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魔術師の杖【コミカライズ】【小説9巻&短編集】  作者: 粉雪@『魔術師の杖』
第四章 職業体験とサルジアの陰謀

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101.こいつら、ギラッギラだ

よろしくお願いします。

「メレッタがちゃんとポーションを作れるよう、アイリが見てあげて。カディアンたちはソラについて、素材の下ごしらえの練習。ちゃんとナイフとハサミは使えるように。あとはレナードね」


 さすがレナード・パロウ、首席の名はダテじゃない。これだけの品質なら、このまま店で売れそうだ。


「当然ですよ。身分だけにあぐらをかいて、努力をしないヤツらとは違います」


 レナードはふふんと、バカにしたような視線で同級生たちを見る。王子様本人よりも、隣にいたグラコスとニックがムッとした顔をする。


 うわぁ……。


 メレッタに話を聞いたときは、キラッキラの青春かと思ったけれど違う。


 こいつら……ギラッギラだ。


「レナードはライガの術式について、ユーリと話し合って。ユーリ、よろしくね」


 ユーリはニコッとして、わたしにうなずいた。


「はい、彼がいちばん術式を読みこんで来たようですね。じゃあ、レナードはこちらに座って」


「……よろしくお願いします」


 レナードはユーリの顔をじっと見てから、彼と同じテーブルに座る。


 生徒たちの世話はユーリに任せるとして、わたしにはほかに、やらなければならない仕事がある。


「わたしはモリア山にむかう遠征隊のために、ポーションを作るから。ヌーメリア、手伝ってね」


「はい」


 それを聞いたアイリが手を挙げた。


「私もお手伝いします!さっきのポーションは合格だったでしょう?だったら私だって……」


「あぁ、うん……そうなんだけど。アイリはメレッタを見てあげて」


 アイリは不満そうだけど、わたしが言えば従うしかない。生徒たちとは違うテーブルで、わたしたちは作業をはじめる。


 北方のモリア山は〝地域別魔物図鑑〟で調べたら、寒いため炎を吐いたり、逆に氷の攻撃をしてきたりと、温度調節系の魔物が多いらしい。


 季節は夏だけど、火傷や凍傷対策も必要なのね……。


 ゴリガデルス、マウントダボス、ガルバードは、体の表面も硬くて通常の物理攻撃で倒すのは大変なので、身体強化や魔力回復のポーションもいるだろう。


 今回はちゃんと予算を考えて、高価で稀少な素材を減らしたぶん、使う種類や量を増やしている。


 まずは下準備のために大きめの魔法陣を敷く。風の魔法陣にぽんぽん放りこんで、浮かせた素材を風で洗い、細かなゴミをとり除いていく。


 そのあとは細かく術式で調節し、素材を均一な大きさにそろえて刻む。品質を保つために、術式で温度を一定にすることも忘れない。


 下準備が終わったら、錬金釜内部の条件を設定する。


 ヌーメリアがわたしの指示に合わせ、錬金釜にタイミングよく素材を注ぐ。なんどもやっているから、ふたりの呼吸はピッタリだ。


 展開した魔法陣に勢いよく魔素を叩きこみ、どんどん素材が持つ力を奪い取っていく。


「魔法陣の多重展開……⁉」


 だれかが息をのんだ気配がしたけれど、今はそんなことにかまっていられない。魔法陣が発動したら、手を止めるわけにはいかないのだ。


 いくつもの魔法陣が鮮やかに光を発し、音を奏でて回り続ける。


 錬金術師の作るポーションは、運命すらもねじまげる。


 あらゆる角度から『死』に向かって落ちていく『運命』に逆らい、『生』に引き戻す。


 傷つきし者に『再生』を。


 目が見えぬ者に『光』を。


 死にゆく者に『生存』を。


 毒に侵され朽ちゆく体に『浄化』を。


 力尽きた戦士に、みなぎる『力』とあふれる『闘志』を。


 魔力を失いし魔術師に、高い『集中力』と澄みきった純粋な『魔素』を。


 ギャリギャリギャリギャリ……。


 素材自身が反発し、魔法陣同士も干渉し合って、耳ざわりな不協和音を発する。あえて逆らわずに、そのなかから正しい波動を選んでいく。


 どんなに素材が抵抗しようと、どうせすべての力はわたしのものになる。


 わたしの支配下においたそれを、ヌーメリアが丁寧に混ぜていくと、やがてすべての術式が違和感なくなじんで溶けあい、ひとつの波動を紡ぎだす。


 だんだんと魔法陣の奏でる音が、澄んだ音色に変わり……最後にぼわん、と錬金釜の中でポーション全体が光った。濁っていたポーションが徐々に透き通り、そこに状態保存の術式をまとめてかける。


