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私の英雄
「カリンちゃん...、やっぱり覚えてないのかな...」
私はベッドに飛び込み、あの時のことを思い出す。
彼女が犬に襲われていた私を助けてくれたことを...。
「あの時のカリンちゃん...格好良かったなぁ...」
あの時から、私のヒーローはカリンちゃんになった。
あの年齢で魔法を巧みに扱い、野犬を一蹴した姿に、私は惚れてしまった。
それに、野犬を追い払った後、怪我をした私に回復の魔法をかけてくれたのだ。
強くて優しくて、笑顔の似合う私の英雄。
それはカリンちゃんだった。
彼女の笑顔を思い出すと、なんか胸の辺りがキュンキュンしてくる。
呼吸が荒くなり、抱き枕代わりにしている人形を力一杯抱きしめる。
(この人形がカリンちゃんだったらいいのに...)
人肌とは程遠い、ぬいぐるみの肌にうずくまる。
(また今度聞いてみよう...、きっと時間が経てばいつか思い出してくれるはず...)
淡い期待を込めながら、私は寝息を立て始めた。