【 10 】
微妙な雰囲気の中で、俺たちは準備された軽食を黙々と食べた。
無言でサンドイッチを口に運んでいると、なんだか可笑しくなってきた。
「こんな雰囲気になるのって、久しぶりだな」
耐えかねて、俺はそう皆を見回した。
うつむいていた3人が、ばつが悪そうに顔を上げる。
「そうだね、もう喧嘩なんてする年でもないのにね」
ミゲルが肩をすくめ、ユリウスはため息をついた。
「それも嘘か本当かも分からない噂のために……」
ヒューは黙ってお茶をすすっている。
「殿下、思うんですが、噂が本当かどうか、私たちで調べてみたらどうでしょう?」
はぁ? 何言ってるんだ? もうクローディアのことはいいじゃないか、と俺は言いたかった。
「真偽を確かめ、殿下にふさわしいかどうか見極めるんです」
「それはいい!」
ヒューが急にやる気を出した。
俺はあいた口がふさがらない。本当になんでそんなにクローディアにこだわるんだ?
「殿下も興味はなくとも、いずれ結婚するならクローディアがどんな人物か知っておいた方がいいでしょう」
「そうだ、あんな噂が立つのには何か理由があるはずだ。調べておいて損はない」
やっぱりヒューはクローディアが嫌いみたいだな。一体何があったのか……
「でもさ、もし噂が本当だったらどうするの?」
盛り上がる2人に向かってミゲルが、ためらいがちに聞いた。
そんなことはないと思うが、それは俺も気になる。
「もし本当なら物凄い悪女だよ? もしそうなら、殿下はどうするの? 結婚するの?」
「え?」
3人の目が俺に集まる。
もし、クローディアが本当に噂通りなら……どうなるんだろう、な。
「……結婚、するんじゃないか。たぶん」
「殿下は本当にそれでいいのか?」
ヒューは立ち上がってテーブルに手をつき、俺の方へ迫ってきた。
ガチャガチャと食器が音を立てる。
ヒューはテーブル越しでも迫力があるな。
「ヒュー、落ち着け。クローディアが悪女だと決まったわけじゃない」
鼻息の荒いヒューをユリウスが止める。
なんだよ。結局みんなクローディアが悪いって思ってるんだな。
そう考えたら、何故だか悔しくなってきた。
「みんなが心配してくれるのはありがたい。その心配が少しでも少なくなるなら、クローディアのことを調べよう」
俺は思わずそんなことを言っていた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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