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血の繋がらない妹...

「お兄ちゃん?」


「カリン...?、どうしてここに?」


「いや、父さんの様子がおかしかったから母さんに言って早めに戻ってきたの」


「そうか...、今父さんとは大事な話をしているんだ、だから自室に戻って寝て居なさい」


 俺はそう言ったのだが、カリンはじ〜っとこっちを見て離さない。


「お兄ちゃん...、絶対に何かあったよね?」


 図星を突かれて戸惑う俺。


「いや...、別に...」


 そんな俺の問いに対して彼女はこう呟いた。


「嘘...、何でもないならいつも明るいお兄ちゃんがそんな表情するはずないもん」


「カリン...」


 いつも可愛い表情しか見せない妹が、今は俺の事を心配しているように見て来るので、それが苦痛に感じる。


「カリン...、そんな目で俺を見ないでくれ...」


 徐々に精神が追い詰められていくのがわかる。

 俺が弱いという事は、いずれ奴らが攻め込んできた時、俺は目の前で妹を失うかも知れないという恐怖に飲み込まれていたのだ。

 自分が死ぬのはまだいい...が、妹が無残な死を遂げる事は絶対にあってはならないことなのである。

 たとえそこに血が繋がっていなかったとしても、彼女は俺にとってただ一人の妹なのだから...。

 俺はうなだれ、できるだけ妹の瞳を見ないようにしている。

 彼女の吸い込まれるような緑色の瞳をずっと凝視していると、罪悪感が苛まれてくるからだ。

 何も言わずにじっとしている俺。

 そうしていると不意に暖かい物に包まれるような感覚がして前を見た。


「カリン...?」


 なんと!、妹が俺を抱きしめるようにぎゅ〜っとしてくれていたのだ。


「お兄ちゃん...、辛いことがあったのなら私と共有しようよ!、私達兄妹でしょ?、こういう時には助け合わないとね!」


「...、カリン...!」


 その手は優しく暖かい...。

 思わず俺は彼女に甘えるように抱きしめ返した。

 まだ齢6歳程度にあるにも関わらず、目の前の少女は自分と同世代くらいにすら感じられる。

 今の妹から発せられるオーラのような物がどことなくそうさせているのだと思った。

 血の繋がりなど無くとも、俺とカリンの間には確かな兄妹関係が出来上がっているのだと思うと嬉しい...。

 さっきまで悔しいだとかの感情が一切消し飛び、今の自分には彼女が側にいてくれているという幸福感だけがその場を支配していた...。

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