明るい家庭...
「ただいま...」
私が帰宅すると、兄が笑顔で出迎えてくれました。
「よう!カリン!」
「お兄ちゃん...」
私は少し冷めた様な視線を送って家に上がろうとすると、不意に彼がこんな事を呟いてきました。
「ちょっとお兄ちゃんに付き合ってくれないか?」
「えっ?」
「ほんのちょっとでいいんだ...」
一瞬考えましたが、今日は1人で考えたい事があったので断る事にします。
「ごめんね...、私今日は明日のテスト勉強しないと行けないから...」
「明日は祝日だよな?」
「...」
見え透いた嘘ではダメな様ですね...。
「そうだったっけ?」
取り敢えずとぼけた振りをして誤魔化しました。
「そうだよ」
「...」
「だからさ、ちょっとでいいんだ...、カリン...、俺と話そう」
兄の瞳からは強い意志を感じます。
でもそれが今の私には眩しすぎると言う事を理解しているのでしょうか?。
「ちょっとだけ...だよ」
「それでいい、最近口聞いてくれなかったから嫌われたのかと思ってたんだぞ〜」
明るく振舞ってくる兄に冷たくこう吐く私。
「無理に明るく振るわなくてもいいよ、父さんが死んで自分が父さんの代わりになろうとしているんだったら余計なお世話だから...」
私が毒を吐くと彼の表情は少し強張りました。
「おっ...、妹に言われると今の言葉は効くな〜...」
ここまで言われてもまだ明るく振舞おうとする彼には反吐がでます。
「兄さん...あんまりふざけないで...、流石に怒るよ?」
「カリン...?」
明らかに不自然な言動を放ち続ける私に違和感を覚えたのでしょう。
兄の挙動が明らかにおかしくなって行くのが手に取る様にわかる自分がいます。
「貴方に言われなくても理解してる...、だから大丈夫...、暫く放っておいてくれたら私が決着をつけるから...」
それだけ呟いた私は自分の部屋にゆっくりと向かって行きます。
「カリン!!ちょっと待て!!」
彼が階段を上がって行く最中に私の肩を掴んできたので、思いっきり睨みました。
「うっ!!」
彼はとても嫌そうな声を上げながら階段で尻餅を突いて転がり落ちて行きましたが、私はそれをただ呆然と見つめた後に自室へと戻ってしまう...。
「カリン...?、どうしちまったんだ...?」
彼の悲痛な声が後に流れましたが、誰も聞くものはいないのでした。
今日は本を読んだ...。
沢山の書物に囲まれているだけで幸せな私...。
それを母さんは気持ち悪いと言ってきた。
「子供は外で遊ぶものでしょ!」と...。
そんな下らない固定概念を持つ者を母親として持った自分が恨めしい...。
そう言われると余計に外に出たくなくなってしまう...。
だけど、そんな私にも外の楽しさを◯が教えてくれたのだ。
本来親から教わるはずの楽しさを◯から教わる私...。
その事もあり私は少しだけ外に出られる様になったのである...。