 見物していたオドゥが暇そうだったので、ポーションを瓶に封入し、破損防止の術式を加えてもらう。


 彼はサクサクと作業して、錬金釜に天秤があしらわれた錬金術師団の紋章を、瓶にひとつひとつ刻んでいく。


「このペースならポーション作りもはかどりそうね。これを午前中に、あと三セットやろう。みんなの調子はどう?」


 生徒たちを振り向くと、ぽかーんと口を開けて、みんな手が止まっていた。


 ぜんぜん進んでないじゃん。そういえば、ユーリも最初のころはそんな感じだったなぁ。


 術式を刻み終えた瓶を箱に並べたオドゥが、クックックと笑って眼鏡のブリッジに指をかける。


「わかった?これが『錬金術師団長』だよ。学生たちの《《お遊び》》とは違うんだ」


 アイリはさっと顔を赤らめ、レナードは目をむき、カディアンたちはうつむいた。


「ネリア、錬金術師はなり手がいないんじゃなくて、グレン老についてこれる者が少なかったんだ。それに錬金術師は秘密主義だしね」


 オドゥはそれだけ言って、錬金釜で作業しているメレッタに声をかけた。今度は煙はでてないみたい。


「ポーションができたら、二階にいるお父さんに持っていってあげなよ。娘の作ったポーションなんて、副団長喜ぶだろうなぁ」


「いいですけど……ネリス師団長の錬金とくらべたら、私のポーション作りなんて、おままごとですよ」


「いいのいいの、気持ちなんだから。娘の作ったポーションなんて、世界にひとつだけだよ!」


 副団長に頼まれていたポーション作りを、オドゥはちゃっかりとメレッタに押しつけた。


 午前中の作業が終わったら、いつも通り中庭で昼食だ。


 学園生たちはお弁当でも、王城の食堂に食べにいくのでも自由にしていいのだけれど、カディアンがユーリと一緒に食事をしたいと言い、みなぞろぞろと中庭にやってきた。


 今日はソラにも実習を手伝ってもらったので、中庭ではヴェリガンとアレクが準備をしていた。


 今日のメニューは学生たちも加わるため、がっつりとカレーにしてある。ほら、野菜が生煮えとかじゃなければ、初心者でもそんなに失敗しないし。


 鍋の中身に火が通ったら、用意しておいたカレールゥを溶かすだけだし。調理実習の定番メニューだもんね!


 野菜の下ごしらえだけしておけば、生活能力のまるでなさそうなヴェリガンでもできるはず!


 中庭に行くと、目を輝かせているアレクの前で、ヴェリガンは鍋をかき混ぜていた。


 大量に汗をかきながら、手は使わずに魔法陣を敷いてグルグルと……。


「鍋をかき混ぜるなら、魔力なんて使わず手でやったほうが早くない?」


「め、めんどうで……」


 ぜーはー息を切らしながら、ヴェリガンは返事をするけど……魔法陣を構築するほうがめんどうだと思う。


 だけど初めてカレーを見た弟くんたちは、カルチャーショックを受けていた。


 顔に恐怖を浮かべ、得体の知れないものを見るように、自分たちの前に置かれた皿を眺めている。


「この、えらく見た目の悪い食べものはなんだ」


「まるで……」


「シッ、言うな!」


「だがこんなものを、デカいスプーンひとつで食べろ……だと?」


 なんかいろいろめんどくさい。昼のまかないに芸術的盛りつけを望まれても困る。サンドイッチとかハンバーガーとかにすればよかったかな。


「いやなら、王城に食べに戻れば?」


「いやだなんて言ってない!兄上が食べるんだったら俺も食べる!」


「殿下!待って下さい!」


「毒味はわれわれが先にっ!」


 あぁもう、なんだかなぁ……。わたしもカレーを食べるために、仮面を外してソラに預けた。


 すると弟くんがびっくりしたように、わたしをまじまじと見ている。


「なにかわたしの顔についてる?」


「かわいい……」


 カディアンがつぶやいたひと言に、ユーリの眉がぴくりと動き、アイリが顔色を変えた。

カディアンは高校生が教育実習生に見惚れるようなものですが、アイリは気が気じゃありません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] モリア…ミスリル鉱山… ドゥリンの禍クルー!(いやまさかそんな
[一言] おもしろーい!!!! 続きが楽しみです!!
[良い点] ギラギラなグループ…… 青少年少女達とコミニュケーションを取るのは大変ですね(笑)
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