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王子様はギャフンと言う  作者: 水瀬


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19/24

【 18 】

 





 一瞬で空気が変わった。



 ユリウスたちが動きを止めて、急に現れた≪俺≫に視線を動かす。


「何をしていた、と聞いている」


 ≪俺≫が、もう一度そう尋ねると、ユリウスがゆっくりと口を開いた。


「殿下……これは……クローディアが……」

「違うんです。私が、私が悪いんですっ!! 私は、私はただっ!!」

「キャシー嬢は悪くないっ!」


 しどろもどろなユリウスの言葉を、キャシーが遮り、さらにミゲルが叫んだ。

 おい、誰も彼もまともに事情を話すことも、人の話を最後まで聞く事も出来ないのか?

 良いとか悪いとか関係ないだろう。


「クローディアがキャシー嬢を転ばせたから、僕たちはまたクローディアがキャシー嬢を傷つけるんじゃないかって思って……だから、そうなる前にクローディアに……その注意をしようと……」

「そうです。ミゲルとヒューはキャシー嬢を助けて、クローディアに注意しようとしただけです」


 だんだんと勢いを無くしたミゲルに代わり、ユリウスが上手いこと続けたが、言ってることは嘘ばかりだ。

 かばい合うのは悪くはない。が、時と場合によるだろう。

 俺は、友人たちの醜態に眉をひそめて、自分を支える≪俺≫を見上げた。


 ≪俺≫が、クローディアが、今どんな顔をしているのか気になった。

 ≪俺≫はキャシーを見ていた。


 無表情で、ほんの少しの感情もない目で。それは、初めて入れ替わった時見上げた≪俺≫と同じ目だった。


 息を飲んだ。


 このままでは駄目だ。


 急に湧きあがった焦燥感に身じろげば、≪俺≫が見下ろした。

 その瞳は困ったように細められ、“これをどうするつもりか”と聞いている……ような気がする。


 どうすると言われても、こいつらは“クローディア”の言葉なんて聞きやしないだろう。

 だからと言って、クローディア――――≪俺≫に任せることもできない。


 ―――――早く、俺に戻らないと、戻って、なんとかしないと。


 どうしたら戻れるのか。

 何もできない自分に、唇をかめば、すぐに鉄の味がして、さらに焦りが増した。


「クローディア」


 ≪俺≫が、俺を呼んで、支えていた手から力が抜ける。




 その瞬間、どこかであの音がした。




最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


不定期更新になりますが、

次話も、よろしくお願いします。

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