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王子様はギャフンと言う  作者: 水瀬


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17/24

【 16 】

 





「ジーク、これを見てくれ」


 城に戻ってすぐ、俺はクローディアから受け取った手紙を、すでにしかめっ面のジークハルトに渡した。


「これは?」

「キャシーがクローディアを呼び出すために使った手紙だ」

「……殿下が使っている用紙と同じものですね。キャシー嬢がお持ちだったのですか?」


 ジークハルトは暫く紙を眺めたあと、そう眉をひそめる。


「あぁ、そうらしい」

「一体どこでこれを手に入れたのでしょう。銀の縁取りも印も……これは本物と同じですが……通し番号がありませんね」

「通し番号?」

「はい、用紙と縁取り、箔押しが特注なのはご存知ですね」


 それは知っている。俺専用の色に装飾縁、印が押されてる。公務でも私信でもそれ以外は使えない。


「他に納品後魔術省で王家所有の魔法を施し、その後こちらで偽造防止のため透かしの通し番号を入れます。使用後は送信簿に相手先を入れ、証明印を魔法で添付します」

「それはまた、とてつもなく面倒な事を」

「そうですね。とても面倒です。ですが私たちはそれをやるのが仕事です。やっているからこそ、何かあった時役立つんですよ。この紙一枚で戦争が起ることだってあるんですから、王家の名がつく物はすべて管理する必要があるんです」


 言いながら手紙を封筒にしまう。


「通し番号がありませんし、殿下の証明印はこちらでも確認できます。ですが王家所有魔法はこちらでは無理です。明日にでも魔術省に確認させます」

「それで何が分かるんだ?」

「……用紙の納品は一年に一度、魔法省が受け取り保管しています。必要枚数を指定すれば、所有魔法を施しこちらの物品庫に送られます。ですから所有魔法がなく、在庫枚数の残が合っていれば、王宮内での紛失でない事が分かります」


 呆れたような目で見るけど、俺にそんなことを期待するのは間違いだぞ。


「もしあれば?」

「魔法省内の紛失です。なければ、納品前ですが……どちらにしても、とてつもなく大事になるでしょう」


 真剣な目がすごく怖い。

 あのピンク頭、なんてことしてくれるんだ。


「キャシーに、入手先を聞いてみたほうがいいだろうか?」

「それはお待ちください。こちらで調べてみます……魔法省の調査が終われば、ある程度用紙を持ちだせる人間を絞れますから」

「分かった、それはジークに任せる」

「それから、ついでにお友達も調べさせていただきます」

「ミゲル達のことか?」

「殿下が隠していらっしゃるようでしたから、黙っていましたが、最近彼らもおかしな動きをしていると報告が来ています」


 確かにあいつらはおかしい。だけれど。すぐに頼むとは言いたくない。幼馴染を疑うような事はしたくない。


「要職の御子息たちですが、殿下に害を与えるようなら黙ってはおけません」


 ジークハルトの目は俺の答えを待っていない。これは決定後の報告た。


「分かった。頼む」


 仕方なく頷けば、かしこまりましたと頭を下げた。そして、ついでのように、


「クローディア様は、キャシー嬢の話を何とおっしゃっていましたか?」


 と、尋ねてきた。俺は肩をすくめる。


「理解できない話の後、俺と婚約を解消しろ、と言ったそうだ」

「婚約を解消、ですか?」


 ジークハルトが目を瞠る。


「それはまた大胆な申し出ですね」


 俺もそう思う。そんなことクローディアに言ってどうなる事でもないのに。


「あぁ。クローディアは、それは出来ないと応えたそうだ」

「そうですか……そうでしょうね」


 俺とジークハルトは何とも言えない顔でため息をついた。





最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


不定期更新になりますが、

次話も、よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お待ちしておりました! いよいよ「ヤバいピンク頭」の化けの皮が剥がれてきましたね! ちょっと頼りない殿下がどうなるのか、楽しみにしてます。 [一言] クローディアが幸せになるなら、もう…
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