表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師の杖【コミカライズ】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@『魔術師の杖』
第一章 錬金術師ネリア、王都へ向かう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/568

18.覚悟

挿絵(By みてみん)

錬金術師のローブを着たネリアと赤髪の少年(?)

(絵:よろづ先生)

 もうすぐマール川に差しかかるあたりで、ミストレイの背でライアスが話しはじめた。


「師団長の地位に固執しないという、きみの考えはわかったが、覚悟は必要かもしれない」


「覚悟……」


 ライアスが少しためらっているのが、気配で伝わった。


「なぜ師団長のグレン・ディアレスが、錬金術師団で大きな権限を持っていたか、その理由を知っているか?」


「理由?」


「そうだ。竜騎士団であれば、たとえ俺がたとえ死んでも、竜騎士団の業務がストップするようなことはない」


「錬金術師団の業務は止まってしまったのね」


「ああ。『研究棟』と呼ばれる錬金術師団の工房は、もともとグレン・ディアレス個人に与えられたものだ。王城の一角ではあるが、そこにある素材も研究資料も、ほとんどが彼個人の持ちものだ」


「その権利がグレンの死によって、わたしに移ってしまったと……」


 グレンにはわたし以外の弟子はいなかったけれど、錬金術師は彼ひとりではない。


 稀代の錬金術師であった彼の錬金術に、魅せられた者たちが集まってきて、いまの錬金術師団になったという。


 ウレグ駅にいたオドゥ・イグネルも、そのひとりらしい。


「グレン・ディアレスの錬金術は、『無から有を生み出し、不可能を可能にする奇跡の技』と聞いている」


 魔導列車や機械人形、各種魔道具の開発……『うさんくさいペテン師』というイメージがつきまとう錬金術師だけれど、彼の功績はとても大きいのだとか。


「へえぇ……けっこうすごいおじいちゃんだったのね」


 わたしにはヨレヨレのローブを着た、生活能力のまるでない老人にしか見えなかった。


「グレンの遺産として、みながほしがっているものには、集められた稀少な素材、長年の研究成果や資料のほかに……唯一の弟子へと渡された〝錬金術の知識〟も含まれている」


「唯一の弟子っていっても、まだ二年しか学んでないけどね」


 それに偏屈老人のグレンも、この世界についてなにも知らないわたしを、命を助けただけで放りだそうとは思わなかったんだろう。


「グレンの遺産はなるべく無傷で手にいれたいが、人の手に渡すぐらいならと考える者もいるだろう」


 ――もしくは〝ネリア・ネリス〟がいなくなれば、師団長室の封印が解かれるのではないかと考える者も。


 ライアスはそこまで言わなかったけど、わたしはぶるりと身震いした。グレンから渡された以外に、わたしにはあっちの世界の知識もある。


(んん、これはどう考えてもわたし危険かも。もしも拷問とかされたりしたら……)


 不安に感じたのが伝わったのか、ライアスが力強く請け合う。


「危険かもしれないが、きみ身は絶対に守る。そのための竜騎士団だ。頼りにしてほしい」


「わかった。グレンに頼まれたこともあるし、王都でがんばってみる。もう無理!って思ったら、デーダスに帰って引きこもるから」


「そうならないよう全力を尽くす」


 ライアスが腕を伸ばして、わたしの右手を持ちあげる。振りむけば彼はわたしの指先に、まつ毛を伏せてキスを落としたところだった。誓いみたいなものかもしれない。


「失うわけにはいかない」


 小さく呟いたライアスは、その蒼い瞳でわたしをひたと見つめてきた。うわぁ、行動ひとつひとつがカッコいい!


 ここで不安そうな顔はしちゃダメだ。信頼してるよ!……の意味もこめ、わたしもライアスにこくりとうなずいた。うん、うまく笑えた。





 ライアスが遮音障壁を解くと、部下の竜騎士が交わす会話がエンツで飛びこんできた。


『ようやく指先にキスとかさぁっ、かーっ!このジレジレ感がたまんないねぇっ!』


『だから団長は顔がイイんだからさぁ、さっさと押し倒しちゃえばいいんだよ』


『そうそう!団長なら顔だけでイケるっ』


「……お前ら、なんの話をしている」


 ライアスの声が一段と低く響き、竜騎士たちの声があわてふためいた。


『『『だっ、団長⁉』』』


「デニスっ!状況の報告を!」


 照れくさいのかライアスが怒鳴り、副官デニスが落ち着いた声で返事をする。


『こちらデニス。編隊は南東シャングリラに向けて順調に飛行中。速度二百。ここまでは問題ありません。王都にはヒトロクマルマル到着予定』


「おそらく妨害される。王都から離れていて集落もとぎれる、マール川のあたりで仕掛けてくる可能性がある。相手は錬金術師団だ。気を抜くな!」


『『『『了解!』』』』





 そのままドラゴンたちは飛行を続け、前方の地平線にキラキラと光る筋が見えてくる。


「あれがマール川だ」


「マール川を越えたら、シャングリラはすぐそこなのね」


 空は晴れていて視界は良好。このまま王都まで行けるんじゃないか、そう思ったそのとき。


 空を切り裂くようにドラゴンたちのまわりに、大きな魔法陣がいくつも展開し、目が眩むような閃光と爆音が轟いた。

竜騎士たちはライアスより年上です。

昨年22で団長になったばかりのライアスを、可愛がりつつ見守っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作者にマシュマロを送る
☆☆『魔術師の杖 THE COMIC』☆☆
月曜更新ニコニコ漫画

毎月1日更新!『MAGKAN』(先行配信)

『魔術師の杖 THE COMIC』
☆☆アプリ『コミマガ』でも配信中!☆☆
作画:ひつじロボ先生

小説版公式サイト
小説版『魔術師の杖』
☆☆NovelJam2025参加作品『7日目の希望』約8千字の短編☆☆
『七日目の希望』
☆☆電子書籍販売サイト(一部)☆☆
シーモア
Amazon
auブックパス
BookLive
BookWalker
ドコモdブック
DMMブックス
ebook
honto
紀伊國屋kinoppy
ソニーReaderStore
楽天
☆☆紙書籍販売サイト(全国の書店からも注文できます)☆☆
e-hon
紀伊國屋書店
書泉オンライン
Amazon

↓なろうで読める『魔術師の杖』シリーズ↓
魔術師の杖シリーズ
☆☆粉雪チャンネル(Youtube)☆☆
粉雪チャンネル
― 新着の感想 ―
えええええ!? 国防の要の竜騎士に、錬金術師がカチコミ!? しかも上空を飛行中に魔法による飽和攻撃…!? 日本で言えば自衛隊の戦闘機に、マッド科学者がドローン飛ばして自爆特攻させる様なものでは!? …
[良い点] 最初の頃に錬金術師の副師団長が、伝統ある錬金術師団を〜〜て言ってたけど、最近の伝統なんですね。 そこまで頭に血がのぼるほど、グレンに心酔していたり、功績をすごいと思っているってことなんです…
[気になる点] >若干22で団長になった 弱冠です
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