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夜会

「もう一杯!」


 エルシーさんは一杯目を飲み干すと、続いて違う味のジュースを頼みました。


 その時に私のジュースが無くなっているのに気がついた彼女は私の分も頼んでくれます。


「オレンジジュース2つ、あっ、一つはサンワの果汁を一滴垂らしといて」


「私の分はいいです、あんまりお金持ってないので」


 私が注文を取り消そうとすると、彼女はこう言ってくれました。


「良いって、私が払ってやるからさ」


「えっ...、でも悪いです」


 私が遠慮しようとすると彼女は笑います。


「良いんだよ!、私はもう大人だしな!、少しくらい見栄を張らせてくれよ!」


 別に悪酔いしている訳では無いはずなのに、彼女は本当に楽しそうな笑顔を振りまいていました。


 そんな彼女の様子をなんとなく見ていると、私はとある事に気がつきました。


「エルシーさん」


「なんだい?」


「なんか無理をしてませんか?」


 私の言葉に一瞬だけ険しい表情を浮かべる彼女でしたが、すぐさま元の表情に戻ってしまいます。


「ないない、私が無理しない事は林華もよく知っているだろう?」


「それは...、そうですけど...」


 私は彼女の実力を知っている。


 知っているからこそ一瞬だけど見せたあの表情が気になって仕方ありません。


「エルシーさん...」


「んっ?」


「誰にも言わないので話しても良いんですよ?、私の口の硬さはエルシーさんも知っていますよね?」


 今度は私が彼女の言葉を使います。


「...、あんまり子供にこういう話はしたく無いんだけどね...、林華はなんていうか...()()()()()()()()()()()()()しね...」


 堂々とした私の言葉に少し揺らぐ彼女。


 少し考えた後に彼女は席を立って「場所を変えるよ」と小声で囁いてきました。


「はいっ...」


 私も同じくらいのボリュームの声で返すのでした。



少し頭がぼ〜っとする...。


少女は仰向けに天を仰ぎ、晴天の空から受ける日光を受けている...。


快晴の光はとても心地良く、全ての生命在る者に太陽の暖かみを与えてくれているのだが...、少女の表情は決して明るい物ではない。


「綺麗な世界...、未来への不安も恐怖も絶望もない素敵な世界...、なのになんで私は満たされないの...?」


スッと起き上がる少女は鳥籠を静かに眺める。


大人しくなった黒い小鳥を眺めながら少女は考えていた。


「...、お姉ちゃんは私を見つけてくれるよね?、例え私の真名を忘れて顔の形を思い出せなくなったとしても、お姉ちゃんは私の事をいつかは必ず探し当てるよね?」


何処と無く不安を募らせる少女の姿は安定しているとは言い難く、今にも泣き出してしまいそうであった。


今では自分で自分の名前も忘れてしまった少女はただ願う。


「お姉ちゃんに会いたい...、早く私を見つけて...」


儚い少女の願いは届くはずもなく、少女はその場で座り込むしかない。


少女は選択した。


幸福な世界を作ると...。


自らの理想を反映させて好きなように王国を作り変えた。


なのに...、なぜ少女は苦しんでいるのだろうか?。


自らの手で世界を改変し、好きなように理想を反映させた筈なのに...、何故?。


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