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冒険、始めちゃいました。  作者: カイナベル
第五章 帝国編
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第九十八話 竜人、将来の親友に出会いました。

 今回は戦争が始まって一週間くらい後の話、久しぶりの登場、竜のビーストドルガナ君視点です。

 あと百部分行きましたが、百話書けたらもっと言いたいこと言いたいと思います。

 ギレルトとアフトゥルクとの間で始まった戦争は瞬く間にギレルトを混乱の渦に飲み込んだ。


 まず、首都目指してアフトゥルクの軍に対抗するために冒険者たちを募集した。その結果、フリーの冒険者たちの募集には想像以上にたくさんの冒険者たちが集まった。正義感から剣を取ることを選んだ者、兵士の首から生まれる報酬を目当てに参戦を決めた者。目的は様々であるが、何はともあれたくさんの冒険者たちが集まったことにギレルトは胸を撫で下ろした。


 そして、ギレルトを防衛する衛士冒険者とともに国内の防衛に当たらせた。冒険者の活動とは別に軍としての訓練を積み重ねてきた衛士冒険者たちの強さは他の冒険者とは別格で、帝国の実力者にもひけをとらない。それに加えて軍には加わらずに力を振るう募集された冒険者たち。帝国の兵士たちが一万ほどの大軍ではなく五百ほどの小さな隊ごとに動いているということもあり彼らによるゲリラ戦がうまく機能した。


 しかし、戦力の差は圧倒的。衛士たちが陣を作り組織的にぶつかったうえで、募集した冒険者たちがゲリラ戦で兵士たちに襲撃をかけても数の暴力による差は埋められるものではなく、じりじりと追い詰められていった。


 しかし、その中でも光る存在はチラチラと存在していた。わずか三百人で千人の帝国部隊を相手取り死者を出すことなく帰還した衛士部隊、たった三日間で百人以上の兵士を討ち取ったBランク冒険者パーティ、たった一人でで五百人以上の帝国兵士を引き付け一般人の逃げる時間を稼いだDランク冒険者など、こんな絶望的な状況であるにも関わらず、目まぐるしい活躍を見せる冒険者たちがいた。 


 そのような目立つ冒険者がいる一方、目立たないところで活躍を見せているものもいる。ドルガナもそのうちの一人であった。今まで住みかとしてきたノヴェル山地を離れ、本格的に冒険者として活動を始めた彼であったが、異形の姿を持った彼の旅路はそううまくいくものではなかった。まず確実に道行くビーストには振り向かれこそこそと陰口を叩かれる。わざわざ喧嘩を吹っかけてくるものまでおり、ビーストには嫌悪しか抱かれなかった。 


 他の種族の者たちにもその奇天烈な見た目からまるで見世物を見るような奇異の目で見られる。なかには彼の背中に生えた背中を小ばかにしたようになれなれしく触ってくるものもいた。それはとても気分のいいものではない。一か月弱旅を続けてきた彼であったが、それらの振る舞いにうんざりしていた。 


 しかし、その旅路が辛かっただけだったかというとそうでもなかったというのが実情である。彼の見てくれを揶揄したり憐れんだりすることなく、まるで彼が他の冒険者と変わらないような振る舞いを見せる者たちは少なからずおり、親切に依頼に付き合ってくれた冒険者もいた。そしてそのような者たちはみな等しくドルガナの弓を腕を評価していた。褒められることの少なかったドルガナにはそれが非常に嬉しく、初めて褒められた時にはまさに天にも昇る気分であった。だが、それでも彼の扱いが大きく変わったわけではない。彼らのような存在は本当にごく少数。取り巻く環境はそうそう変わらなかった。


 そんな中でギレルトにたどり着いたドルガナはそこで戦争の話を聞く。無関係の人々が無差別に襲われているという話を聞いた彼は本能の赴くまま、即座に自らの弓を帝国の兵士に向けることを決意し戦列に参加した。


 戦争に参加したドルガナはその卓越した弓の腕前で結果を残すことになる。彼の射撃精度はまさに百発百中。スキルの効果もありひとたび狙えば外したことがないほどの命中精度を誇っている。加えて彼の持つ特別製の弓の射程は通常の五倍。その腕前は戦争中に五百メートル離れたところにいる敵の頭を五本の矢で五回打ち抜いたことで証明している。さらに彼は背中の羽を使って飛行することができる。上空という視界の通る唯一無二の場所から狙撃を行える。帝国兵士、冒険者、どちらの陣営にもこれほどの弓兵はいない。ただ唯一の存在である。


 すぐに帝国側に「凄腕の狙撃手がいる」という噂が立ち、目の当たりにした者たちはその力に恐れ戦くことになった。戦場ではその力を使い、何人もの帝国兵士を射倒し、数々の味方を救った。

