ありがとう
一通り話を聞いてあげると満足したのか、エルシーさんは大きく背伸びをしました。
「んん〜...っと!、子供相手に何の話ししてるんだろう私...」
そう呟く彼女に私は優しく笑顔を振りまく。
「いえ、私で良ければいつでもお話し聞きますよ」
私の笑顔に照れ臭くなったのか、彼女は顔を少し赤くしてそっぽを向く。
「お...、おお、ありがとうな!」
今の表情を見られたくないのであろう彼女は背を向け自分の頰を人差し指でポリポリと掻いているのが少し可愛いと思います。
「ふふっ...」
私は思わず少し笑ってしまいましたが、そこでとある事に気がつき大声で「あっ!!」と叫び口を押さえました。
「どうした!?」
いきなりの大声に彼女は驚きの表情を浮かべながら私の方に視線を送ってきます。
「母さんの目を盗んで夜の町に出てきたの忘れてました...」
大事な事に今更気がつく私。
その言葉を聞いた彼女は笑いながらいい案を出してくれました。
「あはは!、なんだそんな事か、分かった話を聞いてくれたお礼に私が林華を誘った事にしようか」
「えっ...、でも!」
私は私の意思で夜の町へと繰り出したので、彼女に迷惑をかける訳には行かないと言ったのですが、彼女はただ笑って「そんなのいいよ」と暖かい言葉を残すのみでした。
一応エルシーさんが連れ出したって事にすれば、多少罪が軽くなるとは思います。
いえ、下手をしなくても大人であるエルシーさんに責任が行くでしょう。
こっちの世界でも大人は責任をとる対象なのですから。
少し申し訳無さを感じながら、今は彼女の言葉に甘える事にする私。
「それでは...、お願いします」
「おう任せとけ!」
ドンっと胸を叩く彼女の姿は何処と無く優しい大人という印象を受けずにはいられません。
実際のところ、町に出ていたのは私の意志ですし、何一つとして彼女が私の為に動く必要などないのですから...。
そう思うとやっぱり彼女は優しいなと感じる私なのでした。