魔導の道
私は母さんに魔法の指導をしてもらっていた。
ハイキングの途中なので、父さん達に悪いと思ったのだが、彼らは鍛錬のような事をし始めたので、気にしない様にする。
「カリンちゃん、目を閉じてゆっくり息を吸って...」
母さんに言われた通りに息を吸う。
「そしてそのまま私の言った通り魔法を使いなさい...」
私は息をゆっくりと吐きながら詠唱をしないで初級の魔法を唱える。
すると、小さい風の斬撃が飛び交い、草を少しばかり刈った。
「やった...、凄い疲れるけど、まさか詠唱なしで魔法を使えるなんて...」
汗だくで倒れる私を、母さんが優しく抱き上げる。
「よくできました、これから毎日この特訓を続けていれば、初級から上級魔法までは無詠唱で唱えられるようにまるはず...、だけどさっき母さんが見せたレベルの魔法は流石に無詠唱は無理だけど」
(あのレベルの魔法を無詠唱で唱えられる人はいないだろうな...、てか、使えるだけあんたが凄いよ！)
私は心の中で母さんにツッコミを入れる。
正直母さんがあそこまでのレベルだとは思っていなかった。
レベルが高いなんてものじゃない...、次元そのものが違うのだと肌で感じた。
多分私が成長して、大人になっても母さんを超えることはないだろう。
そう思うと少し寂しくも感じるが、それは仕方ないことだと回答が出ていた。
この世界で天才と呼ばれる者がいるとするのであれば、それは母さんだと間違いなく言える。
でも、そんな母さんにも人間らしさや親として不完全な部分もあるので、一つでも母さんを超えられる物がないか探してみようと思う。
それがきっと私が生まれた意味になると思うからである。
ふと魔力切れを起こしたのか、すごく眠くなったので、母さんの手の中で眠りに落ちた。
その眠りの最中に寝言を言い、母さんに後で話され、かなり恥ずかしかったことは、また別の話である。