 

 だが悲しいことに救ったからといって感謝されるわけではない。救った者は彼の姿を見るまではとてもまっすぐに感謝の気持ちを伝えてくるが、彼の姿を見たとたんに引き気味に接してくる。助けたことへの感謝の言葉はあっても態度は変わらない。 


 どこに行っても自分の醜い姿が災いし誠実な交流を妨げられるドルガナ。改めて自分の生まれ持った肉体に辟易しながらつかの間の休息をとっていた。一人冒険者軍の陣の端で食事をとるドルガナ。そんな彼のもとに一人の冒険者が近づいてくる。


「隣、イイカ?」 


「ん?ああ構わないぞ」


 視線を上げたドルガナの先に立っていたのは腰から何本もの剣を下げ、片手に器を持ち、額から天を貫かんとする一本角の生えた冒険者だった。ガチャガチャと音を立てながらドルガナの隣に座りこんだその人物器の中に入っていたスープに口をつける。


 一方で隣に座られたドルガナはその人物をじっと眺めながら思考を巡らせる。なぜわざわざ自分のところに来たのか、自分のことを見て何も思わないのか、なぜそんなに剣を持っているのかなど。まるで自分のことなど気にしていないかのように振る舞うのを見て痺れを切らしたドルガナは思考を言葉にして投げかける。 


「なあ、何でここに来たんだ?」


 ドルガナがカナタの座る場所を指さしながら問いかけると、彼女はその問いかけに答える。


「……あっちは人多イ。けど一人は、チョット寂しい。それでちょうどいいトコロ、探してたら、いたカラ」


 たどたどしくも、ユウキたちといた時とは上達した言葉で答えるカナタ。ドルガナが次の質問を投げる前に捕捉するようにさらに口を開く。


「……アト、なんか寂しそうダタ、カラ」


 その言葉を聞いたドルガナは図星だといわんばかりに身体をびくりと震わせる。しかし、カナタがそれを指摘する様子はない。見てないことにしてもらい、自分の中でもなかったことにしたドルガナは次の質問を投げる。


「……俺のことを見て、何とも思わないのか?」


「……ドウデモイイ。少なくとも私は、気にシナイ。それに私もアタマから角が生えてる、から」


 なぜそのようなことを聞くのかといいそうな表情で答えたカナタを見て、彼はなぜか自分の悩みがひどく馬鹿らしく感じられた。それと同時にユウキに聞かされた言葉が再度頭をよぎった。


 彼女の言葉を噛み締めたドルガナは向けていた視線を逸らし、納得したように首を縦に振る。


「そうか。……そうか」


「ソレ、もらってもいい?」


「ああ、好きに食べてくれ」


 自分の持っている肉串をカナタに渡すとドルガナは何の気なしに冒険者軍の陣を眺め始める。何も考えず人を見回っているとその中で不可解なものを見つける。陣の中でこそこそと動き回る一人の黒衣の人物。挙動不審な動きで陣内を動き回っている。冒険者の陣内であるにもかかわらず堂々とせずにわざわざこそこそと動き回る動きは明らかに不審なものだった。


 ドルガナはそんな存在から目が離せなくなり注意深く見つめ続ける。十数秒ほど見つめ続け、ふと視線をずらすと、隣に座り肉串を頬張っていたはずのカナタが同じ対象をじっと見つめていた。


「あの、男、変な感じ。……イッテクル」


「あ、おい!何かあったら援護はするからな!」


 ドルガナが一言言葉を発することが出来るだけの時間で走り出したカナタは、ものすごいスピードで陣に向かって行く。その速さに驚きながらドルガナは傍らに置いた弓を左手に取り、矢を三本右手に取る。


 戦闘準備を整えたドルガナが黒衣の人物を見つめていると、三十秒ほどでカナタがその人物に接触する。そのまま二人は会話を始め、妙な雰囲気を醸し始める。遠目に見てもそれを感じ取ることのできたドルガナ。何かが起こった時のために右手に持った矢をつがえた。


 そしてそれは確信に変わる。陣の中で問答を行っているカナタが何かを発した途端、黒衣の人物は黒衣の中から剣を抜き、カナタに襲い掛かった。突如として始まった殺し合いに、付近の冒険者は戸惑いながらも制圧にかかる。が、黒衣の冒険者はカナタに襲い掛かると同時に付近の冒険者たちを切り払い、自分に近づけないようにしている。生半可な腕では近づくことすらできないと判断したドルガナは、黒衣の人物を仕留めるため、つがえた弓を引いた。


