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魔術師の杖【小説9巻&短編集】【コミカライズ準備中】  作者: 粉雪
第七章 ネリアとお城の舞踏会
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241.カレンデュラへ

ブクマ&評価ありがとうございます!

感想と誤字報告も感謝です!

 地上をはなれるとき研究棟の二階にいたオドゥと目があうと、彼はカーター副団長の手伝いをしていて、呼ばれたらしくすぐそちらに顔をむけた。


『錬金術師は観察する目を持たねばならん。それがどうして起きたか変化をつぶさに観察しろ』


 グレンの言葉がよみがえる。オドゥ・イグネル……彼はずっとわたしを観察していたのかもしれない。もしそうなら「もうすこしだ」……そう思ってしまうんじゃないかな。


『僕は……何としてでも取りもどす。だって僕は不可能を可能にする、奇跡をおこすといわれる錬金術師だからね』


 限りなくゼロに近い可能性だとしても、可能性があるならそれに賭ける。錬金術師はみなあきらめが悪い。


 グレンの三重防壁もあるしソラだっている……彼が研究棟でわたしをどうにかするのは難しいけれど。


 後輩であるユーリの面倒もよくみるオドゥ・イグネル。カーター副団長ともうまくつきあっていて、仕事もそつなくこなすし研究棟では重要な戦力だ。


 味方だとすれば……理解者だとすればとてもありがたい。彼には錬金術師としての優れた能力と……それにグレンよりも時間がある。


 きっとオドゥはわたしが彼を頼ると思っている。彼のいうことはどこまで信用できる?


 いろいろ考えてぶるりと身を震わせたら、ふわりと温かいマントにくるまれた。


 ライアスがマントに植物園でしてくれたみたいに、アルバの呪文をかけてくれる。


「夜通し飛ぶことになる。無理させてすまない……寒いかネリア?」


「ううん……だいじょうぶ、あたたかいよ。ライアスありがとう!」


 そして振りむいてすぐに後悔した。やわらかく笑うライアスが近い……この距離をわすれてました!


 このあたたかさの正体がライアスの体温だってことは意識しないようにする!


「カレンデュラへは物資を輸送するだけだし、ミストレイのワガママにつきあわせてすまないな」


「だいじょうぶ、遊びにいくんじゃないのはわかっているし。カレンデュラってどんなところ?」


「温暖な気候で作物もとれるし山の恵みもあるが、地の力が強く土砂災害が起こりやすい。地盤がもろく崩れやすいんだ。今回は崩落した土砂が土石流を起こし川をせきとめ、暴れた水の力が川を氾濫させた。暮らしやすい土地だがたびたび災害に見舞われる」


「たいへんなところなんだね」


「だがそのぶん、カレンデュラの民はしたたかでたくましい。オドゥもそうだろう?」


「そうだね……ライアスは彼から家族の話を聞いたことがある?」


「あまりないな……あいつはふだん明るくて話し好きだが、故郷の話はしたがらない」


 そういうとライアスは竜騎士団にエンツを送り、だまって飛行に集中した。


 ウレグから飛んだときはいろいろ話しかけてくれたから、あのときはわたしに気を配ってくれてたんだな……とあらためて思う。


 ミストレイはとても静かに飛び、力強いはばたきひとつで山を越え、雄大なシャングリラ平原のうえを渡っていく。


 空に月がふたつ昇ってくると、ライアスが糧食をとりだした。ナッツ類を糖蜜で固めたような甘さと歯ごたえがあるもので、ほんのひとかけらでお腹がいっぱいになる。


「おいしい!」


「よかった……飛行中はほとんど食事することがないんだ。たいしたものじゃなくてすまない」


「そうなの?」


「ミストレイに感覚が伝わるからな……こいつまで腹をすかせて騒ぎだしたら困るし、魔力持ちは二~三日食事をしなくとも平気だ」


 この糧食はどうやらわたしのために用意してくれたらしい。彼の気づかいに心がほわりとあたたかくなる。もちろん彼のマントもあたたかくて……。


「夜が明ける前にはカレンデュラに着く。ネリア……?」


 魔力暴走の薬には鎮静効果もあって……、月が中空にかかりふたたびライアスが声をかけるころには、わたしはぐっすりと眠りこんでいたらしい……。





 マントにくるまり静かな寝息をたてて、すやすやと眠るネリアにライアスは苦笑した。


「寝てしまったか。もうすこし話をしたかったのだが……」


 感覚共有によりライアスの感覚も、ミストレイには伝わっているだろう。


「あぁそうだな、俺も幸せだ。これがただの役得だとしても」


 ライアスは腕のなかで眠る小柄な娘をそっと抱えなおした。





 カレンデュラに到着したとたん、竜王を出迎えるドラゴンたちの咆哮でわたしは目を覚ました。


 山が崩れたところは赤茶けた山肌がむきだしで、魔術師団はえぐれて氾濫した川のそばに展開している。


 ミストレイが着地し、ライアスは固定具をはずすとまた、わたしをヒョイっと抱えて飛び降りる。


 まだ夜明け前だというのに、わたしたちを出迎えたレオポルドは隙のない黒いローブ姿だ。


 精霊の化身といわれるほどの涼やかな美貌、光る川のように背を流れる銀の髪。みるたびに色を変える黄昏の瞳。


 王城のそとであう彼は、とても強烈な存在感を放っていた。そしてその容貌以上に彼を際立たせているのは、全身から放たれる魔力の圧。


 レオポルドはわたしをみるなり、グッと深く眉間にシワを寄せる。


「……なぜお前がここにいる」


 わぁ……デジャヴ……。

ありがとうございました!


「ネリア……おまっ、そこで寝落ちかよ……っ!」と、作者も思います。

まぁ、すぴーと寝ちゃったんでしょう。

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