お城が見えた
「どうかなさいましたか!?」
外の騎士が私の方を心配そうに見てきた。
そりゃ、さっきみたいな絶叫を上げられたら誰でもびっくりするよね。
馬車の中で騒いだので一瞬、車内が揺れた。
天馬の鳴き声を聞いた私は、一度落ち着きを取り戻し「なんでもないよ!」と言葉を返した。
(この国の王様が住むお城...?、そんな所に招待されるなんて、母さんは一体何者!?)
私が母さんを見ると、彼女は私を心配するように見ていた。
「カリンちゃん、大きい声なんかだして、どうかしたの?」
(どうかしたの?、じゃない!、私はそんな高尚な場に立った事など一度もない)
そう、心配なのだ。
自分はそういう場で正しく振る舞えるだろうか、たまらなく不安になる。
震える私の手を、母さんは優しく包んでくれる。
「カリンちゃん?、どこか痛いの?、お母さんにいつでも言ってね、すぐ治してあげるから...」
心配そうな母さんを見ると、なんだか悪いような気がして窓の外を見る。
「大丈夫だから!、ちょっと酔っただけ...」
敢えて嘘をつく。
彼女にとって私はカリンだが、私は林華なのだ。
できるだけ彼女の様に振舞わなければならない。
「もう少しで、お城に着きます!」
騎士の声が聞こえてきたので、前方を確認する。
いつも下から眺めていたが、実際に近づいてみると、あまりの大きさに絶句する。
遠くから見てもあれだけ大きく感じるのだから、当然といえば当然なのだが。
「ここにくるのも久しぶりね、カリンちゃんは覚えているかしら?、前に来たのは一年前なのよ」
(いや、知りませんけど〜...)
「ちょっと覚えてないかな〜...」
私は誤魔化すように目線をずらす。
「そう...、ちょっとずつ思い出していけばいいからね、お母さんいつまでも待ってるから!」
彼女は笑顔を見せた後、何も話して来なかった。
数分の空の旅が終わり、私は初めて王の住む城に足を踏み入れた。