 何もできないままに切り払われていく冒険者たちから自分に意識を逸らすために黒衣の人物の懐に飛び込むカナタ。彼女に気づいた黒衣の人物は彼女に向かって剣を振り下ろす。重心が前にあるカナタでは回避は不可能。このままでは彼女の脳髄が凶刃に晒されることになる。周りにいる冒険者たちも終わったと確信し、心の弱いものはぎゅっと目を瞑る。


 だが、振り下ろされた剣はカナタの頭蓋に触れることなく彼女の身体の横をすり抜け地面に突き刺さる。それと同時に宙に舞う一本の矢。この状況は理解できたのはカナタだけ。他の面々は黒衣の人物も併せて困惑し理解できていなかった。離れたところで弓を引いていたドルガナの右手に持たれている矢は二本。彼は離れた場所から高速で振るわれる剣に狙いを定め、それを打ち抜くことで弾いたのだ。まさに人間業ではない。


 あり得ない距離からの神業で自らの剣を弾かれたと理解した黒衣の人物はその事実に困惑し体が硬直する。一瞬生まれた隙、それが致命的なミスとなる。懐に飛び込むことに成功したカナタは力強く踏み込むと握りこんだ拳を彼の者の腹部に打ち込む。その衝撃は生半可なものではない。


 鬼の怪力によって拳を打ち込まれた黒衣の人物は肺の空気を吐き出しながら上空に吹き飛ぶ。十メートルは吹き飛び無防備になった彼をドルガナは見逃さない。残った二本の矢を即座につがえると同時に発射したと見紛うほどの速度で打ち出した。二本の矢は黒衣の人物の腹部と右肩を貫くと同時に、その衝撃で空中移動の経路を捻じ曲げる。そのまま近くのテントの上に落ちた黒衣の人物はがれきの中に埋もれ姿を消す。


「殺すか……、生かしておくか……」


 三本の矢を射終わったドルガナは気を抜かずにもう一本矢を手に取りつがえ引いた。もしもなにがしかの目的をもって黒衣の人物がここに潜入しているのであれば、本人の口からそれを話させなければならない。しかし、ここで苦し紛れに周りを巻き込んだ行動をされては軍の結束力が乱れかねない。ただでさえ、半分近くが寄せ集めの集団である。どんな些細な事態で団結が壊れるかわからない。それよりかは情報を引き出せずとも殺した方がいい。二つの考えの間に立つドルガナは次の行動をじっと見据えながら弓を構える。


 しかし、黒衣の人物は動かない。降り注いだ瓦礫はピクリとも動かず、その下にいるはずの人物も這い出ることも反撃に転じる様子もない。その静寂を不審に思ったドルガナは引いた矢を元に戻すと、陣の方に近寄っていく。 


 その途中、カナタが合流するとあの場の状況を伝えるため、口を開いた。


「大変だ。私たちが相手した怪しい女、あそこから、消えた」


「消えた?そんなことはないだろ。俺はあいつから一瞬たりとも目を離していない。それにテントの下に消えたんなら逃げようとするなら何かしらの動きがあるはずだ」


「それは、私も思っタ。私も眼は離してない。けど、キエタ。何の動きも見せずにキエタ。魔法、かもしれない」


「なるほど。……まさか正面から潜入してくるなんて。それにしてもあいつが女?なんでそう言い切る?」


「殴ったとき、体スゴク柔らかかタ。多分あの中身は女、結構若いよ」 


「そんなことわかるのかよ」


「そんなことより弓の腕スゴイ!おかげでアタマ斬られなくすんだ」


「援護するって言ってたからな。言ったとおりにしただけだ」


 ドルガナは純粋な誉め言葉にこっぱずかしさを覚え、カナタから視線を逸らす。やはり純粋な好意は未だ慣れていなかった。


 ドルガナとカナタ所属の軍の陣内で起こった事件。その首謀者であるこの黒衣の人物がある冒険者たちの運命を変える事件を引き起こすことになるが、それは少し先の話。



 今回のこの戦争なんですけど、あまり細かい設定とか考えてないのでガバがあってもあまり気にしないでください。重要なのは戦争の方じゃなくて姫様の動きの方ですので。そこはご了承ください。

 今回の戦争は、ユウキが深くかかわった人たちがたくさん参加しています。話に出てきた二人、アルピナ、フリア四人組など。関わっていないのはオルト君くらいです。大きな戦争ということで彼らにも変化が起こります。現状考えている中で何も変化がないのはアルピナくらいのものです。それ以外は何かしら特別なイベントが発生します。最初の二人は今回の二人。生涯の親友となる二人の初対面でした。次は三人組です。その前に姫様側の話を少し進めます。

 では次の投稿は今回の投稿感覚より早くを目標に頑張ります。それでは。



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