいても再生するがそれだと時間がかかる。だが再生できるのは、あらかじめ修復の魔法陣がかけられていたものだけだ。そうでないものはできない。それに家具や持ちものの修復まではやらない」


「それでもすごいよ、住んでいた家でふたたび生活をはじめられるなんて本当に安心できるもの!」


 すごいすごいと感動していたら、レオポルドが首をかしげてわたしの顔をみた。


「お前……まさかそんなことも知らないのか?」


「あ……」


 わたしまた墓穴掘った⁉

威厳と貫禄たっぷりのネリアはネリアじゃない気がする……。

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