【 18 】
一瞬で空気が変わった。
ユリウスたちが動きを止めて、急に現れた≪俺≫に視線を動かす。
「何をしていた、と聞いている」
≪俺≫が、もう一度そう尋ねると、ユリウスがゆっくりと口を開いた。
「殿下……これは……クローディアが……」
「違うんです。私が、私が悪いんですっ!! 私は、私はただっ!!」
「キャシー嬢は悪くないっ!」
しどろもどろなユリウスの言葉を、キャシーが遮り、さらにミゲルが叫んだ。
おい、誰も彼もまともに事情を話すことも、人の話を最後まで聞く事も出来ないのか?
良いとか悪いとか関係ないだろう。
「クローディアがキャシー嬢を転ばせたから、僕たちはまたクローディアがキャシー嬢を傷つけるんじゃないかって思って……だから、そうなる前にクローディアに……その注意をしようと……」
「そうです。ミゲルとヒューはキャシー嬢を助けて、クローディアに注意しようとしただけです」
だんだんと勢いを無くしたミゲルに代わり、ユリウスが上手いこと続けたが、言ってることは嘘ばかりだ。
かばい合うのは悪くはない。が、時と場合によるだろう。
俺は、友人たちの醜態に眉をひそめて、自分を支える≪俺≫を見上げた。
≪俺≫が、クローディアが、今どんな顔をしているのか気になった。
≪俺≫はキャシーを見ていた。
無表情で、ほんの少しの感情もない目で。それは、初めて入れ替わった時見上げた≪俺≫と同じ目だった。
息を飲んだ。
このままでは駄目だ。
急に湧きあがった焦燥感に身じろげば、≪俺≫が見下ろした。
その瞳は困ったように細められ、“これをどうするつもりか”と聞いている……ような気がする。
どうすると言われても、こいつらは“クローディア”の言葉なんて聞きやしないだろう。
だからと言って、クローディア――――≪俺≫に任せることもできない。
―――――早く、俺に戻らないと、戻って、なんとかしないと。
どうしたら戻れるのか。
何もできない自分に、唇をかめば、すぐに鉄の味がして、さらに焦りが増した。
「クローディア」
≪俺≫が、俺を呼んで、支えていた手から力が抜ける。
その瞬間、どこかであの音がした。
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