プロローグ
パリンッ
ガラスが割れるような音がしたと思ったら、急に目の前が暗くなった。
グラリと体が揺らいで、意識を失った。
ざわざわと人の声がして、意識が急浮上する。
誰かが呼んでいる。
ふわふわする頭を振って、ゆっくりと目を開けると護衛のジークハルトが覗き込んでいた。
「大丈夫ですか? 急にお倒れに」
「ああ、大丈夫だ」
そう言って、声がやけに高いことに気付く。
まるで女の声だ。
立ち上がろうとジークハルトを見ると、奴は一瞬眉をひそめた後、軽く頭を下げ離れて行った。
いつもならいらないと言っても手を出す癖に。
「殿下、大丈夫ですか?」
後方からそう声がした。
大丈夫だと言ったのが聞こえなかったのかと、振り返ると何人かの護衛の間に《俺》が倒れていた。
「どういうことだ?」
か細い声が口から洩れる。
ふと自分を見下ろすと、赤いドレスに包まれた体があった。
「殿下、大丈夫ですか? すぐ医師を」
倒れている《俺》が、護衛たちに支えられてゆっくりと体を起こした。
そして俺を見て、目を見開く。
「………わ、たくし?」
と、《俺》の口がそう動き、そのまままたひっくり返った。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
不定期更新になりますが、
次話も、よろしくお願いします。